第21話 せかいをしりたい
さて、私が「信仰」する「神」は……困った、革命の神というと、正義、法、衡平を司りしグリード、ということになるのかもしれないが、どうもしっくりこない。そう、正義、法、衡平を司っているなら、封建社会を解体し奴隷制を廃止して、ブルジョワ民主主義なりその先なりの社会を創れ、と何故言わないのか。
まあ、私も分かっている、ブルジョワ民主主義に発展するには、資本の原始的蓄積が足りないのだ。生産力がもっと増さなければ、そして資本たる生産手段や富が蓄積して高度化しなければ、それらの社会に無理に発展させても仕方がない、と。
古代ギリシャや共和制ローマは多数の奴隷に支えられての直接民主主義や共和主義だったし、本来的なブルジョワ民主主義には程遠かった。この世界には奴隷制があるようだが、それに基いたり、基づかなかったりで、古代ギリシャや共和制ローマのような国家がいくつかあるようで旅をしてみたい気がする。
さて、そんな感じで学んだわけだが、もうすぐ5歳になる。友達としては、6歳の女子のエミリス、オリーラと、少し年上だが仲良くしている。
それ以外には、初めて教室に入った時の視線の元であった少年、7歳になるらしい、ケルク君が、教室で本を読んでいるとこわごわと近づいてきて、「お前、それ読めるのか?」と聞かれ、「うん」と答えた。
すると興味深そうに何について書かれている本か、を尋ねられ、冒険記だと答えると目の色が変わったように、とたんにものすごい食いつきで「本を読んでくれ!」と音読を求められ、困りながらも「英雄ゴーダの冒険記」を音読し、その後も機会があれば音読してあげた。そしてとても懐かれてしまい、今に至る。
「英雄ゴーダの冒険記」と、このリンドル村も含む「エニエス地方の歴史」「神聖ファース王国史」、もっと他国を知りたかったが、世界地図はやはりないようだ。知られている部分のみが描かれていた。
なので、せっかくなので私達が知っている限りの国について、「英雄ゴーダの冒険記」だとちょっと歴史書ではないので、何かないかなと、下の見える棚を観終わってしまい、今度は本棚によじ登って上の本を、とよじ登ろうした。
だが、母が入ってきて、驚いて抱きかかえられ、怒られたしまった。
「なに危ない事をしてるの!? レニーナちゃん!」
とぎゅっと抱き締められてしまった。悪い事をしたとさすがに罪悪感を感じた。
ただ、せっかくなので、「ママ、私は世界の色々な国についての本がよみたい!」とダメもとで言ってみると……。
「あらぁ、えっと、あるにはあるのだけど、レニーナちゃんにはまだちょっと早いんじゃないかなー? ってママちょっとお薦めできないわ?」と言われる。
ふむ、「ダメ」な理由である「まだちょっと早い」ということさえ、問題ないと思われればいいのか、と思い、「神聖ファース王国史」をよいしょとおててに、どさ、っと本棚から抜いた。
「これ全部よめたよ? おもしろかった」というと……。
「あら、やだレニーナちゃんったら、冗談まで……れ、レニーナちゃんっ! じょ、冗談よねー?」
と顔を伺うように見られる。
このように、やはり家族へ隠し事をたくさんしながら言うのは、実のママに嘘をつくのは、つらいものだなと、頭のどこかの冷静な部分が働いていた。
「わたし、読んだよ! 本当だよ、ヨスタナせんせぇに聞いてみてもいいよ! わたし、もっとせかいを知りたいだけ!」
と最後のトドメでお願いする。頼む、OKしてくれ、我がママよ…!
すると母はすくっと立って、何かを決心した顔で言う。
「レニーナちゃん、ちょーっと待ててね♪」
と、どたどたっと廊下を走っていった。
「ヨスタナ先生! レニーナちゃんが、王国の歴史書、一冊読んじゃったっていうの! 本当なのかしら?!」
と、居間の方からヨスタナ師にらしいが、すごく興奮して尋ねる母の声が聞こえてきた。
「わぁ!? ちょ、お茶吹き出して、げほっげほっ、び、びっくりして死ぬかと思いましたよ、奥さん!」
と、ヨスタナ師はお茶をしていたらしいが、何かを察したようで、ためらいがちにも、「バレちゃぁ仕方ない」と開きなったような声で言った。
「ああ、えぇ……えぇと、ですね……。単刀直入に言います。あの子は全部読めちゃいます。マジです、ガチでですよ? あのちっちゃい子がです! ……もぉ僕ぁどの本を読むかとかその辺は『本人の自主性』に任せています……」
と、ヨスタナ師は若いのに教育について実に良く理解しているなあ、と感心する事を母に言う。
「それじゃ先生、世界の国々についての本とか、先生の持ってる書籍で、あったりしません……? 私持ってる本だと作者さんの旅行のエッセイくらいなので……。あったら教えてあげてください!」
と母がすごく強く私のために頭を下げてお願いしているようだ。
自分でいうのもなんだのだろうが、こんな変な4歳児をちゃんと、子供としてみてくれて、守ってくれるのに、何だか目頭が熱くなった。
「まぁ、大学部時代の時に使ってたテキストくらいはありますけど……ズバリ! それ、レニーナちゃん、読めますかね!? もぉ、僕ぁ、読めるほうに賭けますよ、月末までの残りの生活費全部」
とちょっと吹っ切れちゃっておもしろくなったのか冗談めかして言っている。
「うちの子は天才なのー! だから、大丈夫よ! でも、一人で本を延々と読ませるだけじゃダメです! ヨスタナ先生が教えたり、導いてくださいませんか? ね、おねがいしますっ。ただ、読めるのに私も賭けるから、賭けは不成立ね♪」
と母がまた頭を下げ冗談めかしてお願いをしている。何だかとても罪悪感が強く、泣きたくなってくる。
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