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はじめてのお茶会(中)

「ディアナ、この服を着てくれ。」


「ちょっとデザインが幼いな。次。」


「髪色と合ってない。もう少し薄いグリーン系の方がいいか?次。」


試着室の前に試着した服が次から次に積み上がっていく。アデルのダメ出しに、さすがのわたしも着替えすぎてヘロヘロだ。


アデルのお店は一階で販売し、二階が貸出ブース、そして三階に工房があり四階は応接室と執務室。そしてこの建物の隣にあるさらに大きい建物がデルタ商会の本店。

悲しいことにわたしが住んでいる居住区の建物より大きくて綺麗。


応接室へ上がると、服は既に何点か見繕ってあり、服に合わせた小物が並ぶ。着替えるための衝立や鏡も用意されている。


「ディアナ様の雰囲気はこちらの方がよろしいのでは?」

「この色だと瞳の色と合わないわ。これと似た作りで、違う色がありましたよね?」


何点か決めていた服をスタッフの人たちが次々に体に当てていく。服の試着はエミリで慣れてるので、着せ替え人形扱いもどんと来いだ。


「ディアナの髪に合わせるならこっちだろ。」


スタッフの人にお任せだと思ったら、アデルも一緒に立ち会うようだ。勉強をしているだけあって、髪や目との色の合わせ方など詳しい。


最終的に候補に残った服を、スタンバイしていたお針子さんが手際よく着せてくれる。装飾の多い服は自分で着るのが大変なので、お任せるのが一番。


わたしが着替える衝立の向こう側では、アデルが慣れた様子で小物を選んでいる。見えていないと思うけど、すぐそこにアデルがいる状況は結構恥ずかしい。

アデル本人は職業柄なのかあまり気にしてない様子なので、わたしも言うに言えない。


「ディアナの雰囲気と合ってないな。次はこれね。」


「ダメだ。大人っぽすぎる。」


「これのもっと濃い色のなかった?」


最初に準備していた服以外に、次から次へと新しい服が用意される。服や小物を抱えたスタッフの人たちが、慌ただしく部屋の出入りをしている。

アデルの仕事に対する熱は凄い。人が変わったようになるとは予想外。


「うん。いいんじゃないか?ディアナはどう思う?」


首から肩にかけてレースが使われ、肩が出るデザインだが上品に仕上がっている。服全体に大輪の花の刺繍が施さて物凄く手が込んでいる。そして何より生地の質が恐ろしく良いのか、柔らかく肌触りがいい。


「わたしもこのデザイン好き。見た目は大人っぽいデザインだけど、腰の大きなリボンが可愛いから変に大人っぽくなりすぎてないね。」

「気に入ってくれてよかった。雰囲気が変わったから髪も結い直そう。」


服の片づけをしていたスタッフに指示すると、椅子と髪結い用の道具があっと言う間に用意された。アデルに促され椅子に座ると、それを見て嬉しそうな表情で後ろに立ち、当たり前のようにわたしの髪飾りを外す。


「え!?アデルがしてくれるの?」

「当たり前だろ?髪結いも勉強したんだ。似合う髪にする。俺に任せてくれ。」


わたしの返答も待たず、編み込みを全部外し、丁寧に櫛で梳いてくれる。男性の髪結師もいるので変に意識するのは失礼だと思うけれど、エミリの手とは違う男の人の大きな手に凄く緊張する。


「髪型が崩れないように少し固めるな。髪飾りは豪奢になりすぎないようにする。」


アデルは本当に勉強してるようで手つきに無駄がない。髪飾りも何点かある中から、服の雰囲気に合わせた物を選んで付けてくれた。


「どうだ?いつもディアナがしてる髪型に似せて服に合うように直した。」

「凄い。素敵!編み込みの位置を変えて、ちょっと結い上げる高さを変えるだけで雰囲気がかわるね。髪飾りも小花がたくさん散ってるデザインで可愛い。」


鏡に映るわたしの姿はどこからどう見ても金持ちのお嬢様だ。洗礼式の時も偽貴族っぽく見えていたけど、今は服の質が比べ物にならないくらい良いので、本物の貴族のお嬢様に見える。


「喜んでくれてよかった。お茶会までまだ少し時間があるから、少し休憩していかないか?慌ただしくて疲れただろ?」


試着の為に用意されていた衝立や椅子も片付けられ、入れ替わる様に部屋に入ってきた下働きの人がお茶の準備を整えていく。

柑橘系の爽やかな花の香りのお茶が鼻孔をくすぐる。


「美味しい。爽やかな匂いだからもっとスッキリした味かと思ったけど、甘みがあってわたし好みの味。」

「うちの下働きに茶葉の調合が得意なのがいるんだ。ディアナが好きそうな味を組み合わせてもらったけど、好みの味に仕上がったみたいだな。気に入ったならお土産用に準備するな。」

「いいの?ありがとう。」


一緒に置いてある焼き菓子も、今からわたしがお茶会なので軽めの物ばかり用意してくれている。この焼き菓子もわたし好み。


「今日のお礼にお土産持ってきたの。リーベルに渡す物と同じ物だけど、わたしが考案したお菓子よ。調理室にある魔道具を使わせてもらったから、食べる時に驚かないでね。リゲル様も食べてるから味は保証するわ。」

「ディアナの手作り?ありがとう。」


これが服のお礼になるのか不思議だけど、リゲルの助言ではわたしの手作りお菓子を渡しておけば問題ないらしい。

受け取ったアデルは、嬉しそうな笑顔を浮かべて早くお土産の箱を開けたそうだ。喜んでくれているみたなのでよかった。


「まだ名残惜しいけどそろそろ出た方がいいな。本当はリーベルの家まで送りたかったけど、馬車が待ってるようだからここで見送るよ。」


わたしがお店の外に出ると馬車はお店の前で待機していた。出てくるのに合わせて待機していた場所から移動して来たようだ。

馬車、有能。


お店の前で少しアデルと話し挨拶していると、周りからの視線が痛い。馬車にこの服だと貴族のご令嬢にしか見えない。貴族がお店を出入りすることでお店に箔が付くのかな?これが服の宣伝って事でいいなら視線もお安い御用。


「今日は本当にありがとう。また明日、学校でね。」


アデルにエスコートしてもらいながら馬車に乗り込むと、御者の掛け声で馬車は静かに動き始めた。

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