まるで映画のように
月明かりが差し込んでホーホーと鳴くフクロウの鳴き声しか聞こえない。
見張りのいない深夜の牢の中で俺は右の壁を壊しにかかった。とは言え全面では無いけどね。
用意するのはハンマー、では無く手動ドリル。壁はレンガで造られてるので継ぎ目を狙ってハンドルをグルグル。煉瓦に沿って人が入れる大きさくらいの範囲をグルグル。
次にドリルで脆くなった継ぎ目に平タガネっていう道具を当ててタオルを巻いたハンマーで叩けば……。
「はやと君、ありがとう。」
「聖人さん、数十時間ぶりです。」
穴はタペストリーで隠して反対側を二人で作業。さっきより短い時間で今度は奈那葉と再開。三人揃ったところで次のミッションは教会内の神職者達の寄宿舎に忍び込む事。外側の壁を壊してレッツゴー。
何をするのかって?十字架を盗み出します。
どうやってかって?勿論一個一個持ち出すなんて手間なことはしない。
ここの聖職者達は全部屋同じ造りをしていて窓は一箇所、硝子は嵌め込まれていない。
朝日と共に起きる為、そして神の依代たる十字架に朝日の力を取り込む為に窓は西側に有り、十字架は窓の下に置かれる。そして十字架は鉄製。
「来たれっ!強力磁石~とドローン~。」
「はやと君じゃなくてドラちゃんって呼ぼうか。」
「実際近いものがあると思います。」
「巫山戯てごめんなさい。はやとでお願いします。」
ドローンに強力磁石をつけて窓に近づけて十字架を回収。ドローンの操縦?ソレ、奈那葉がやる。
「ドローンは資格も持ってるわ。」
「「……意外。」」
っと言うことで、コントローラーは奈那葉の手に。その間、俺は十字架の収納係で聖人さんが周りの警戒。
収納が終わったらちゃんと牢に撤収して無事に夜が明けましたとさ。
そして目覚まし代わりに怒鳴り声。
「貴様らか~!!!」
「何のことでしょうか?」
「おはようございます。」
「ブルブル……。」
「とぼけるなっ!十字架が、十字架を返せ~!!!」
「「「……?」」」
まあ、とぼけてそれで終わる訳無いよね。
普通に牢からお偉いさんの前に連れていかれて三人で床に座らせられてます。
まぁ、やったのは俺達だけど壁は見た目で分からないようにタペストリーがかかってるし十字架持って無いし犯人に出来ないよね。
「これより、罪人に神罰を下す。」
ん?おかしくないか?




