パーティ……?
「……。エナさん? それはどう言うことですか?」
頭が真っ白になりつつ俺は聞く。質問されたエナは、勝ち誇ったように笑みを浮かべ答える。
「ふ、パンイチは知らないのかな。武器でも魔法でも眼でも、名前が存在するのよ。でも名無しのものもある。例えばオーダーメイドや自分が創設者の魔法とかね。そういうものには、名前をつけれるのよ。だから私が付けた。理解できた?」
ポカーンと俺は口を開ける。何が起こったのかをなんとか理解する。
「つ、つまり、エナは俺の眼の名前を、“この変態眼”とかいうクソみたいな名前に命名したのか……?」
「ええそうよ。ちなみに名前は二度と変更できないわ」
「マジで?」
「マジで」
なんで俺の異世界転生はこうも残酷なんだよ!!!
そんなことを思っていると、ギルド中から声が聞こえてくる。
「ぷっ、良かったな変態! そんな名前をつけてもらえて」
「くくくく、お前に似合ってるぞ変態!」
「エナは最高だな!」
俺はそれを無視しつつ、エナに聞く。
「い、いや、なんでまた勝手に俺の眼の名前決めたんだ?」
率直な疑問だ。俺はエナを困らせることは断じてしてない。そう。断じてだ。
エナは、俺に失望する目で、俺だけに聞こえるように言う。
「なんでかって? 先ほどの自分の行動言動を思い出しなさいよ。忘れたとは言わせないわ」
その言葉は俺はハッとする表情を作る。作るだけだ。実際はなんで怒ってるのかは分かっていたが、今気づいた感を出す。
「まさかあれだけのことで……」
「まさか? あれだけ? どういうことかしら?」
エナはキレながら、俺のほっぺをグリグリつねってくる。|
側から見ればイチャついて見えるかもしれないが、ただただ痛い。
「ほひ、すすす、すみましぇんで、痛い痛い痛い」
俺の泣き目を見てエナがほっぺを引っ張るのをやめてくれる。という展開はなく、むしろ強まった。
このくそビッチめ。許さんぞ。
「これでお相子だと思うなよ」
と言ってやっとほっぺから手を離してくれる。俺はつねられた頬を優しく触る。
この後たくさん殴られそうだな。
俺は気を取り直してエナに聞く。
「もう眼の名前はいいわ。変えられんし。だがこれで俺とお前はパーティメンバーってことだよな?」
少し間があり、
「ええ。不本意だけど、あなたがここでパンツを脱ぐというのはやめてもらいからね。(それに初めての仲間だし)」
最後なんて言ったのかは聞き取れなかったが、こうして脅し脅されのパーティが組まれた。
X分後
「はい。これでパーティの登録ができました。パーティリーダーのエナさん、パンイチのタナカさん。これから街のために頑張ってくださいね」
「おう、受付のねぇちゃん! そんなに俺のことをパンイチ呼びするってことは、俺に興味があるのかな? あるんだよね?」
俺は受付の机に体を乗り出しつつそう言う。受付のお姉さんが若干顔を引きつって、俺から避けるように動いた時、
バン!! と頭を叩かれた。それは女子が彼氏に嫉妬して優しく殴るような、気持ちの良いものではない。現実は、
ドン! と俺の顔が机にめり込んだ。
「ほら、バカのことやってないで、今からクエストを受けに行くわよ。パンイチ」
「……。なんでこうなる?」
何度目かわからんが、この転生生活は間違っている。
「いてぇぞ! それにおま、パーティメンバーなんだから名前で呼べよ!」
するとエナは俺をうじ虫を見るかのような目で見る。
「分かったわよパンイチ。それにね! アンタがどこから来たのかは知らないけど、家ないんでしょ? うちに住ませてあげるんだから、その分働きなさい」
「あいあい、ぺたんこきゃぷてん」
やる気のない返事をして、俺たちはクエスト掲示板へ進む。
俺の顔が腫れたのは気のせいだ。