女将さんの力
収穫の出店は町長への届出だけ、場所は邪魔な場所じゃ無ければ良いとの事なので聖人さんはお礼としてパン屋さん、八百屋さん、肉屋さんそれぞれからパン、キャベツっぽい野菜、トマト、玉ねぎっぽい野菜、ソーセージの大量注文した。
「「「毎度あり~!」」」
ホクホクで去っていく三人を笑顔で見送り、先に少しもらった注文品を手に女将さんに調理場の使用許可をもらった聖人さんが作ったのはホットドック。
「「うまいっ!」」
「パンにソーセージを挟むのがこんなに美味しいなんてねぇ。今までやらなかった事を後悔するよ。このソースも…。」
「これは故郷の料理でホットドックっていうんです。この町でも受け入れられそうですか?」
「ホ…ホットドック…。害獣の名前を料理につけるなんて奇特な故郷だねぇ。」
この世界の害獣と呼ばれる中にいるホットドックは主に岩山を寝床にする赤い狼。たまに火を吐くやつがいるからその名前になったらしい。知識の中にあるけどまだ見た事はない存在。
「故郷の言葉では細長いソーセージって意味なんですよ。でも受け入れ安いように名前はソーセージパンに変えてしまいましょう。」
「これを売るのかい?」
「はい。一つ大銅板四枚くらいかなと。」
大銅板四枚って事は四百円か。元の世界の価格設定だと少し高めに感じるけどこっちの世界だとそうでも無いのかな。美味しいし普通に並びそう。聖人さん目当てでも並びそう。
「あんた隠してるようだけど綺麗な顔してんだからもう少し高めでも売れるんじゃないかい。」
「そういう身売りはしない主義なので。」
「そうかい。」
「ところで女将さん、使用料はお支払いするので祭りの日の前日に調理場をお借りできませんか?もし女将さんがお手伝い下さるなら上乗せとソースのレシピ教えますよ。」
「のった!」
ホットドック改めソーセージパン、聖人さんは銀貨一枚使って大量仕入れしたから仕込みも大量。女将さんそれ把握してるのかな。
「はやと君も手伝ってくれるなら嬉しいかな。」
「…俺は料理は…。」
「パンを縦に切る作業だよ。」
「それくらいなら。」
後にこの言葉を凄い後悔した。
ただパンを縦に切るだけ…簡単だけど長時間やればただの拷問だ。
「はやと君まだまだあるからペース上げて。」
「聖人さん休憩しよう。女将さんも疲れて…女将さん?!」
玉ねぎの微塵切りが秒で増えてる…トマトっぽい野菜も切り終わってるが女将さんは無表情で眼に光が無い!
「女将さんっ!闇堕ちしちゃダメだっ!!戻ってきて!俺をひとりにしないでくれ!!」
「ふふふ何言ってんだい。口を動かす暇があるなら手を動かしなよ。そうだ取っておきをかけてあげようか。倍速。」
な、何だ?!手だけが異常な速さで動いてる!
「私の力じゃ身体の一部の速度しか上がらないけど便利だろ?」
「へ~女将さん凄い良い力ですね。」
「褒めたって何も出ないよ。」
いや、褒められた瞬間俺も女将さんも更にスピードが上がったよね。もはや自分の手なのに無意識に動いてるに近いし残像が見える。
「さ、それが切れたら酷い筋肉痛になるから頑張らないとだね。」
「え?!そんな重要な情報後出しにしないで!そ、そうだ聖人さん奈那葉にも手伝って貰おうよ!!」
「奈那葉ちゃんは町長の娘さんと仲良くなって明日早くから手伝うってもう寝てしまったよ。」
何だと…。裏切りやがったな!あの聖人さん至上主義者が町長の娘を優先するなんて有り得ん!
「さあもう一息、頑張ろうね。」




