1『物騒な邂逅』
…洞穴は大きく、そして奥が見通せない程度には暗い。 何か大きな生き物が、口を開いているような印象を私は受けた。
目覚めた場所より、此処で休む方が上策かなぁ…なんて、考えてみる。
とにかく、中の様子に広さに…っ!?
右肩に鋭く熱が走った。赤い物が流れ出している事も、感覚で分かる。
原因は分かっている、ただ反応が出来なかっただけ…正面から飛んできたのだから。
私は僅かに首を捻り、矢が肩に突き立って居る事を確認すれば、すぐさま洞穴へと飛び込んだ。
暗さは入ればすぐ慣れるだろう、大よその位置も匂いで分かる。
駆け込んですぐに聞こえる、弦を弾く音。 第二射、私を狙った矢が風切り音で軌道を伝う。
右足に力を込め、身体を左へと跳ねてやれば、その矢は私に突き刺さる事無くすぐ傍を掠めて行った。
…少し無茶な事をしているかもしれない、右肩が傷口から千切れそう。
それでも前進は止めない、逃げるのも癪だ…って、私はこんな好戦的だったっけ?
いや、多分傷によって興奮状態にでも入っているのだろう、きっと。
射手がうっすらと見えた。 数は二匹、どちらも弓を携えている…それは人型に近いが、人間というには不自然だ。
左の射手は既に弓を引き絞っている。 …近距離で撃ち出される第三射、背中に激痛が走った。
だが受けたままで終わる気は無い。 私は身体を縮め、後ろ脚で矢のように身体を射手へと撃ち出す。
一瞬で狭まる距離、射手に対応する余裕は無い、矢を放った直後の硬直に合わせたのだから。
勢いのまま、その首を咢で喰らい抜けば…この場から、息をする者は一人減った。
さてもう一匹…と右の射手に目を向けると、そちらは猿のような悲鳴を上げて逃げ出してしまう。
…まぁ良いか、身体が痛んで、出来れば追いたくない。 手当が出来る身体でも無いけれど。