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夕暮れの訪問-2-


 ガイルは驚く。

 鉄やら溶かして刀を作る工房で、キョウはクッキーを焼いていたらしい。

 そんなとこで焼いたら消し炭になってしまいそうだが、キョウは上手くクッキーを焼いたようだ。

 いったい、どんなテクニックを使えばそんな芸当ができるのか……?


「うまいっすね」

 部下は平然とクッキーを食べていた。

 確かに焦げ目もなく、絶妙な焼き加減だった。


「まあ、確かにうまい」

 ガイルもついクッキーを食べていた。


「でしょ?」

 キョウは笑顔になった。


「なんか思い出すな。ステラさんのクッキー」

 とガイル。


「……ステラさん?」

 キョウは首を傾げる。


「ほら、子どもの頃。ファウん家で遊んでるとよくばあやのステラさんがお菓子出してくれて? お前、ステラさんのパウンドケーキ好きだったろ?」

 と、ガイル。

「……ステラさん?」

「まあ、俺はパウンドケーキよりもクッキー派だったけどな」


「……ステラ?」

 キョウはしばし考え込んだ後、あっと何かに気づいた顔をし、一人でくすくす笑い出した。



「……どうした?」


「ん、いや、なんでもない。思い出し笑い」

 言いながらも、キョウはくすくす笑ってる。

「………ファウだって知らないのに、くすくす……ガイルが知ってて……く、くくっ…」


「なんか気味が悪いな」

 などと言いながら、ガイルはその笑顔を見て悪い気はしなかった。




   * * *


「ご馳走様でした」

 しばし世間話の後、ガイルと部下はまた警備に戻る。


「ご苦労様です」

 キョウは見送るため玄関まで出た。



 その時、ガイルはにハッとした。

 なんとなく感じてたキョウの違和感に気づいたのだ。


「魔力? 消えてる?」


「……バレたか?」

 キョウは茶化すように答えた。

「まあ隠し通せるもんでもないか……」


 ガイルは思わずキョウの体を抱きしめた。

「髪だけじゃなくて、魔力まで……!」


 強い後悔がガイルを襲う。

 思わず泣きそうになるが、そこは堪える。

 訓練中にいきなり現れた大男にあっさりファウを誘拐され、何も手だしが出来なかった。キョウが危険に晒されてるのを知りながらもその対策を怠った自分が不甲斐なかった。


「うん、まあ、平気だよ」

 抱きしめられたキョウは、ガイルの背中をぽんぽん叩く。


「お前のことは絶対俺が守るから」

 ガイルは強く誓う。


 その様子に部下は黙って見守っていた。ガイルの後悔をよくわかっていたからだ。

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