STATION I~黒羽~
こうだったらいいなあ という生活の一つを書きました。暇つぶしにでも読んでください。
漫画の中の高校生とは違う。そんなことわかっていたのに、現実を受け止めきれないでいた。ろくに勉強しないでもそこそこ頭の良かった僕は慢心していた。県内で2番目の私立高校にも合格したが、結局は公立校にいくことにした。しかし僕は中途半端な心持でまあまあな男子校に入ってしまった。毎日がつまらない、理想と現実のかみ合わなさが苦しめる。憂鬱な気分で校門を出ようとすると、目の前を蝶が通り過ぎた。見たことないほど黒く、広い翼をもっていた。あの背中に乗って飛んでみたい、それだけで十分だ。
梅雨明けの夕方を歩いていく。茜がかった空は今にも死にそうだ。電気屋のエアコンを促販する声が暑さに拍車をかける。テレビに映るニュースは人工衛星10号の打ち上げで持ち切りだ。暑さのせいなのか、気分が乗らないからなのか最近調子がおかしい。早く電車の冷房にあたりたい。
車内はわりとすいていた。といっても、席はすべてうまっているのだけれど。席に座って談笑する女子高生が憎い。僕のほうが疲れているのに。あぁ、余計に気分が悪くなる。いや、だんだん耐えられないほどに気持ちが悪くなってきた。地面が揺らぐ、力が抜ける。次の駅はまだなのか?早く。つり革を掴む感触がなくなると同時に、灰色の床が迫ってくる、
心地よい久しく感じていなかった風。陽光に染まった髪が凪ぐ。差し出された手は干したてのシーツみたいだ。幸福に包まれる。もう少し、もう少しだけ…
ふっと目を覚ました。こんなにも気持ちよく、それでいて切ない目覚めは初めてだった。電車が止まった。駅に着いたようだ。床から体を起こし、辺りを見回す。ドアが開き、夢で見たよりも鋭い光が差し込む。涙でにじんだ視界いっぱいを白色透明で満たされる。それが気付けになり、立ち上がる。一体何駅乗り過ごしたのやら、恐る恐る電車を降りる。しかしすぐに心配は消えた。困惑と興奮で。そこは見たことのないほどきれいで近未来的で、そして、静かだった…
ロックマンゼロってやっぱ神ゲーなんだなって。