STATION XI ~最終演目 開幕~
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月面エレベーターは駅に隣接していた。どうやら長いこと使われていないらしく電力の供給が止まっているらしい。リライドに表示された地図を見れば<ここから20分ほど歩いたところに発電所があるらしい。
「あーなんていうか、凄く入りたくないんだけど」
「大丈夫よ、特に事故が起きた形跡はないから」
「でも知らず知らずのままに漏れていたり」
「なあ、早く入ろうぜ」
「いや、だってここ…」
そうここは、原子力発電所なのだから…
「ほら、やっぱり大丈夫よ。ガイガーカウンターが未検出を示してるもの」
「なあその“放射線”てのはそんなにマズイものなのか?」
「簡単にいえば自分の体を微細に壊す光だよ」
「ほーん随分おっかないな。まあでも俺はダイジョブでしょ、人間じゃないし」
「そうかなぁ」
「あ、繋がったわよ。電力供給システムは衛星通信に依存していなくて助かったわ」
「じゃあ戻るか」
「「うん」」
真っ白い発電所建屋からでたら日光が反射して余計に眩しい。
「ああなんか、眩しさのあまり太陽が二つになったんじゃないかって」
「今日はよく晴れているわね、レックウザが見えるかも」
この子本当にこの時代の人間なのか?
「おい、ケープ無駄にオーラを飛ばすなよ、びっくりするだろ」
「何言って、僕は何もしていないけど?」
「じゃあこれは一体」
「そういえばこの辺りにも人が住んでいるのかしら?建屋で何か物音がしたのだけれど」
建屋の入り口から覗くと、確かに何者かがいる気配がした。それも一人や二人でなく。
「ちょっと待っていてくれない?中をもう一度見てくるから」
「俺も行くよ」
「いや、いいよ。すぐ戻るから」
「建屋の非常口は四方にどの階にもあるから、いざというときはそこ使ってね」
「うん、じゃ」
もう一度建屋の中に入り、上の三階から順に見ていく。特に誰もおらず、一階まで下りた。管制室を見渡して誰もいなかったので引き返そうとしたとき、あるレバーを見つけた。
“C9棟非常扉”
それはなぜか“閉”の方に下がっていた。この発電所は操業以来事故はないはずだし、もう10年以上停止しているため放射能漏れを危惧したためではないだろう。それに見取り図と参照する限り原子炉とは全く遠い。それに何より他に”C~棟“も増してそんな棟に対しての非常扉もないのだから。
好奇心に誘われるがまま、レバーを押し上げそこへ向かう。
薄暗い、むき出しの鉄骨に囲まれた細長い通路。しかし、そこに立った瞬間聞こえた衣擦れのような音が、引き返すという意思を失念させた。奥へ歩くごと気配に迫る。じっとりと汗をかき始めた。その汗を恐る恐る拭う。それが引き金となった、何となくだがそう感じた。
右手を汗を拭うため上げたとたん急激に気配が近づいた。とっさにそのまま右手を出し、身を守る。しかし、前方に感じた気配は背後にいた。尋常ではない反応で身をよじり天井の柱に飛びつく。強烈な衝撃波が鉄骨に直撃し、グラグラと揺れる。攻撃の方を見ても何もいない。ひとまず外に出なければ。シノンに教えてもらった、非常口を一っ跳びに駆け上がる。階段の壁を蹴って折り返し上がる方法は以前よりもうまくなったみたいだ。指相撲でカウント負けするより早く地上に出る。イデア達がどっちで待っていたかとキョロキョロ見回す。しかし、また非常口の方から衝撃波が襲い、アスファルトを割く。やみくもに攻撃するわけにもいかないので、ひとまず逃げる。相手の気配は追ってこないのかと思いきや、いつの間にか前方にいた。しかし、一体姿がないのに攻撃を仕掛けられるなんて、運動エネルギーが生きてるみたいだ。そして今度は無差別的に衝撃波が飛び交う。反応できず、何発かもらってしまう。そのとばっちりが周囲の建造物を傷つける。衝撃波自体大したダメージではないが、こちらからは何もできないのがつらいな。そうこう思案していると気配の動きが止まった。ストロボライトが膨れ上がった水風船みたいになったかのようだ。それをもう溜めきれなくなったから吐き出そうとするように、こちらへ向けた。あまりに眩しさに見とれていたせいで、実感を持っていなかったのがいけなかった。高エネルギーの光線は俺に向かって一直線に…
俺を支点として二分された光線がアスファルトを焦がした。空気が一気に膨張したことで地面を叩くような雷鳴が発生する。光線自体は光子の持つ電気的エネルギーの操作を利用し直撃は免れた。しかし、完全にとはいかなかったので防いだ左腕が火傷でボロボロになってしまった。激しい痛みにさいなまれながらも頭を働かせる。気配はまた光を溜めている。マズイなもう一度あれを受けたらひとたまりもない。だから今度は射出される前に、光子の運動を変えて暴発させるしかない。膨張する光の球に目を凝らす。眩しさと共に放たれる電気的エネルギーの場を一心に感じる。それは無数の光子やそれに付随する電子の運動から発せられるものだ。しかし、そんなに精密にする必要はない。なんてったってやるのは“制御”じゃなくて“暴発”なのだから。相手の気配がこちらを向くより早く閃光の球体を弾けさせられた。辺りに眩さがばらまかれ熱気が立ち込める。あんまりランダムな方向に光を飛ばせば暴発したはずみに巻き添え喰らっていたな。
ようやく気配も消えたようだ。ほっとし、左腕の容態を恐る恐る確認するとお菓子好きな魔人もびっくりな速度で治っていた。いつの間に俺の細胞はプラナリアになっていたんだか…
攻撃で発生した轟音を聞きつけた二人が駆けつけてくれた。
「はぁ、はぁ、はっ、何かッ、凄い音したけどッ、大丈夫?」
「ああ、もう倒した。何でそんな息を切らしているんだ?」
「なんかここ酸素が薄いような、それに変な臭いするじゃない。ちょっと走っただけでぜんそく患者よ」
「それは、多分さっき電気エネルギーが発生したせいで酸素がオゾンに変わったんだろう」
「ええ!どうしよ、死んじゃう!」
「まあ、そんなに大量じゃないだろうし致死量には至らないだろ」
「袖が焼け焦げてるけど、相手は随分ホットだったんだな」
「ホットなんか程遠いくらいのクールさ。寡黙すぎて低温火傷したんだ」
「んで、それは一人だったのか?」
「いや、まだ何人か出てくるはずだろう」
そう言うやいなや、強い気配を幾つも感じた。
「まずい、一端逃げろ!」
この数が一斉に衝撃波を放てば流石にまずいな。何よりシノンが…
「何やってる、イデア急いで行かないと、アイツらは」
建屋の非常口から出てきた6つの気配があきらかにこちらへ注意を向けている。
「え、何?ど、どうしたn」
それらは無慈悲にも一斉に衝撃波を放つ。反射的にシノンを庇うが耐えられるか…
しかしそれは全くの杞憂に終わった。何故ならば衝撃波が届く前に銀髪になったイデアの右手から放たれる衝撃波が相殺していたからだ。いや、少し表現に語弊があるな、“相殺”ではなく完全なる“貫通”だったのだから。連続する白銀のギアを模った衝撃波は敵の総力を合わせた衝撃波を容易く打ち消し、そのままギアの回転に合わせて発せられる螺旋状のエネルギーとなりすべての気配をかき消した。
「それで、いまので全部か?」
「ふぅ、いやホント、神は偉大なり」
レビュー いくらやっても飽きない名作です。




