水の集落の中
渡辺について更に路地裏に入って1軒の家に入ると家具も何も無い…。
ちなみに俺の後ろにはさっきオークションしてた面々がゾロゾロとついてきてる訳だけど、もしや俺の知らぬ間に渡辺は頭とか呼びれてたりするのかな。
「渡辺、ここは何だ?」
「黒崎、ここはな入り口なんだよ。」
「入り口?何もないけど?」
「手順があるんだ。」
一瞬渡辺の本体がキラリと光った。そして渡辺の雰囲気も違う。今からいったい何をする気だ…周りの緊張感も凄い……。
「行くぞっ!」
「「「「「「「「「「おうっ!」」」」」」」」」」
こっ……これは……。
なんて綺麗に揃った…ソーラン節?何で?
「さぁ、黒崎も一緒に!」
「マジか……。」
「もちろんだっ!」
この流れは逃げられないか…。
俺よ、腹を括れ。大丈夫、観客はゼロだ。
「ラッセラー、ラッセラー!」
「「「「「「「「「「「ラッセラー、ラッセラー!」」」」」」」」」」」
「ソーラン、ソーラン。」
「「「「「「「「「「ソーラン、ソーラン」」」」」」」」」」
キッツ。もう何分経ったんだよ。
皆汗だくだし空間に何とも言えない男臭が充満してるんだが。
「渡辺…。」
「黒崎、そろそろだ!」
そろそろの意味が分からなかったけど頭を傾げている間にサウナ状態の空間がいきなり視界ゼロの霧の中になった。本当に何なんだ。
「渡辺ー!」
「黒崎、僕は傍にいるから安心してくれ。」
「俺が安心出来ねーよっ!」
大人しくジッとしてると少しずつ霧が晴れてくる。視界が良好になると、なんということでしょう……先の度までの何も無い部屋でなく教科書でみたコロッセオのような場所になっているではありませんか。
「マジでどういう事?」
「黒崎、ここは闘技場だよ。」
「だろうね?とりあえず、詳細。」
渡辺の話だとここは水の集落の闘技場で男しか入れない場所。あの儀式をすると来られるんだとか。
で、そんなとこに何でいるの?って事だけど、集落の男に連れられたと。理由は「俺達の癒しの女神を護れるくらい強くなれっ。」との事だ。
渡辺としても身の危険を感じる世界だし、鍛えられる場所があるなら万々歳と。で、今では親衛隊の皆様から勝負を挑まれて渡辺が負けたらその人の推し、藤崎か夢花に花を送る事ができると。
集落に入って受け取っていたのは挑戦カードだったらしい。
「俺、来なくて良かったんじゃないか?」
「黒崎も僕たちと一緒に来たから新手と思われてるんだ。」
「ナンダッテー。俺、ただの旅行者……。」
「大丈夫だ。今日は僕が黒崎の手取り足取り腰取り教えるだけだ。次からは挑まれるだろうけど。」
「渡辺…俺のアイアンは通用するか。」
「剣で折られるぞ。そして基本は剣か槍か弓だ。」
「だよな。」
渡辺にチョイスしてもらった武器は槍。剣は振ってみたけど才能無さげだったし、弓は乙女を護るなら前衛だと知らないおっちゃんから却下された。意外に槍は性に合ってるみたいで俺的には様になってると思う。
「黒崎、槍が似合うな。カッコイイ。」
「渡辺、ありがとう。」
「だから実践入ってみよう。」
「……早くない?」




