天の集落の後
「やぁ、神絵師ハヤト。奢るからご飯を食べに行かないか?」
「神絵師ハヤトっ!俺に生き甲斐を授けてくれっ!!」
ヤバいくらいに声をかけられる。
そしてその全員が紙とペンを持っている。つまりは昨日の渡辺との合作を皆が求めて声をかけてくる。
そして俺と渡辺は宿屋から出ていない。つまり、押しかけてきているんだよ。
「渡辺、コレどうしたらいいと思う?」
「僕としては黒崎の凄さを認知されて嬉しいかぎりだが、黒崎との時間を邪魔されるのは癪に障る。だからこうしよう。」
渡辺はサラサラと紙に何かを書きドアを空けて貼り付けた。すると魔法みたいに誰の声もしなくなった。凄いな渡辺。
「何したんだ?」
「ん?『部屋に押しかけても絵は描かない。迷惑だから押しかけて来た人達は姫に報告します。』って書いた紙を貼って睨みつけただけだよ。」
「なるほど…。」
平穏を取り戻したところで売る用の絵の構図を考える。お金は必要だからって事で夢花と藤崎には許可をもらっているが、夢花と藤崎のokが出ないと渡辺に描かせられないから時間がかかるんだよな。
「今まで天の集落では何で儲けてたんだ?」
「こっちも写真だよ。だが今日からは絵も加わったな。」
「……実は結構稼いでる説があるんだが。」
「黒崎、世界は違えどそういう事に変わりは無い。」
「そうか……。ところで二つの集落の女性達からの評判は?」
「藤崎と蒼井の性格のおかげで悪くは無い。」
渡辺は二人とこの世界に来て正解だったみたいだな。何だか安心したし集落から戻ったら俺もあっちに戻るか。
(コンコンコン)
「はい?」
「神絵師達、少し良いだろうか。」
入ってきたのはリーダー的存在の親衛隊の人。やけに改まった感じだ。余程の用があるに違いない。
「どうしたんだ?」
「実はな、この集落に姫君の像をつくりたいんだ。金は言い値を払うからその絵を描いてくれ。」
「……表の張り紙みたか?」
「姫君には許可をもらった。直ぐに描いてくれ。」
なるほど、それじゃあ効果は無いな。
しかも許可を出したって事は決定事項みたいなものじゃないか。
「せめて今日一日くれないか。」
「分かった。楽しみにしている。」
「さぁ、渡辺。今夜は寝かせないぞ。」
「黒崎、望むところだ。必ず黒崎を満足させる。」
徹夜コース。しかも夢花と藤崎をスルーできるクオリティか。
俺にはどれだけ還元されるんだろうな……。
何枚描いておけばいいんだろう……。




