プロの芸人
「ただいま~!」
「誰もいないのにただいまって言うのか?」
「お家に帰って来たんだからただいまだよっ!」
夢花のこういうの久しぶりだな…懐かしい。
異世界に来た時とかはそんな気にして無かったけど再開してまた一緒に過ごしてみると違うな。
「俺、そろそろあっちに戻るわ。」
「えーーーーー!はやと君戻っちゃうの?」
「黒崎、何もそんなに急がなくても僕はまだまだ黒崎成分が足りてない。」
「そんな寂しがるなって。スマホ渡すから連絡は取れるんだし。」
「黒……。」
「なんだ?藤崎も寂しいのか?」
「プロの芸はみてから帰るべき。」
「プロ?」
藤崎が指さしたのは渡辺。そしてその渡辺は眼鏡をクイってするポーズをした。つまりは一発芸は観ていくべきだと言う事だな。
「渡辺の芸の評価はそれ程に高いのか…。」
「懐かしいのに新しい。」
「渡辺くんは面白いよね~!」
「全く分からんが取り敢えず観てから帰るわ。」
藤崎と夢花に挟まれるかたちで座るとその正面に渡辺が立つ。
堂々としていて気迫も凄い。一体どんな芸をするんだ…。超人系か?今のムキムキ渡辺なら出来そうだな。
「いくぞっ。はあああああああ…。」
何だ?!まるでスーパーサ〇ヤ人にでもなりそうな雰囲気だ。渡辺、まさか本当にそんな領域にいったのか?!
「ちゃあん!」
ん?…イク〇ちゃん?
「ハイー!」
…野太い声のイ〇ラちゃんになった。怖っ!てかいつの間にか右手にリンゴが…。
「ばぶぅっ!ふんっ!!」
「「おぉ~。」」
「渡辺…。凄いな。」
〇クラちゃんがリンゴ空中に投げて落ちるまでにウサギリンゴにして皿でキャッチした…。
「黒崎、そんなに褒められたらもう一つ何か見せたくなるじゃないか。」
「まだあんの。」
ウサギリンゴを藤崎に渡した渡辺は今度は木の板と小さい丸太を持ってきた。何処に置いてあったんだろ…。
「蒼井、いや、黒崎。合図をしたらコレを投げてくれないか?」
「は?!包丁?!」
「ああ、五本全て投げられるとキツイから一つずつ頼む。」
「いや、渡辺。マジで危ないから。」
「大丈夫だ。」
キラッて効果音がつきそうな笑顔されてもヤバいだろ。てか藤崎も夢花も止めない…。藤崎にいたってはウサギリンゴをシャリシャリ食べてる。
「黒崎、僕を信じてくれ。」
「わ、分かった。」
渡辺は丸太を床に寝かせて置くとその上に木の板を置いて…乗った……。
それ、大道芸の人達が練習しまくってやるやつだろ?
「はいっ!」
「はいィ!」
「つぎっ!」
「はいィ!!」
「もういっちょっ!」
「はいィ!!!」
怖ぇよ!投げた包丁ジャグリング!!
「ラスト二本同時にっ!」
「マジか?!」
ヤケクソで投げたけど渡辺は見事キャッチしてジャグリングを続けた。本当に凄い。何処で身につけたんだ。
「凄いな渡辺っ!」
「ハハハ…黒崎にそう言って貰えると僕でも出来る人間のようだな。」
「いや、実際出来る人間だろ。」
最後は目の前の柱に包丁を飛ばしてぶっ刺して終わり。マト描いておけばよかったな。
「凄いよ渡辺っ!」
「さすがプロ。」
「渡辺くんすごーい!!」
「黒も何かする?」
「いや無理だから。」
渡辺の超人技をみて大人しく別れの挨拶をした。
アレを俺にも求められたら困る。渡辺マジで凄い。見る目変わったわ~。




