5 緊急事態?
よろしくお願いします。
レクラスに支えられながら、彼らの住む家に向かう。
出迎えてくれたのは、心配、と顔に書いてあるミシダだった。
「何があったの?」
リビングに案内されて、ソファに腰を下ろす。
「エシャンと名乗る精霊から、襲撃を受けた」
先程あったことを話すと、ミシダだけでなくティアも息を飲んだ。
「何か知ってるのか?!」
レクラスが掴みかかる勢いで、ティアに迫った。
普段は無表情を崩さないティアが、珍しく動揺を隠せていなかった。
「おそらく、同じタイミングだったのだろう。精霊界から戴冠式を延期する連絡があった」
苦渋を滲ませ、ティアが言った。
「どうゆう…」
「コルト様が、何者かに狙われたそうだ」
息を飲む。
「それで、コルト様は?!」
「無事だ。怪我もしていない」
「よかった…」
その場にへたり込み、詰めていた息を吐き出す。
「襲撃者の目処はたっているのか?」
レクラスの言葉に、ティアは首を横に振った。
「おそらく、キーラを襲ったエシャンと名乗る精霊も関係していると思うが、状況が判らないとなんとも…」
「ではお前たちも来るがいい」
ティアの言葉に、オレの口からオレのではない声が言った。
「セヴィア様?!」
「どうして」
初代精霊王にして、精霊たちの祖。
ティアたちが驚くのも仕方ない。セヴィアはオレに宿っていたが、前回の戦いで主謀者のビスタを連れて、精霊界に帰ったはずだからだ。
疑問に答えたのはセヴィア本人だった。
「我とキーラを繋ぐ指輪を媒介にした」
オレの左手中指に嵌っている金色の指輪は、次期精霊王の証、そしてセヴィアの力の塊。媒介にするには都合がいいそうだ。
三人の視線が、オレの左手に向けられた。
「それと彼らにも、力を借りた」
セヴィアが言うと、右手首に着けているブレスレットが鈴のような音を鳴らし、四人の精霊が並んだ。
「コルト様の一大事、見過ごすことはできません」
黄色の髪の精霊、ビシードの言葉に全員が頷く。
「では、皆を精霊界に送る。準備はよいな?」
「はい」
意識せずに勝手に持ち上がる腕。今、この体の意識権は、セヴィアなのだ。
右手を上に左手を下に、時計で言うと右手が十二、左手が六の位置。
左中指に填められている指輪から暖かい力が、右手に流れていく。
その手を時計回りに、上下を入れ替えるように空間に円を描くと、目の前に巨大な門が現れた。
「それでは、行こうか」
セヴィアが言うと、重い音を立てて門が内側に開いていく。
人知れず息を飲み込み、オレたちは門を潜り精霊界へ足を踏み入れたーーー。
ありがとうございました〜。