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ヴァンパイア

またもやベタです。

エリーの地図にイライザが手を加えたことでデティールが向上した地図を頼りにザックは集落を目指している。

なんで姉妹でここまで違うんだ…と言いたくなるほどに細かく走り書きがされている。


森を抜けると農場らしきものが見え、その向こうに家々が並んでいる。

集落の入り口にはエリーが立っており、ザックに気づいた瞬間に物凄いスピードで接近してきた。


「遅い到着じゃない。」

「すまんな。誰かさんの地図があまりにも分かりにくいもんでな。途中で出会った親切な女性に手を加えてもらってなんとかってとこだ。」

そう言って地図をエリーに見せる。ふくれっ面で地図をちらりと見たエリーだが、書き加えられている内容と文字を見て目を見開いている。

「お姉ちゃんと会ったの?」

「会った。あっちには話も通してある。細かく考える部分もあるがこっちの問題の方が複雑そうだ。」

「…付いてきて。私の家に案内するよ。」

エリーに付いていくとやや大きめの屋敷が見えてきた。

中に入ると使用人の出迎えがあり、高そうな調度品が並んでおり手入れも行き届いている。

領主の娘だっただけはあってかなり拘っているようだ。

「まずはお風呂に入ってきて。すごい恰好…。」

「お言葉に甘えまして。」

山道と雑木林を通り抜けてきたザックの姿はドロドロだ。

ザックがひとっ風呂浴びると脱衣所にはガウンが置いてあったのでそれを着用して出てくる。

そのまま夕食をご馳走になってからエリーとの話の続きに入る。

「イライザの話を聞く限りではきっかけはお前らだ。これは間違いないな?」

「…。」

「なぜ他のヴァンパイアはイライザに対してそこまで攻撃的なんだ?」

「本能なのかもしれない。死した存在であるはずなのに生命の鼓動を持つというのは妬ましいと思うのかもしれない。アンデッドは名前に反して決して届かないはずの生を渇望するもの。」

「お前はどう思う?」

「私は…正直言うとお姉ちゃんが羨ましい…。私も温かい体が欲しいと思うもの。」

「そうは言うがイライザの立場は辛いぞ。お前らよりも重い吸血衝動に悩まされて独りぼっちだぞ。」

「…。」

エリーは答えない。

「結局のところお前はどうしたい?姉と仲直りしたいのか?それともここでは無いどこかに行って欲しいのか?」

「私は…仲直りしたい。でもそうしたらここの皆が食べられちゃうかもしれない…。ねえ、どうしたらいいの…?」

すがるような眼でザックに問いかけるエリー。現状では大団円という選択は無い。だがザックには一つの疑問がある。ストリゴイからヴァンパイアに戻すことはできないのかと言うことだ。

「エリー、頼みがある。」

「…?」


翌日、ザックはエリーの飛行能力で知り合いの呪術師のいる山小屋に向かった。

エリーはザックを抱きかかえての長距離移動だったが全く疲れている様子がない。さすがは不死者である。

(ん?最初からこうやって村まで運んでもらえばよかったんじゃ…)

ザックは愕然とする。だが、そのおかげでイライザとすぐに会えたのだから無駄ではないと割り切ることにした。気を取り直して山小屋のドアを叩く。

「ザックだ。聞きたいことがある。」

ザックがそういうと小屋の扉が空き、頭部含む全身に刺青を彫った人物が顔を出し、エリーが思わず変な声を出す。

「ンガンガ、久しぶりだな。」

「…入れ。」

二人は小屋の中に招かれる。中には様々な生物の頭蓋骨や鎌などの呪具などが飾ってある。

「その娘は吸血種か。そちらの地ではそのような風貌なのだな。」

「こいつの姉が別の吸血種になってしまったんだが元の吸血種に戻すということは可能か?」

ンガンガは暗黒大陸と呼ばれる冒険者たちにも一切全容を知られていない地域からやってきた魔物の呪術師だ。

魔術の系統が根本的にこちらとは異なるためもしかしたら解決策があるかもしれないとザックは考えたのだ。

「その別の吸血種がどのようなものかは知らぬが、高位の種から低位の種に落とすというのは逆よりも難しい。それは理解しているか?」

「ああ。」

「…そこの娘が吸血種となった経緯を教えろ。」

ンガンガがエリーをジロリと見て、エリーがしどろもどろで説明をする。

「ふむ、諦めろ。」

説明が終わってからンガンガから出た言葉は無情なものだった。

「お主らはその別の吸血種を元に戻すために数万の魂を用意できるか?」

「無理だな。」

「…。」

二人は押し黙る。

「そういうことだ。一度その別の吸血種とやらの命を奪い、即座にその吸血種となる方法を行うのが解決策なのだ。」

ンガンガのその言葉にエリーは泣きそうになるがザックには閃くものがあった。

「エリー、たしかストリゴイを倒すには特殊な武器が必要なんだよな?」

「えっと…半月鎌。…でも物凄く強い鎌じゃないと…。」

「ンガンガ、アレを貸してくれ。」

「…仕方あるまい。」

そう言うとンガンガは小屋の奥からまじない用の道具箱を持ってきた。

開かれた箱の中で目を引くのは赤い色で不気味な文様が書かれた長柄の半月鎌だ。それをザックが手に取る。

「なにそれ…」

エリーは何かを感じ取ったようだ。

「儂の商売道具だ。お主らの言うところの杖に等しい。必ず返しに来い。」

「分かった。」


二人でンガンガにお礼を言って小屋を後にする。

「それで、何をする気なの?」

エリーは自分で抱きかかえているザックに問いかける。

「それはな……………。」


日が沈むころ再び集落へ戻ってきたが様子がおかしい。ストリゴイの襲撃のようであちこちで悲鳴が上がっている。

二人はすぐに集落の広場に降りて周囲を観察する。喧噪の中央には飢えからか雰囲気の変わったイライザがいた。充満している殺気にザックとエリーがゾクリと身を震わせる。

「あら、エリーとザックじゃない。ちょっと待っててね、今はお食事中なの。」

両手を赤く染めて以前と変わらない口調で話すイライザ。その言葉には邪魔をすれば容赦はしないというニュアンスが含まれている。

「お姉ちゃん…、どうして…。」

エリーの問いにイライザは本当に愉快と言った嗤いを浮かべる。

「お腹が空いてるからに決まってるじゃない。お屋敷でのうのうと暮らしてる貴方には分からないでしょうねぇ!?」

怒気が弾ける。

(これはもう交渉は不可能だな。)

そう判断したザックはイライザに決別の意を込めた言葉を口にする。

「イライザ、お前を退治させてもらう。」

「あら?面白い冗談も言えるのねザック。人間風情ガ…、ヤッパリアナタタチモタベチャウワァ!」

完全に形相と声色が変わるイライザ。その姿はまさしく真祖でありストリゴイでもある最悪の魔物だ。

「エリー、行くぞ。」

「…うん!」


瞬間、エリーが神速でイライザへと距離を詰めようとする。だがイライザの両手から噴水のように鮮血が滴り落ちてイライザを中心に直径5メートル程の血の池が即座に形成される。突進を急停止して背後に跳躍するエリーを血の池から発生した無数の赤い剣が襲う。

エリーは翼による飛行に切り替えて回避する。だが今度は剣ではなくマシンガンのような血の矢の連射が追いかける。エリーは何発かを受けるがイライザ本人と接続されていない攻撃なので血は吸われていない。だが失速して着地するエリーにイライザ本人と接続された血の大腕が向かう。

矢での消費と腕生成で血の池の範囲が狭まった瞬間にイライザの死角からザックの鎌による一撃が迫る。だが、

「ミエミエナノヨネェェェェェェェ!」

イライザはザックを見ようともせずに軽く手首だけで鎌をはたく。そしてイライザの首がザックの方向にグリンと回り、同時にザックの胸に手刀による突きを入れる。しかし、次の瞬間、ザックの位置が一歩分後退する。

「!?」

「ぐっ!」

しかしそれでも手刀はかわし切れずにザックは胸に傷を追う。更に素早く後方へと下がるザック。

「オモシロイテジナネェ?ナニヲシタノォ?」

イライザが愉快そうに質問するがザックは答えない。

(しくじった!あと2回!)

エリーはイライザの注意がザックに向いたことで先ほどの攻撃は間一髪で回避した。

ザックの手品はあと2回までしか使えない。イライザにまともにぶつかればコンマ数秒で全回数を消費した上で瞬殺される。

エリーによる陽動に全てがかかっている。

ザックは身を潜め、エリーが再び神速ダッシュをするが今度はジグザグ走法だ。

エリーは真祖だが経験不足過ぎて未だ多くの能力が使えず、武器は身体能力と飛行ぐらいしかない。

だが、完全に陽動と割り切って動くのであればそれだけでも十分な効果がある。

対するイライザは足場のフィールドを意識しすぎてその場を動かない。

イライザは血でできたハンマーを延ばしてエリーを叩き潰そうとするが悉く外れる。まるで高速のもぐら叩きだ。

業を煮やしたイライザが今度は巨大なハエ叩きを作り出す。

「コレデオワリヨォ!」

巨大なハエ叩きがエリーに迫る瞬間、再びザックが死角からイライザへと飛び出す。

「ワンパターンナノヨォ!」

意識がザックに向きエリーの頭上でハエ叩きが血の雨となる。ザックはというと左手に鎌を持ったまま右手でパンチを繰り出している。イライザは血の池を解除したことで大きくザックに向き直り右の手刀を脇腹、左の手刀を首筋へと深く伸び切らせる。

(ナンノテジナカシラナイケドコレハカワセルカシラ?)

次の瞬間ザックが2歩分後退し、脇腹と首から出血する。

「がふっ!」

ザックは呻く。そのままトドメを刺そうとするがイライザは妙なことに気が付く。

(カマハドコニイッタ?)

ザックは素手だ。ザックの周辺には落ちていない。

(マサカ!?)

イライザはエリーの方へと振り向く。するとエリーは血の雨の中を真っ赤になって進みながらエリーとイライザを挟む距離に落ちていた鎌を拾う。

「ああああああああああ!」

エリーは咆哮した。

イライザがエリーを迎撃する構えを取ろうとするが、背後からザックが羽交い締めにする。

「やれぇぇぇぇぇぇぇ!」

即座に振りほどかれるがエリーへの対応がコンマ数秒遅れる。

鎌をはたこうとした手が空振り、鎌はイライザの生きた心臓がある左胸に突き刺さった。

「ガァァァァァァァ!」

イライザが叫びを上げ、生の鼓動が止まるその瞬間。


エリーはイライザの首筋へと噛み付いた。


暇虫です。こんにちわ。

なんか無意識で書いてたらクサい感じになりました

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