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月色の砂漠~ロイの憂い~  作者: チク


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13/23

つかの間


「だから、念のためだって。ことが起きてからじゃ遅いし」

「まあ、そうだろうけど、こっちは畑作業してんだっての」


 五番隊は農民の自警団のような集まりであった。

 ルウの地の本来の兵隊といえば、主に一~三番隊まである。四~六番隊はそのほとんどが兼業の兵士であり他に職業がある。


 ランズは体を動かしてないと気が済まないタイプの男だ。

 農作業が中断されていささか機嫌が悪かった。


「アンドロイドなんかにこのルウの地、荒らされたらもう畑どこじゃなくなるんだって」


 五番隊、六番隊は一度、ルウの地中央の広場へ集まっていた。


「お詫びに今度、また鳥捕まえたら差し入れしろよな」

 ランズがキョウの脇腹をつっつく。


 子どもたちは各々遊び始めている。

「キョウ兄ちゃんって、髪切ったら普通だよな」

「つまんねーよな」

 つい先日、切ったほうがいいと言ったのはすっかり忘れてるようだ。



 そんな時に二番隊が到着した。

「もう大丈夫」

 とファウが状況を説明した。

「アンドロイドがルウの地そばまで来ていたが、砂漠のほうへまた引き返して行った」


 リゾが倒したとはどうしても言いたくなかったのもあるが、公式の発表ではリゾは行方知れずということになっている。

 民衆にはリゾの名前を伏せるべきと判断した。


「それでも、ここ数日間は用心するように」




     * * *


「一歩、遅かったか」


 ロイがたどり着いた時、黒髪のすらりとした男がいた。

 最高位のカースだ。

 カースは恐ろしいほどの美貌を兼ね備えた男だ。


 カースは意識のないリゾを抱きかかえていた。

 リゾは二メートルを超える大男だが、カースは魔法の力で筋力を補いリゾを抱きかかえている。

「俺より先にアグが着いてた」


 カースの目線の先に、アンドロイドの部品を集めてる人物の姿があった。



 最高位のアグだ。

 アグはローブを被り自身の姿を隠している。

 アグは、黙々とアンドロイドの部品を拾い集めていた。


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