欲しいのは優しさ
「もうすぐ出られからそれまで大人しくしてろよ。あ、ちゃんと祭りの本番には間に合ったから!」
「夕食って事はもう夜なんじゃないのか?」
「はやとの父ちゃんから金はもらったから後は義賊団が領収の証を残してるところ。」
「父ちゃんじゃないんだけどな…。」
流れとしては俺が攫われて広間の噴水に義賊団の要求書が貼られ、聖人さんがその要求に応えた証として噴水に義賊団から領収の証が貼られて周知されるらしい。
祭り中だからか回るのが早かったらしいから戻ったら周りの見る目が変わっているだろうって言われても何とも言い難い。
スパイシーの話だと目の前で俺が攫われた奈那葉は凄く動揺していたけどミントが宥めてくれたんだとか。
ミント、というより町長の家は義賊団と繋がっているらしい。
「たんまり溜め込んでるかなんて情報ペーペーじゃ集まらないだろ?」
「確かに…。」
「各町に協力者がいるに決まってる。」
「それ、俺に言っていいのか?」
「ん~私の力は【運命の選択】っていう自分にとって重要な局面で二択が提示される力なんだ。
はやとと初めて会った時に周りから資産を狙われてるけど“攫う”か“攫わない”か二択が出て攫ったんだけど、それから何回かそんなんがあって今は彼は救世主“信じて話す”か“話さない”かが出た。」
なんて親切な力なんだ。俺も欲しいな。
そして凄く助かるな。これってトキが誘導してるのか?いや、過干渉は良くないとか言ってたし違うのか?
「まあ、信じてくれたのは素直に嬉しいな。だから、俺が今から言う事を信じて欲しいんだ。」
「なんだ?」
「義賊団、狙われてるぞ。」
「それはいつもの事だ。」
「違う。国じゃなくて復讐だ。被害にあった悪徳金持ちに狙われてる。だから、義賊団のトップに会わせてくれ。」
信じるって言ってくれたけどスパイシーの目が鋭い。流石に怪しいよな…。
いきなり狙われてるって言われた後にトップ出せとか逆の立場なら断る。ここでも二択が出てたりするのかな。
「…まず、狙われてるって話の根拠は何だ?」
「…女神からのお告げ…?」
嘘は言ってない。だけど信じてくれるか?別に聖職者でも何も無い俺が女神からのお告げって詐欺っぽいよな…。
「分かった。」
「うぇ?!マジか。」
「信じるって決めたからな!ただ直ぐには無理だからまた連絡する。」
スパイシー凄いな。
自分の力に自信があるのか、マジで人が良すぎるのか分からないけど少し心配になるな。女の子なんだし。
「まっ、とりあえず今日はミント達と祭り楽しもう。強引に連れ去った詫びに良いもんみせてやる!ミントがショゲてたしな!」
「ブレないな。」
「じゃあとりあえず、もう一回気ぃ失っといて。ココ一応バレたくないから!」
「ゔっ……。」
手荒いだろっ!目隠ししたままとかで良いじゃない…か……。
次に目が覚めた時はベッドの上で傍らには聖人さんと奈那葉がいた。
「お帰り。」
「た、ただいま…。」




