賭け
だがロイの思いとは裏腹に、ケイはにやにや笑っていた。
「いいこと思いついたよ。長老、僕と賭けをしよう」
「きみが勝ったら最高位にしてあげるよ。僕が勝ったらきみの命を貰うからね」
ケイは楽し気にその条件を告げた。
「ああ、そうだ。今、僕は弱ってるからね――」
到底、弱ってるようには見えないが。
「この賭けを無効にしようとして、きみが僕を殺したら、ここにいるロイ君がきみを殺しに行くからね」
(……おいおい、巻き込むなよ)
ロイはため息をつく。
長老はこくこく頷き、神殿から逃げるように走り出す。
その時だった。
――正体不明のアンドロイドが出没した。
ロイとケイの脳内に、リゾの声が聞こえてきた。
(このタイミングで!)
ロイは焦るが、ケイは涼しい顔をしていた。
――だったら、アグ君とロイ君はリゾ君の元へ。カース君とグレス君はその場で待機。
とケイが他の最高位たちに呼びかける。
「俺もか?」
ロイは意外だった。
「こんな傷、どうってことないからね。きみは早くリゾ君の元へ駆けつけてやって……」
と言い終えたとこで、ケイは意識を失った。
長老がいた手前、かなり無理をしていたらしい。
「手当しないわけにはいかないだろう」
と、ロイ。
意識のないその顔を見る。
なかなかの美形で、ロイのタイプではあるのだ。
「俺はエムで、あんたはエスなのに、まったく手出す気も起きないのはなぜなんだろうな?」
そんなことをつぶやきながら、ロイはケイを手当することにした。
* * *
ファウ・レファイはその声を聞いて、苦々しい気分になった。
――聞こえるか?
聞こえないことにした。
――この能力を悪用するようで心苦しいが……
(だったら、使うな)
ファウは、リゾに邪眼にかけられ意識を失ったことがある。
意識を失っていた間、魔法を注がれていたようだ。
食事も入浴もしないで三日、体調が何も悪くないのはありがたいことかもしれないが、その行為はファウにとって屈辱だった。
その時の影響で、リゾの心の声が聞こえるようだ。




