つかの間
「だから、念のためだって。ことが起きてからじゃ遅いし」
「まあ、そうだろうけど、こっちは畑作業してんだっての」
五番隊は農民の自警団のような集まりであった。
ルウの地の本来の兵隊といえば、主に一~三番隊まである。四~六番隊はそのほとんどが兼業の兵士であり他に職業がある。
ランズは体を動かしてないと気が済まないタイプの男だ。
農作業が中断されていささか機嫌が悪かった。
「アンドロイドなんかにこのルウの地、荒らされたらもう畑どこじゃなくなるんだって」
五番隊、六番隊は一度、ルウの地中央の広場へ集まっていた。
「お詫びに今度、また鳥捕まえたら差し入れしろよな」
ランズがキョウの脇腹をつっつく。
子どもたちは各々遊び始めている。
「キョウ兄ちゃんって、髪切ったら普通だよな」
「つまんねーよな」
つい先日、切ったほうがいいと言ったのはすっかり忘れてるようだ。
そんな時に二番隊が到着した。
「もう大丈夫」
とファウが状況を説明した。
「アンドロイドがルウの地そばまで来ていたが、砂漠のほうへまた引き返して行った」
リゾが倒したとはどうしても言いたくなかったのもあるが、公式の発表ではリゾは行方知れずということになっている。
民衆にはリゾの名前を伏せるべきと判断した。
「それでも、ここ数日間は用心するように」
* * *
「一歩、遅かったか」
ロイがたどり着いた時、黒髪のすらりとした男がいた。
最高位のカースだ。
カースは恐ろしいほどの美貌を兼ね備えた男だ。
カースは意識のないリゾを抱きかかえていた。
リゾは二メートルを超える大男だが、カースは魔法の力で筋力を補いリゾを抱きかかえている。
「俺より先にアグが着いてた」
カースの目線の先に、アンドロイドの部品を集めてる人物の姿があった。
最高位のアグだ。
アグはローブを被り自身の姿を隠している。
アグは、黙々とアンドロイドの部品を拾い集めていた。




