水の集落の得
「おつ。」
「お帰りなさ~い。」
「おう。」
「ただいま。」
待たせていた夢花と藤崎の元に戻るとテーブルの上には透明の空になった器が積まれて、氷の入ったドリンクを飲んでる。なんて優雅なんだ…。
俺と渡辺はボロボロなのに何だか釈然としない。
「どうだった?」
「全部売れたよ。不甲斐ない僕は一回負けたけど黒崎は見事全勝だ。」
「「お~!」」
「残念。黒の一発芸見たかったのに。」
「性格悪いぞ、藤崎。」
「お金になるくらい顔は良いから問題ない。」
開き直ってる…だと。力関係が、格差社会が…。俺と渡辺じゃあ太刀打ち出来ない。聖人さんが居たら勝てるのにっ。
「じゃあ集落を出よう。」
夢花と藤崎が席を立って当然の様にそのまま店を離れようとする。渡辺も何も言わない。
「待て。まだ金払ってないよな。」
「ん?ああ、そうだな。」
「ここ、お金いらない。」
「は?」
「私達が今食べてたものは試食。ここのオーナーに試食を食べさせてもらって改善点とかを伝えたら終わり。お金要らない。」
「え、じゃあ俺達も食べようぜ。」
「黒崎、僕達は普通に料金が発生するんだ。何故ならここのオーナーは会員ナンバー三だからな。」
「また格差…。」
俺もいきなり美少女にならないかな。この世界は美少女に優しすぎやしないか。衣食住全て顔の良さで得られてしまいそうじゃないか。
「なぁ、何でこの集落にすまないの?高級ホテル並の待遇してくれそうだけど。」
「四六時中監視されそうだから。」
「あ~。…もしかしてログハウス建てたのも…?」
「お家は二つの集落の人達でつくってくれたんだよ~。素敵だよねっ!」
「ああ、そうだな…。」
ああ、もう早く家に帰って寝てしまおう。考えたらダメだ。
「黒崎、そっちじゃない。」
「ん?集落の出口ってこっちだよな?」
「来た時はそうだがそっちからだと天の集落に少し遠回りだ。」
「え?今から天の集落に行くのか?」
三人に無言で頷かれる。
そうか、まだ家には帰らないのか…。天の集落もこんな感じなのかなとか思ってしまう。いや、行く前から決めつけるのは良くない。きっと俺と渡辺にも優しい場所に違いない。
そうだっ!希望を持って行かないとっ!!
「渡辺、家に帰ったら二人で飲もうじゃないか。」
「黒崎、その誘いは天にも昇る嬉しさだが残念ながら僕達は未成年。酒は早い。」
「じゃあオレンジジュースで。」
「なら良し。」
「なんかズルい。私達も女子会しよう。渡辺くんの一発芸を、肴に。」
「女子会いいね♪」
「くっ。俺の渡辺が生贄に…。」
「黒崎、その言葉だけで僕は生きていける。」
何はともあれ天の集落レッツゴー。




