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この眼の名前は!  作者: 夏派
一章
3/22

仲間……?

N時間後 異世界


 目の前にいるフードをかぶった人間が俺にこう言う。

 

 声は女性のものだった。


「目覚めたかパンイチ。あんた私の仲間になりなさい。拒否権はないわ」


 うん。頭が追い付かん。


 初対面の人にいきなりパンイチ呼びをするその女性を俺は見る。


「仲間ってなんだよ。なんのだよ。それに初対面のこの美青年にいきなりパンイチ呼びはないだろ。このぺたんこ」


 俺は優しい言葉を投げかける。そう目の前の女性は平らなのだ。何がとは言わないが。


 ちなみに美青年は俺の自己評価だ。


「おい、今なんて言った? 最後なんて言った? おい」


 なんともピリつく空気が生まれたが、俺ははっきりと言う。


「ぺたんk」


 ドン!! 


 言い終わる前に俺の後ろの棚が潰れる音が聞こえた。目の前の女性が殴ったようだ。


 フードが取れ、顔が見える。赤短髪のこれまた美人だった。歳はぱっと見俺と同じくらい。


「……。はい、申し訳ないです…」


 え? なんなんのこれ? 人に対してはパンイチ呼びするのに自分がいじられると怒る系ですか。そうですか。


「もう一度言う。私の仲間になりなさい。拒否権はない」


 いや、拒否権ないなら、なりなさいと言う必要もないのでは? と言う言葉を飲み込んで俺は言う。


「いや、拒否権ないなら、なりなさいとか言う必要性なくないですか? アホですか? そうですか?」


 吐いてしまった。飲み込んだ言葉を吐いてしまった。


 自分が拘束されている立場は理解しているが、なんか挑発をする。


 すると今度は俺の左側を通る拳が繰り出された。


 また後ろのタンスが潰れた。


「仲間になりなさい」


「……。は、は、はい。も、もちろんですわよ?」


 語尾がキモくなったが、仕方がない。これが世に言う脅しか。


 ん? 仲間?


「あ、あの、仲間とは一体どういうことです?」


 恐る恐る聞く。なにせ展開が早すぎる。


「仲間は仲間よ。私の冒険の仲間よ。あんたも知ってるでしょ、クエストを受けるためにはパーティメンバーが最低2人は必要なのよ」


 いや、知りませんけど? 何せさっきまで試験受けていたもので。というか、本当にここ異世界なんだな。


「いやー、その、自分遠い場所から来た者でして、ここについて詳しく教えて頂きないでしょうか?」


 敬語を使って丁寧に聞いた。


 仲間云々も前にそもそもこの場所について詳しく知らないといけない。


「仕方ないわね。一回しか言わないからしっかり聞きなさいよねパンイチ。ちなみに私の名前は、エナよ」


「エナ、短髪、短気、ぺたんこ」


 おっと心の中で言ったつもりが言葉になっていた。しっかりお口チャックしないとな。


 自分の頭上を通る拳に怯えながら、彼女は語った。


 ここは冒険者の始まりの街、ライト。冒険者とはギルドから与えられるクエストを攻略することで、報酬を得て生計を立てる人のことをいう。ゲームのRPGのような世界だ。良くある異世界ものとほとんど変わらない。そうここの世界は、魔法あり、モンスターあり、魔王をはじめとする暗黒軍が存在するのだ。


 ちなみに俺が拘束されている理由は、俺がパンイチでエナの家の前で気絶していたかららしい。だから拘束するのか? と思ったがなんとびっくり暗黒軍の7人の幹部のうち1人は、パンイチらしい。それと俺を重ね合わせた結果とりあえず拘束したらしいが、手配書と顔があまりにも違うことに気付いて、俺が幹部という線は切ったと俺に語った。


 なら拘束を解けと思ったが、エナはこう語る。


「だからね、うち貧乏なのよ。それでクエスト報酬という大金が欲しいの。で、仲間を募集してるんだけど……。なかなか集まらなくってね。そこであんたの出番よ!」


 俺にビシッと指を指してきた。


 これこれ、人を指してはいけないと習わなかったんですか? それとも習ったけど、単細胞すぎて忘れちゃったんですか? という言葉を今度こそしっかり飲む。


「あんた今心の中で失礼なこと考えてるでしょ? 顔に出てるわよ。まぁいいわ、話を戻すと、募集して無理なら脅して……じゃなくて、懇願(こんがん)することにしたのよ!」


「おい、今脅してって聞こえたぞ」


「何?」


 鋭い目つきで睨まれた。もう怖い。異世界怖い。


「あー、もー、仲間になればいいんだろ? なるよ、なる。俺だって初めてなんだここは。情報が欲しいからな」


 俺がそう言うと、笑顔になったエナは俺の拘束用ロープをとってくれた。


「じゃあ今からギルドに行って、パーティ申請と早速クエストをやりに行くわよ」


 そう言って俺に毛布のような布を投げてきた。


 俺は反射的にそれを受け取る。


「これはなんだ? エナのタオルケットか? 最高だなおい」


 感想を述べると、エナがゴミを見るかのような目になっていたことはわざわざ言うまでもない。


「……。ただのボロ布だし、パンイチで街を歩かせるのもあれかと思って渡したんだけど……。パンイチ変態君には、いらなかったかな?」


 眉間をピキピキさせながら言ってきた。正直怖い。


「パンイチ呼びはやめろよな。俺ら仲間だろ? それに俺には風太という名前があるんだからな」


 ここで初めて名前を名乗るとエナは軽く微笑んだ。それに俺も笑顔で返す。すると、


「そう、よろしくねパンイチ」


「おい、そこはフウタって呼ぶところだろうが。このくそぺたn」


 文句は最後まで言うことができず、エナの蹴りが俺の横を通り過ぎた。


 こうして、俺の最悪な転生から始まる異世界ライフが始まった。


 

 

 

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