111話
「親方いるかーい」
「おうっ酒持ってきてくれたのか、奥に居るから勝手に入って来い」
奥の方からアステルのしゃがれた声が聞こえてきた、もう声だけで俺とわかるぐらいにはなっているらしい
「今日は酒じゃなくてミスリルなんだけど要る?」
「そんな気安く言うような代物ではないがいくらでも要るわい」
「素材のまんまなんだけど解体できる?ジュエルリザードって魔物なんだけどさ」
「1匹まるごとか、そいつは大量だな、大歓迎だ」
「30匹要るんだけど、、、」
「そんな冗談に付き合っていられるほど暇じゃないわ、そんなにいたってわしのとこだけで消化しきれんわ」
「親方のところだけだと何匹要るかな?」
「3匹もいたら充分だぞ」
ギルドで買い取ってもらうとジュエルリザード1匹で金貨一枚だがアステルが買うときには金貨2枚になるらしい、もちろん解体済みの素材だけだが
「じゃあ3匹置いていくよ、これは親方用な、後エステルや仲間にも分けてあげてくれ、余分に5匹置いていくから、エステル達にも世話になってるからな」
「8匹も買い取る金はねえぞ」
「何言っているんだよ、いつも親方には世話になってるから金なんて要らないよ」
「なんかまた面倒な頼まれごとが待っている気がして素直には受け取りたくはないが」
「じゃあ要らない?それならギルドに売っちゃうけど」
「ありがたく受け取っておくわ、厄介こともたまには受けてやるわ」
全部渡すつもりが22匹も余ってしまった、ギルドに売れば金貨22枚にはなるが、この前国王に金を売った500枚がまだ残っているのでしばらくは換金する必要がない
また日本に戻ってサダムさんの所でダイヤを買い取ってもらおう、中近東まで行かなくて良くなったのでだいぶ楽になった、サダムさんに連絡してアポを取ることができた
「サダムさん また買取お願いします」
「杉山さん、また持ってきてくれたんですね、今度は何キロですか?最初の頃のカラットでもっち来てくれた頃が懐かしいですね」
「今日はそこまで多くなくて30キロです、査定お願いします」
「大量ですね、それでは拝見致します」
ゴロゴロと無造作に置いてあるダイヤを1つ1つ丁寧に見ていく、たまに"ほう"とか"ふむふむ"とため息の篭った声が漏れる
「随分と加工技術が上がったみたいですね、この前持ってきてくれたのとは雲泥の差だ、高く買取らせて頂きますね、1キロ15億で如何ですか?」
えっと計算したら450億円ってこと?凄くない?
「はい、それで結構です」
「杉山さんあなた私を信用しすぎですよ、私の言い値でOKして大丈夫ですか?ちょっと心配です」
前にヒルダにも言われたがどうも交渉は苦手のようだ、商社時代も交渉はほぼ相手の言いなりだったが対応した人たちがみな騙すような人たちではなかったのでだいぶ助けられた
「大丈夫ですよ、私はサダムさんを信用します、自分の父親の命の恩人を騙すような家族を大事にしない人なんて居ないと思ってますから」
「これは一本取られましたな、私が提示した金額はしっかりと相場通りなのでご安心を、なんでも言いなりな貴方のことを心配して言ったまでです」
俺が接する人たちは良い人ばかりで良かった、男性に限るが、450億円の小切手をもらい、サダムさんとは別れる、銀行を経由してスイス銀行に入れるとお金の流れが読まれてしまう為直接スイスに飛ぶ必要がある
前回スイスに行ってからまだ1ヶ月しか経っていない為しばらくは行くことができない、登山の趣味もないのに度々訪れるのは不自然以外の何者でもない
まだ手元には70億円ぐらいの現金があるためすぐに現金は必要ない、バッグに入れておけば安心だ、銀行を使うのは異世界と現代を行き来して万が一命を落とすようなことがあるため銀行にもお金を入れておいたほうが遺産として残せるための措置だ
安全面から考えるとバッグだけでも充分ではある、でも俺が死んでもテレサ達は異世界人の為残してあげることは出来ない、テレサ達の地球での身分証を作る必要はあるな
再びサダムさんのところに戻る、なんと言ってもサダムさんも王族である、テレサ達の身分証明を発行できる権限を持っている、今日の今日ではあるがまた会ってくれた
「サダムさんに折り入ってお願いがあるのですが」
「多分簡単にハイとは言い難いことなんでしょうね、今度は何をご用意致しますか?」
「実はサダムさんの国の身分証明を発行して頂きたい人物が居ます」
「それはまたどういったことでしょうか」
「私の元に戸籍がない外国人が居るのですが、その者と結婚を考えているのですが、身分証明がない為結婚ができなくて困っているのです、どうやら親が生まれた時に申請を忘れたようでして」
「日本で生まれたのですか?」
「はい、不法入国者なのですが、申請してばれることを怖れてそのまま放置されて16歳になってしまったのです」
「いずれは日本国籍にされるおつもりですか?」
「それは迷っています、実は24歳の者とも結婚するつもりなのですが、日本では重婚が認められておりません、なので私がサダムさんの国民になることも考慮しております。」
「杉山さんが我が国の国民になる必要はないです、その2人を我が国の民になり向こうで結婚すれば2人と結婚できますから」
「できそうですか?」
「正直断りたいですが、やってやれないことはないです、杉山さんから頂いた道具もその辺に訳があると思います、その辺の事情を話してくれたら協力しますよ」
サダムさんに渡したバッグやエリクサーでこの世界以外の住人とゆうことがばれたようだ、ここは全ての事情を話すしかないようだ