自信過剰な請負人?
小説と言う物を初めて書かせて頂きました。
何卒よろしくお願いします。
人間と魔物の緩衝地帯のような場所に一つの街がある。
町の中央に冒険者組合が運営する大酒場があり、それを囲むように宿、鍛冶屋などの施設がある。
大酒場は冒険者が殺到しての満員御礼状態。
周りに何もない郊外には老人が個人で営業している小さな酒場があるがこちらは閑古鳥が鳴いている。
中には店主と思しき男性とカウンターに客が数名。
初老の店主は黙々とコップをキュッキュと拭いている。
カウンターには男が一人突っ伏して寝ている。
場末という言葉がぴったりな酒場のドアが開き新しい客がやってきた。
「クエストの依頼をしたいのだけど。」
「お客さん、クエストなら壁の中の大酒場に…おい、どうやらお前さんの客のようだぞ。」
店主に小声で呼ばれて突っ伏した青年は頭をあげて客を見る。
「んん…?」
見た目は貴族の令嬢を思わせる漆黒のゴシックドレスに畳んだ日傘を持ち、青みかかった銀色のセミロングの髪をなびかせた少女だ。
青年は目を細めてよく観察する。
「ん~?あぁ…なるほど。隣にどうぞお嬢様。」
勝手に納得した青年が隣に座るように少女に促す。
少女は男の態度に不機嫌な顔をしながらも席に着いた。
すでに少女の席には水の入ったグラスが置かれていた。
「貴方が例の…ワケあり専門ね。」
「内容を聞かせて貰ってもいいかな?」
「その前に、貴方の顔をよく見せてくれる?」
そう言うと少女は身を乗り出し、青年の顔に迫って目を合わせる。
まるで猫のような深紅の瞳が青年をただただジーッと見つめる無言の時間が生まれる。
すぐ近くにいる店主はカウンター側に目も合わせずに皿を拭いている。
「…普通の人間ね。」
少女は落胆している。
「吸血鬼のお嬢様は普通の血袋はお嫌いか?」
「!?」
少女は一瞬だけ剣呑な顔になったが冷静になって体を戻す。
「あなたはそういうのは見ればわかるの?」
「俺に依頼するような連中でそんな恰好なら大体。そこのジジイですら気付いてるぞ。」
店主は少女に見られていても全くこちらを向こうともせずにマグカップを拭いている。
「ジジイ、紅茶を入れてやれ。」
「儂は執事じゃないんで注文で頼むよ。」
「…結構よ。」
少女は視線を青年に戻す。
「エリーゼよ。エリーでいいわ。」
「ザックだ。ザックでいいぞ。」
「…。」
二人はシンプルな自己紹介を済ませて本題に入った。
「貴方、ストリゴイって知ってる?」
「あんたらのお仲間だろ?血をチューチュー吸う。」
ザックの不躾な物言いをエリーは気にしていない様子だ。
「まあそんなところね、ただ、奴らはヴァンパイアを餌にするの。」
「へえ、それを退治して欲しいと?」
魔物同士の喧嘩で片方から成敗を頼まれるというのがザックにとっていつものパターンである。
「いいえ、交渉をお願いしたいの。」
「…?俺は荒事専門なんだが?」
「とてもそうは見えないわね。」
「言うね。」
ゴゴゴゴゴっと妙なオーラが両者から発生する。
変な方向へと向かいかけるが、店主が咳ばらいをすると話が戻る。
「あいつらはヴァンパイアと見ると問答無用で襲ってくるから貴方に頼みたいのよ。」
「人間とヴァンパイアみたいなもんだな。」
「そのようなものよ。だからこそ貴方の力が気になるのだけど。」
「もしかしたら一瞬で挽肉になるかもしれない?」
エリーは軽く目を閉じる。イエスという事らしい。
「体格は良いけど所詮は人間でしょ?そういうモノで埋まるような差じゃないわよ。」
エリーは続ける。
「奴らは生きていながらアンデッドでもある矛盾した存在。心臓を二つ持ち、特殊な魔法も使うから並のヴァンパイアでは勝てないわ。」
「なるほど、喧嘩はご勘弁願いたいな。」
「なのでまずは私と手合わせしてもらおうかしら。ストリゴイの攻撃で即死を免れそうなラインだったならお願いするわ。」
「受けた場合はその運動分の代金上乗せは頼むぞ。」
エリーは心底可笑しそうに嗤って了承した。
初めまして、暇虫です。
更新はかなり気まぐれです。




