良くも悪くも見た目は大切
「ここがプクマン…。」
「クプンマだね。」
あの乙夜から三日かけてやっと着いたクプンマの街は煉瓦造りのヨーロッパみたいな街並みで綺麗だ。
そして、街中の人々が大っきい。どういう大きさかと言うとお相撲さんかなっていう感じの横に大きい人が大多数。
「とりあえず見て回ろうか。あとお金を稼がないとね。」
そう、俺達は金欠だ。
飯も寝床も有るけれど金は支給されて無いし無職だから入っても来ない。これではせっかく旅して色々な場所に行っても何も楽しめないしトラブルがあった時にも心許無い。
一応、街に着くまでに聖人さんとどうするか話して幾つか案は出し合った。
一、聖人さんの手料理を売る。
二、俺が出した元の世界の物を売る。
三、日雇いの仕事をする。
一番手っ取り早いのは俺が出した物を売る事だから聖人さんとは何が売れるか確認してからという話で終わっている。奈那葉には引きこもりモードが解除してから伝えて了解はもらったから問題無し。
「人も多いから逸れないようにね。」
俺と奈那葉は頷いて聖人さんの後を付いていきながら街を見ていく。
街の入口から少し歩くと天幕の張られた一帯が現れとても賑わっている。果物や野菜っぽいものや串焼き、ブレスレットなど色々売ってる市場みたいで良い勉強になる。
ただ良い匂いがしても買えないのは拷問だな。
「姉ちゃん可愛いね~。一個持っていきなっ!」
「お兄さん男前だねぇ。コレ食べとくれよぉ。」
訂正。おこぼれ貰えて幸せデス。
市場を通り過ぎると今度は建物の店が現れたけど食事処や宿屋が中心みたいだから市場との値段の違いなどを見つつスルー。今度は広い広場に出たけど
何だか人だかりが有る。
とりあえず近寄ってみるとそこにあるのは店じゃなくて揉め事のよう。
「そんなの横暴だー!」
「この街を潰す気かー!!」
殺気だって中心に居る普通サイズの女性に叫んでる人だかりとそれを制する普通サイズの兵士みたいな人達、近寄るべきじゃなったと聖人さんと奈那葉と目配せをして早急に立ち去ろうとしけど遅かった。
「ぇえい落ちつけー!この豚共がっ!!これは領主からの決定事項である。お前達は家畜の如くブクブク肥え領主様に不利益をもたらしたのだ。もう一度言う。この街の人々の八割が標準体型に戻るまで高カロリー食の販売、調理を禁ずる!!あの三人が目標値だっ!」
一斉に向けられた目、目、目。凄く殺気立ってる。
「そこの者達、体型や格好からしてこの街の者では無いとお見受けした。領主補佐官の一人として協力を仰ぎたい。ついては場所を移動し話をさせてくれ。」
ん~コレ、断れ…ないよね。聖人さんみたら喋るなと合図されたし。
「いかにも、私達は先程この街に着いたばかりの者です。ですので状況を把握しておりません。ご協力できるかはお話を伺ってからとなりますが、ご同行はさせていただきます。」
「承知した。しかしその前に、その後ろの者達。肉がはみ出して隠れられていない。大人しく出て来い。」
あ、やっぱり付けられてましたか知ってましたよ。建物の影に入ろうとしても半分出てるし、顔赤いし鼻息荒いし、聖人さんと奈那葉のストーカーだっていう事も知っていました。だるまさんが転んだって振り向くか鬼のように振り向けばピタッて止まってたしね。
「通行妨害は止め即座に解散せよ。」
「はやと君、そんな顔してると幸せが逃げていくよ?」
「聖人さん、これは世の中の理不尽を体現した顔なんだ。」
「ん、そうだね。じゃあ呪文を唱えよう。“一番離れた人が本当の恋人”」
すごい呪文だ。一瞬でいなくなった。
聖人さん、昔からモテたんだろうな…。
「一番離れてるのは僕の奥さんだから嘘はついていないよ。好意の押し売りは良くないね。」
奈那葉が青い顔をしてる。流れ弾に当たったようだ。俺には慰めるスキルは無いみたいだから自然治癒しかなさそうだな。
街に着く前にキャンピングカーから出てきた時もデリカシーが無いと言われたし…。
とりあえず普通サイズの女性について行くとさっきスルーした宿屋のひとつに入った。




