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天の集落の前

思えばジェットコースターは好きだがフリーホールは好きじゃなかった。あの落下感が気持ち悪くて何て言うか胃が浮く?感じがダメだった。


「うぷっ。」


「黒崎、大丈夫か?」


「はやと君大丈夫~?」


「黒、酔った?」


「何で三人共ケロッとしてんだよ…。」


「慣れたからだ。」


「「楽しいっ!」」


何故こんな気分を悪くしているか、それは水の集落から天の集落へのバルーン便に酔ったから。


水の集落の出口でお金を払って乗った訳だが、想像してたやつと違った。

おっきい木枠の風呂におっきい水球があってその中に入ったんだよ。何の説明も無かったけどきっと地上を移動するんだと思っていたんだ。

そしたら急に水球が持ち上がって奥にあって見えなかった逆バンジー宜しくな装置にセットされてひとっ飛び。


死ぬかと思ったし落下も気持ち悪いし最悪だった。二度と乗りたくない。

しかも着地は水球が衝撃を受け止め割れて何も無い地面だったから本気で死を覚悟したからっ。


「もっと平和的な乗り物無いのかよ…。」


「黒崎、僕も黒崎同様に最初は気分を悪くしたが慣れればなんてことは無い。」


「渡辺…俺はお前を尊敬する。」


そんな感じで取り敢えず天の集落に着いた訳だが外観は二メートルくらいある木に囲まれてるからなんだか森の中に入るみたいな気分になる。そして、入口には門番と膝まづく男達。


「姫君、お迎えに上がりました。さぁ、どうぞお乗り下さい。」


席が一つついた神輿(みこし)が二台。

ここでも特別待遇か…。そして俺と渡辺は歩き。格差よ…。


「ん?お前は見ないな。」


「僕達の友です。」


「はやとです。」


「聞いておらん。姫君のお側にいるのも集落に入るのを許可できん。」


「マジ?」


「見たところ姫君の側にいるのに品格も顔面偏差値も足りておらん。」


「…渡辺、聞いてないぞ。」


「僕が普通に入れたのに黒崎にそんな扱いをされるなんて許容できないな。帰るか。」


「はやと君入れないなら仕方ないね。帰ろ~!」


「異議なし。」


「姫君、お待ち下さい。お二人の意志とあらばあの平凡な顔の特技も何も無さそうなヒョロヒョロの男も一緒に入ってかまいません。」


「おいっ!初対面の俺に言い過ぎさじゃないか?!」


「姫君のご好意に感謝するんだな。」


何だコイツ。いや、他の黙ってる奴らも同じ表情さしてるから同じ事思ってそうだが。ムカつくな…入る前からこんなんで大丈夫なのか?


「はやと君、気分大丈夫?神輿変わろうか?」


「夢花、あまり大丈夫くないけどその神輿持つ奴が全力で睨んでるから遠慮しとく。」


「誰か黒運んでくれない?」


「ハッ。私めが運びます。」


藤崎の前にスッと出てきた大柄の男が俺の前までくる。

…でかい。俺を見下すくらいデカイ。


「仕方ないから運んでやる。」


「うおっ。」


まさかのお姫様抱っこ。恥ずいっ!しかし文句言ったら降ろされそう…。俺はこの屈辱を受け入れなきゃいけないのか…。

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