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追放されし『異端者』、レオンの異世界革命奇譚  作者: 露月ノボル
【第一章】リンドル村の幸せな生活
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第24話 ヨーデルマルス同盟とミリタス連邦

 大陸中部は中小国家や都市国家がいくつかあるのだが、それらの国々は北のファース、南の神聖帝国に対抗するために、締結された都市の名から付けられた「ヨーデルマルスの誓い」という条約が結ばれた「ヨーデルマルス自由同盟」がある。


 軍事上の安全保障から始まり、その後資源や食料の融通もするように、結束力が強い、国家連合のようなヨーデルマウス自由同盟が構成されている。ただ、いくつかの海辺の都市などは、自国の海運の特権などを優先してそれらに加盟せず武装中立を保っているようだ。


 それらの都市国家や中小国家の中で、グランシュタル連邦共和国が最も大きく、経済力や軍事力は強いらしい。皮肉な事に奴隷売買が盛んの国で、奴隷制による豊かさもあってか直接民主制をとっているようだ。直接民主制といっても、実際のところ、あまりにも複雑といえば複雑で、この「各国の制度と歴史(上巻)」では書き切れない内容らしい。


 この本では、概説書らしく「一言でいえば、数百に分割された『自治区』内の自治と、その区会義長の作る連邦議会による直接民主制である」という一文になるらしいのだが、相当に細かい内容らしい。ただ、機会があったら詳しく調べてみたい。


 人口の5割は奴隷で、自由市民の20歳以上の男子という制限選挙なため、投票権のあるのは人口の2割ほどになるそうだ。


 ヨーデルマルス同盟の盟主国として、北の私の住むファース王国とも、南のアルタシア神聖帝国とも、それなりに均衡を保てる軍事力、そしてその中でも魔術力、神々の力を借りるのではない「魔術」に力が入れられ、世界最先端というべき「魔術騎士団」とやらがいるらしい。


 あと特筆すべきは、グランシュタル共和国には、都市一つの中にたくさんの学校や大学、研究所が入った、いわゆる「学園都市」のようなものがあるらしく、その中の諸外国からの貴族の留学生が多い聖デルフィネ学園大学部と、魔法魔術総合技術大(魔技大)、その2つが世界でトップを争っているそうだ。


 その「歴史、知恵、学問を司りし、男神ホーネット」の総本山としてのホーネット聖大神殿と「芸術、美、詩人、文学を司りし、男神オルテール」のオルテール聖大神殿の、世界で唯一の2つの聖大神殿を抱える国家であり、歴史もかなり長くある国家でもある。


 いわゆる魔石を用いた魔道具の生産で有名であり、「魔術式」というのを「魔石」に施すと、幾何学的な模様と特殊な命令文を刻印することで効果が発動するのを利用したのが「魔道具」なのだが……私にはまだその仕組みは分からないが、その辺の技術が高度に発達しているのが特徴の国である。


 しかし基本的にはそれらの「魔術式を施した魔石」の生産が産業である。私が知ってる家電のような魔道具など具体的な製品に関しては、グランシュタル共和国で刻印した魔石を各国の工房に輸出して各国の工房がそれぞれ必要な製品の生産するという国際分業をしているらしく驚いた。


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 まあ、話がそれたが、他の大陸はというと、十字架のようにも見える東西南北と中央にある大陸では、私の住むローラント大陸は「東大陸」に当たるが、海を西に進み、中央に島のあるフェータル海をさらに渡ると、私の住む大陸とは違う大陸であるエニシア大陸、俗にいう「西大陸」がある。


 そこには、その右側の海岸から内陸中部まで占める、面積的には西大陸の半分近くを占める、ミリタス連邦という国がある。


 ミリタスは400年前にアルタシアから植民した西大陸に植民した民が切り開いたアルタシアの領土で、元々は西大陸は後述する異種族たちの楽園であった。


 だが、その西大陸をグルードの教えと文明を広げるためと、どんどんと開拓し、あるいは様々な異種族との戦争を繰り返しながら出来上がったのが「ミリタルクス植民府」だった。


 しかし、植民府のガルガディア総督率いるミリタルクス府軍が獣人の国である「トータス獣王国」の領土で「戦いの女神ルクス」の聖大神殿を抱えていた、グチリア市とその一帯を占領した事で事態が一変する。


 グチリア市とルクス聖大神殿へと向かった、ミリタルクス植民府の総督シモン・デ・ガルガティア公爵は、ルクス聖大神殿で、自らのルクス信仰の宣言とミリタルクス植民府の独立を宣言する。


 そして叛乱勃発として鎮圧に向かったアルタシアの第一次派兵を完膚なまでに殲滅し、その戦いでルクスに認められ「戦いの女神ルクス」の国教化宣言をして、ルクスの加護が降りた。


 グチリア市民には一切危害が与えられない事が条件だったらしく、市民の被害は無かったらしいが、グチリア市にあった大神殿を廃し、新たに帝都ガルガティスに女神ルクスの聖大神殿を突貫工事で建立してルクスが降臨、「神聖ミリタス帝国」が誕生した。


 その後のアルタシアの第二次から第七次と続いた派兵にルクスの加護を受けたミリタス軍は圧勝に圧勝を重ね、独立を勝ち取った。その後も異種族との戦いのたびに領土をミリタスは広げ、アルタシアに匹敵するほどの大国になった。


 そのように80年前までは、「戦いの女神ルクス」の加護を得ていた「神聖ミリタス帝国」だった。本当にこの世界は「神聖」という言葉が好きで困る。実際、神が関わってるのだから、もっと困る。


 だがその80年前に、ルクス信仰の国だけあって皇帝の決め方は、皇統での武道での3本勝負の戦いで決まるものだったが、それがこの世界の歴史としては異例な事に、勝負に負けた側が、神の任命に反して反乱を起こし皇帝の座を巡った内戦が勃発した。


 4年ほど続いた一進一退の形で続いた内戦で人民は疲弊した上に、「ラドクリフの悲劇」という、この後に述べる悲劇と、他方選ばれた皇帝の側も、内戦での残虐行為として反乱軍の拠点の1つだったポルタ市で起きた、「ポルタ市の虐殺」が起きて、女神ルクスは加護を剥奪、次代の皇帝にも国にも加護を与えないと宣言した。


 加えてトータス獣王国側が悲願のルクス聖地奪還……文字通りの聖地奪還をし、「戦いの女神ルクス」はグチリア市に急遽、仮に再建された聖大神殿に降臨し、トータス獣王国に再び加護を与えた。


 結果、皇帝は完全に権威を失い、貴族達と貴族出身の将校による軍主流派、大商人や役人、そして帝国軍の平民出身者で構成される反主流派だった青年将校や下級士官達、また多くの人民が結束して帝政の廃止を求め帝政は廃止され、また「ミリタス連邦」と名が変わった。


 ミリタス連邦は、貴族と軍部により構成される元老院とあるが、これは後に述べる元首としての「国家元帥」の選出とそれに関わる軍事と条約、外交関係の立法のみに限定されるらしく、他は一定以上の納税額の納税者…人口の3割ほどに選ばれた庶民院で立法と、軍事と外交以外の内政について、内閣総理大臣が選ばれ組閣をするようだ。


 一定以上の納税額の制限選挙制とはいえ納税さえすれば男女問わず、多数の奴隷による豊かさもあり可能なグランシュタル共和国より人口当たりの有権者の割合が多いのは、皮肉な事で、代議制なのもあって庶民院は政党が存在して不完全ながら政党政治があるのは、この上巻に載っている国ではミリタスだけになっている。


 また、司法については内閣総理大臣が出した候補者リストを庶民院のみで選ぶらしく、司法は三審制で先進性があり、次に述べる「ロベルタ基本憲章」という『憲法』に基づく違憲立法審査の権限を有して、この「憲法」としての「ロベルタ基本憲章では内容的には地球に比べかなり不十分だが基本的人権すら一部認められている。


 また「法律」に関していえばそれに基づいた「ロベルタ七法典」は、身分関係なく民事も刑事も裁かれるという、この世界ではかなり先進的なものである。


 この「ロベルタ」とは何か、というと「帝政廃止の後、武家制を準備していた貴族や軍部に対して、自分たちも帝政廃止に参加したというブルジョワと下級役人、中級役人、軍の青年将校と兵士達や市民からの要求で、帝国ロベルタ劇場で開かれ5ヶ月ほど、ほぼ毎日続いた『ロベルタ集会』のこと」となる。ちなみに、帝国ロベルタ劇場は現在は庶民院の議事堂になっている。


 その際に帝都の人々や地方から流入していた人々を、まったく無視することができず、内戦で人々が大きな被害を受けたのと「ポルタ市の虐殺」などで、貴族や軍に対する信頼を回復させるため、人々の怒りを宥めるために、各方面の利害を調整した結果、という事になるそうだ。そういう意味ではまさに「市民革命」が不完全ながら起きた、ともいえる。

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