祭りあるある
収穫祭当日の朝からソーセージパンは行列をつくりとぶように売れた。
パン屋さんのドーナツみたいなおやつ、八百屋さんのカットフルーツ盛り、肉屋さんのコロッケはいつも売ってるので真新しいソーセージパンが注目を集め、一人目の客が「美味っ!」と言ってもう一回並んだところで人が殺到。
ちなみに三店主には俺が聖人さんに言われてソーセージパンを最初に持って行った時食べた瞬間に取り置きを五個ずつ頼まれた。
チラッと宿屋の女将さんが作り方を知ってると話したら「あのババア抜けがけさせねぇ!」って言ってたから後で聖人さんに聞きに来るのかな。
とりあえず昼前に完売。
「思ったより早く売り切れたね。」
「売り切れた時の皆の絶望感凄かった…。」
この世の終わりみたいな顔をしてその辺で崩れ落ちてく人々…女将さんが売り始めたら大変な事になるんだろうな…知らんけども。
「祭りのメインは夜だけど昼にも少しあるみたいだから片付けて行こう。」
「収納するよ。聖人さん、せっかくなら奈那葉達と行こう。」
祭りは男だけで行くもんじゃない。華が無いと始まらない。奈那葉と町長の娘さんを連れてキャッキャしつつ楽しむ、これは俺へのご褒美だ。
確かさっきソーセージパン買いに来た時に奈那葉と町長の娘さんは広場にいるって言ってたはず。
「はやと君、それなら先に合流しててくれるかい?僕は少し寄りたいところがあるから。」
「りょかいです。」
店を出してたのは広場の一歩手間の位置だから広場は目の前に見えている。ただ人が多くて何をしてるとかは見えないから奈那葉達を探すのは少し大変…でも無かった。端にあるベンチに座ってるな。
「奈那葉!」
「はやと君。ソーセージパンは?」
「もう売り切れて閉店。」
「聖人さんの美味しいものね。」
「…。」
言い方よ。まぁまだセーフか。
「こんにちわ!」
「こんにちわ~。町長の娘さん。」
「ミントです!」
「そうそう、ミントさん。」
「ミントで良いですよ!」
「じゃあミントで、俺ははやとだ。」
「はやとね。宜しくです!」
「祭り一緒に観ようと思って二人を探してたんだけどどう?」
「ちょうどナナハともまわろうと話てたから良いタイミングです!今からだと武器屋さんの前が会場になるので行きましょ。」
奈那葉とミントが立ち上がり案内してくれるらしいミントが一歩先を歩こうとすると、それを阻むように男達が目の前で仁王立ちした。
「おっと嬢ちゃん達どこ行くんだ?俺たちと遊ぼうぜ?」
町長の娘のミントを知らないって事はコイツら外から来たヤツらのようだ。俺は目に入ってないのか奈那葉とミントしか見てないな。とりあえずアイアンハエたたきを取り出し準備だけはしておこう。
「何ですか?そこどいて下さい。」
「おお怖い。ははっ気が強い女は好きだぜ?ちゃんと従うなら痛いことはしないから安心しろよ。」
「あの、その二人は俺のツレだから他あたってくれない?」
「ん?男には用はないんだよ。」
「そうだそうだ!お前はとっとと失せなあ。」
よし、これはダメだな。俺の相棒が唸る時間だ。
なんか俺、今すごくヒーローっぽいな。すけえテンション上がってきた。いいッ!こういうのいいな。夢花を護ってた時もこういう事が無かった訳じゃないけど、アレは義務感と作業感しか無かったからな。状況は似てても心境が全く違いすぎる。
「ふっ失せるのはお前らの方だ。とっとと「とっとと失せなっ!」…?」
あれ?俺のかっこいいセリフに被せてきたのは誰だ?




