守りたいもの
真相はわからないが、アグは最高位の力と代償に言葉と姿を失ったと噂されている。その場にいるロイもカースもアグの本当の姿を知らない。
そんな状態になってまでもルウ族のために尽くしてるのかと思うと、ロイは複雑な気分だった。
「ケイの指示では、待機じゃなかった?」
と、ロイ。
「リゾが心配でね」
と、カース。
「三日も雨を降らせた後に、ルウの地の結界? これからケイに苦情を言おうと思ってたとこだ」
「そのケイだが、重傷だ」
「…………」
カースの動きが止まった。
「冗談とかではなく……? まあ、そんな冗談言うわけないか。誰が? まあ、いい。先にこいつの手当てをする」
ふと、ロイはおかしな事に気づいた。
「なんで、アンドロイドの残骸が結界の外にあるんだ?」
「こいつが結界の外で戦ったからだろう?」
と、カースが至極当たり前のように答えた。
「嘘だろ!」
ロイは血の気が引いた。
最高位というのは神の化身ともされる者たちだが、その真相はこの地――ルウの地の女神の加護を受けているからこそなのだ。
ルウの地にいる時だけ強い魔力を有しているのであって、ルウの地の外に出てしまえばその加護はない。
結界の外で戦ったということは………
「この地を壊されたくなかったか、アンドロイドごときルウの加護なんかいらないと思ったか……」
と、カース。
恐らく前者だろうな、とロイはレンの葬られてる場所に目をやる。
レンの生前使ってた杖は、ただ泉の前の地面に突き刺さっていた。
「そんなんじゃ早死にしちまうよ、まったく。そんなにレンが好きだったのか、こいつ?」
「まあ、レンはいい女だったからな」
カースは遠い目をした。
「こいつもいい男に育った」
ロイは思い出した。
かつてこのカースという男はレンと付き合っていた。その頃死にかけた子どもを拾った。それがリゾだ。
カースとレンは二人でリゾを育ててたようだがやがて別れ、リゾはレンと暮らしていた。