6 真実の羽
白いプレハブの建物に近づくと、私はドアをノックした。
反応がない。
私はもう一度、少しだけ強めにノックした。
中で人の気配がする。そして、ゆっくりとドアが動き――
「あ? 何だよ?」
完全にドアが開くより先に、不機嫌そうな声が聞こえた。
そこにずっと会いたいと思っていたターくんがいた。
「ターくん」
私が声をかけると、彼は小さくヒッと驚きの声をあげた。
「ターくん、会いたかったよ」
「おまえ……なんで?」
私が突然やってきたことに彼は心底驚いているようだった。
「突然、ごめんね。でも、会いたかったんだ」
「う……嘘だろ」
その表情に私は戸惑った。それは驚いているというよりも、怯えていると言ったほうが正しく思えたからだ。
彼はジリジリと後ずさる。私はそのまま部屋へと入っていった。
「どうしたの? ターくん、どうして逃げるの?」
「……助けてくれ」
「何を言っているの?」
「俺を殺しにきたのか? 俺に復讐を?」
「どうして? どうしてそんなことを言うの?」
彼が何を言っているのかわからず、私は彼に手を伸ばす。
「や、やめてくれ」
私の手から逃れようとするかのように、彼は部屋の隅に頭を抱えてしゃがみこんだ。
その時――
ふわりと私の眼の前を羽が舞った。
その瞬間、何か私の体を異質なものが覆う。
彼が目を大きく見開き大きく叫び声をあげた。まるでこの世の終わりでも見たかのような恐怖に満ちた声。
何が起こったのか、私にはまったくわからない。
だが、次の瞬間、私は目に映ったものに、ギョッとして動きを止めた。
巨大な鼠がその向こう側にいて、こちらをジッと伺っている。
(これは何?)
そして、私はさらに驚いた。
それが鏡であることに気づいたからだ。