見えない壁
女将さんはここの住人かって言いたくなるくらい迷いがない。
そして俺と奈那葉は縛り方とスピードがレベルアップしていく。今度縛り方の本出してバリエーション増やそう。
「二人共お疲れ様。」
「お~流石だな。」
「ス、黒と緑。もう追いついてきたのか。見張っとかなくていいのか?」
「縛っては来たしギャラリーが見張っててくれるからな。それに、いつもみたいに面倒な奴らが来る前に撤退じゃないしさ。」
そう、いつもならやりたい放題して撤退だけど今日は違う。大物だから誤魔化しが出来ないようにちゃんと招待状を送っている。来るかは分からないけど。
「援護してくるから緑と三人で縛りながら来てくれ。」
「おう。気をつけろよ。」
さて、後何十人だろう……。
「は、赤、縄で縛るの疲れたから出して欲しいものがあるんだけど。」
「ん?白なんだ?」
「結束バンド。」
「………………いや、プラスチックはダメ…だろ。」
「今更だと思うわ。」
奈那葉の視線を追うとミントがいる。スプレー…水鉄砲…俺、奈那葉…。いや、持ち物だしっ!BB弾は見つかりにくいしっ!やばい一瞬揺らいだ。ロープって縛りづらいんだよな。縛り…。
「麻紐なら…。」
「ロープよりマシか。」
麻紐を出すとミントが凄く驚いていた。こんな紐は無いらしい。ちょっとやらかしたかな…でも結束バンドよりはマシだと思う。
三人で頑張って縛りながら進んで行き、ようやく女将さんとスパイシーに合流するとラスボスらしき人物は鬼の形相でこちらを睨みつけてきた。
「アイツが…。」
「口を慎め下民。」
「はいはい。さっさと隠したものを出せば口を閉じてあげるから観念おし。」
「ふん。お前達のような輩の言う事を聞く義理はないっ!」
「アイツ、俺達が襲撃に来る前に書類を隠したんだよ。」
「隠した?」
言われてみると大きな本棚と机があるこの部屋は不自然に片付いている。本棚も空だし。
「ああ、こん中。」
スパイシーが示したのは真下。綺麗な白い床、大理石だと思われる床。さっきまでは真っ赤な絨毯だったけどここだけ大理石らしい。
じゃなくて、何故床を指したし。
「アイツの力が物を隠す系らしくて、部屋中の紙や本が全部床にのみ込まれるのを偵察が見てるんだ。だけど一枚剥がしてみたけどなにもなかったって。
黄が実力行使しようとしたんだけど何でか近づけない。見えない壁があるみたいな…。」
「壁?緑、アイツにスプレーかシューティングしてみてくれ。」
「分かった。」
確かに水が弾かれてる。範囲も天井から床まで隙間は無さそうだ。何だろ……。とりあえずこのままじゃ良くない。何か……何か……。
「下民の癖にアイツアイツと不敬がすぎるっ!貴様ら直ぐに極刑だ!!この私の屋敷を踏み荒らし、身の程も弁えない態度の数々、楽には殺さないからなっ!まずはそのヘンテコな格好を剥がして素顔と醜態を晒してからその家族諸共拷問にかけ泣きながら許しを乞うまで痛めつけてやる。ああ、ババア要らんがそこの女達は屋敷で奴隷として働かせてやってもいいな。その爽やかな香りがする水も金の匂いがする。死なない程度に飼ってやろう。」
(((((あ。自分から出てくる?)))))
「そろそろ奴がくる。覚悟しておけっ!」
(((((あ。ダメか。)))))
今いるのは二階、窓は机の後ろ一箇所……鍵はかかってそうだな。
透明な壁に穴は無さそうだよな……。壁一面に本棚があって…後は床は偵察の人どうやって剥がしたんだろ。
一、身軽な女将かスパイシーに窓から侵入してもらって制圧?後は…
二、火を放って炙り出す?火事すぐには消えないから街に迷惑か
ん~悩むな……。
「発動。キャノーラ、隠している証拠を出しなさい。」
あ。その手があったね。




