6. 精霊界へ
よろしくお願いします。
足を踏み入れたそこは、今まで見たこともないほど、緑で覆われていた。
「すげぇ。こんな森見たことない…って、身体動く」
自分の意思で身体が動かせるようになり、ホッと息を吐き出すと、右手のブレスレットから四人の精霊が実体を持って顕現した。
「またこの地へ戻ってこれるとは」
感慨深く、周りを見渡す精霊達につられ、周りを見廻す。
青々と茂った木々が空まで伸びているのに薄暗くなく、むしろ眩しいほどだ。木々の間に差し込む陽光で空気は暖かく、深呼吸すると身体の中から澄んでいく。
「すごいな、ここ…」
思わず呟いた言葉に、レクラス達が苦笑した。
「ここはまだ入り口だから、もう少し奥に行くともっと澄んでいるわ」
鈴の音とともに、森の奥から女性が一人現れた。
真っ直ぐ背中まで伸びる銀色の髪は、陽光に照らされ輝いている。水色の瞳は慈愛を称え、柔らかく微笑む唇は桜色に色付く。
「…っ!」
息を飲むほどの、美人だった。ただ、髪から覗く耳が尖っているのが、彼女が人間ではないことを教えていた。
ビスタに身体を乗っ取られていたときとは違う、身の内から生命力が溢れているように見えた。
四精霊は女性の足元に跪き、頭を下げる。
「ご無事でなによりです。コルト様っ」
「皆も、息災でなによりです。心配をかけましたね」
「とんでもありません。コルト様がご無事であれば、我らはそれに勝る喜びはありません」
「ありがとう」
コルト。オレの母親にして、次期精霊王。
四精霊に向けていた視線を、オレに向ける。目が合ってコルトはふわりと笑みを浮かべた。
ありがとうございました。