合同訓練
リゾは今、ルウ族のため、せっせと働いているのだろう。
それが肉体はこんな風に嬲られている。
ロイは最高位というものがみじめに思えた。
その時、唐突に、ロイの脳裏に子どもの頃のリゾの姿が浮かんできた。
ロイがリゾに初めて会った時、リゾはまだ子どもだった。
最高位になり、ロイは不老不死の肉体を手に入れた。それが誇らしくもあった。
だが、長く生きすぎたのか――確実に自分たちは何かを失っている。
ふと、レンがあんな暴挙に出たのも長く生きすぎたせいではないか、そんな考えが浮かんだ。
ふっとため息をつき、ロイはリゾから離れた。
そのまま何事もなかったように立ち去った。
* * *
今日は風が強い。
砂漠は砂ぼこりが上がっていたが、オアシスの中のルウの地は快適だった。
ルウの地中央にある広場で一番隊と二番隊の合同訓練があった。
広場のそばには泉があり、涼しい風が吹きぬけている。
ファウ・レファイは心地よい風を受け、爽快な気分だった。
だが、周りの兵士たちはどうも自分を気遣うような視線を向けている。
それも無理はない。
少し前に、一番隊と二番隊の合同訓練中に、二番隊隊長でありながらファウが誘拐されるということが起きたばかり。
とはいえ、中止するほどの理由もなく合同訓練は行われていた。
少しは元気であるというアピールのため、ファウは一番隊の兵士を三人続けて投げ飛ばす。
「ちょっと、いいか」
その時、一番隊隊長が声をかけてきた。
一番隊隊長ガイル・ラテーシア。
身長一九〇センチほど、浅黒い肌に黒髪の大きな男だ。
「あの騒動でいらいらしてるのはわかるが、うちの部下のレベルに合わせて手加減してくれないか?」
ガイルは、ファウ、キョウと幼馴染でもある。
ましてや、ガイルは目の前でファウがさらわれ、何一つ抵抗できなかった。
ガイルはファウに対して、申し訳ない気持ちもあった。
部下の一人や二人は投げ飛ばされても文句はいえないが、三人目はさすがにやりすぎと判断したようだ。