第23話 ファースとアルタシア
さて、「各国の制度と歴史(上巻)」というタイトルで、ペラペラとめくりながら大学部のテキストなのかと考えていたら、もしそれを質問もせず、「ぜんぶわかりました」と全部読み終わって返す、というのはさすがにヤバイだろう。それくらい私にもわかる。
ということで、「むずかしいとこがわかりませんでした」で白を切ることにしたので、まあ、まずは読む事にしよう。
この世界は、十字架のようにも見える配置の、東西南北の4大陸と中央の島から成るこの世界で、私達の住む東の大陸になるローラント大陸、俗称「東大陸」では、北部に位置する大国である「神聖ファース王国」と、南部に同じくらいの勢力である「アルタシア神聖帝国」がある。
「随分と専制君主というものは『神聖』とバカの一つ覚えのように自称したがるものだなあ」と思ったのだが、それにはそれなりの理由があるらしい。
北部の大国、神聖ファース王国は、「生命と誕生、死、を司りし、女神ユースティア」を奉る聖大神殿があり、ユースティア信徒の聖地になっているらしい。王はユースティアから任命を受けたものになるが、その任命を受ける者は神殿長を入れた王族会議から出された指名されたリスト3名の中からである。
しかし王権のうち行政は、国政は王とその任命した大臣が行うものの、地方に関しては関連する王国法以外のではその土地の貴族が治めて、その地方の護民官はその監査役と検事、人々には弁護士のような事をし、各地の神殿は神官が貴族が「ユースティアの御心」に沿っているかを判断して中央の大神殿に上げる事をする地方政治になっているらしい。
立法は、王は法を定める事ができるが、貴族院と慈愛院の二院があり、貴族院は貴族で構成され「王国典範」に沿うか、慈愛院は聖職者から構成され「ユースティアの御心」に沿うかどうか判断し二院の合意が必要である。つまり、内容はともかく「王国典範」と「ユースティアの御心」の2つで立法審査が行われる。
ただし、戦時や非常時など「王権発動」の場合は二院の合意無しにそのまま施行される。
その中で特異的なのは、各地の地区護民官の中から選ばれた最高護民官は、貴族と神殿に対して強い監査権を持ち、高等判事院に提訴する事ができる。半ば最高検察官を務める。
実の所、父のロイは騎士爵ではあるものの、騎士爵は1代限りなので貴族には含まれないため、リンドル村と少し大きな街であるウェスタ市を代表する地区護民官でもあるそうだ。
なので4年に1回、最高護民官を選出する護民官同士の互選投票を行いに王都まで行く事になる。私が1歳の時に外泊していたときが確かにあった。各区域の護民官は貴族・聖職者以外の者で、護民官の登用候補者試験の合格者が、厳密な選挙とかでなく住民集会の挙手による投票で選ばれる。
司法の代表たる高等判事長は王と最高護民官の合議で決まり、この場合最高護民官の同意が必要になる。他の判事は高等判事長の任命になるそうで、基本は地方判事院の1審で完結するが、1審で死刑判決が出た場合のみ高等判事院で審査される2審制である。
もう一つのこの大陸の南の大国であるアルタシア神聖帝国では「正義、法、衡平を司りし、男神グルード」を奉る聖大神殿があり、聖大神殿の首席大神法官と12名の大神法官による、神殿のある丘の名を取った「イリエスタル聖大法院」と各「地方聖法院」が裁判所のように裁判を行い、立法でも必要な同意を与える。立法段階のグルードの戒律に基づく立法審査権的な面ももった存在として存在する。
そして、「正義、法、衡平を司りし、男神グルード」から「王権」を与えられる「聖帝」とやらがいるが、面白い事に王家の血筋とかもあるが、血筋より「誰が最も法と正義を擁護するか」を、男女関係なく聖帝の血筋でなくとも家柄も関係なく、そのグルードとやらが選ぶ。だから貴族に限られないらしい。
よって選ばれた家が変わるごとに「王朝」が変わって、今は2世代前までは男爵で位が高かった訳ではなかった、2世代続いている今はアンリエ・エル・フローラが聖帝の「フローラ王朝」と呼ぶらしい。
そのように「アルタシア神聖帝国」はグルードを国教としているため、アルタシアは自らを「法と人民の庇護者」として、あまり「聖帝」やらにしろ「イリエス聖大法院」にしろ悪政はできず、侵略戦争などもできない立場ではある。
だが「法と正義と衡平」とそれに基づく「戒律に基づく善い行い」を、周辺国に強く求めては半ば内政干渉や脅迫に近い事もされる。
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