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クリームは甘いのに甘くない

「さあ、聞かせてもらおう。」


次の日、約束通りクリームさんを訪ねるとすぐに貸し会議室に案内された。

今日は昨日より少し人口密度が高い。クリームさん曰く昨日街の人の反感を買ってるから街の警備隊から人を借りたらしい。


「まず、昨日は私に策があると申しましたが、私達はこの国の人間では無く領民でもありません。また、長居するつもりもありませんので長期滞在が必要な事や実益の無い事に協力はできません。ですのでクリーム様、私達の策を買って頂けませんか?」


「…一日待たせてソレとは…。」


「しかし筋は通っているかと思います。そして昨日申し上げた通り確認はしましたので実行可能な策である事は保証します。

価格は金貨一枚、先ずは大枠を話し、購入されるのであれば詳細をお話します。もしお気に召さなければそれまでです。」


「……分かった。」


聖人さんがクリームさんに話したのはダイエットの報酬に高カロリー食を作る権利を与えるという内容。

但しクリームさんはこの話を買わなかったので本当に大枠だけ。お金が手に入ると思ってただけに残念だ。


「大枠で十分だ。後は私が考える。それよりも…聖人殿、貴君は我が領主に遣える気はないか?」


「有難いお話ですがお断りさせていただきます。」


「そうか…それは残念だ。」


聖人さんの返事とほぼ同時にクリームさんの護衛であったはずの人達が俺と奈那葉に武器を向けてくる。俺が拒絶の盾を発動しようとすると聖人さんに視線で止められた。奈那葉も微動だにしない。


「クリーム様、これはどういう事でしょうか。」


「なに、目の前に優秀な人材が居て弱みが二つもある。利用しない手はないだろう。このまま大人しくしていれば危害は加えない。聖人殿、もう一度言おう。我が領主に遣えるがいい。」


「…お断りします。私に弱みなんてありませんから。」


ニッコリ笑った聖人さんにつられて俺と奈那葉の口角が上がる。お許しがでたからにはとことん暴れないとな。


「発動。平伏せっ!」


奈那葉の石楠花しゃくなげの乙女の範囲はこの部屋全体を覆うから全員が綺麗に床しか見れてない。あ、でもクリームさんは少しプルプルしてるから微妙に抵抗してるのか。


「なっ何だこれはっ!」


「頼もしいでしょう?奈那葉ちゃん、彼女をテーブルの上でこの体勢にさせて後は部屋の隅で直立させてくれるかな。はやと君、アイアンハエたたき…じゃなくて鞭…は使った事ないし普通のハエたたき出してくれる?」


「…了解。」


聖人さん…いや心の師匠。健全な男子高校生としてコレは…クリームさんプロポーションが分かる膝丈ワンピースだから少しドキドキする。


「はい。じゃあ奈那葉ちゃんこのハエたたき護衛の人に持たせてこの位置で素振りするように命じてくれるかな。」


「わ、分かりました。」


「ま、待て!何をする気だっ!!こんな恥ずかしめ…許さないから…あ、ちょっ待って……。」


「さあ、退散退散。」


俺と奈那葉の背中を押しながら聖人さん部屋の外に向かう。部屋を出てパタンとドアが閉まると護衛の人達とクリームさんの声が……聞こえないふり。


「早く街を出ないとね。キックボードで駆け抜けよう。」


大急ぎで街を出てキックボードからキャンピングカーに乗り換えて逃走。

初めての街だったのに全然満喫した感がなかった。そして課題が一つ。


「次の街からは聖人さんと奈那葉は変装で。」


「ん~眼鏡でもかける?」


「私じゃなくて聖人さんが目立ってるのだと思うんだけど…。」


「いや、効果が二倍になってるんだ。奈那葉も変装、これ確定。」


次こそは異世界の街を満喫したい…。




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