共通パート1 青春の始まり、キャラの紹介パート1
こんにちわ、豹堂です。
異種族と恋愛したい想いで連載を始めてみました。
あらすじにも書いてありますが、妄想を書き起こしているので色々お見苦しい部分があるかと思いますが、生ぬるく見守って頂ければと思います。
一応ヒロインが複数いるので、目標は全員のルートを書くという気持ちでやっていきたいと思います。
ハーレムルートは考えていません。
★登場人物等の簡易設定です。
・紅月 十夜……主人公。主人公的生い立ちの、普通の人間の少年。2年生。カフェでバイトをしている。
・蒼原 芽衣……ヒロイン1。竜神族蒼原家の女の子。クラスメイト。
・真宵 心……2。魔王の一人娘にして生徒会長。3年生。真面目な悪魔。
・月芦 静里奈……3。アイドル、カフェの常連。ホワイトワータイガー。(虎顔ではありません)
・住吉 仁奈……4。人畜無害なお隣のサキュバス。1個下で名門学園1年生。
★その他
・紅月 一花……十夜の姉で、学園の養護教諭で竜神族紅月家当主。美人。(隠れヒロインを予定しています)
・桜 春……セリナの大ファンな主人公の親友。男、クラスメイト。
長くなりましたが、こんな感じです。あまりコアな人外が居ないのでありきたりなお話なるかも知れませんが、よろしくお願いします。
俺の住む町、王冠町。
大都会ってわけでも田舎ってわけでもなく、そこそこに色んな施設があって不便ってわけでも充実してるってほどでもないどこにでもある町だ。
少し変わっている所と言えば余所の町よりも他種族が多いってくらい。
どちらかと言えば他種族のほうが多いくらいで、俺達人間はやや少なめなのが町の特色ってところか。
で、日夜他種族が町を侵略しようとドンパチ戦いを繰り広げている……なんて世界でもなく、至って平和な世の中だ。
異世界から来た(と言われている)魔族や神族もいれば、人間がサルから進化してきた様に色んな動物から進化してきた獣人もいるし、トカゲ→ドラゴン→竜神なんて謎の進化過程を辿ってきた種族もいて、ありとあらゆる様々な種族が共生しているわけだけど、そこにいがみ合いとか争いとかは全然ない。
なんでかって言うと、まあ魔法とかそういう不可思議なものが存在しない世界だからとかなんとか言ってたっけ、授業で。
この世界では大気中になんとかって物質が存在しないから魔法が使えたり炎が吐けたりとかなんかファンタジー!って感じの事なんて起こらないのだそうだ。
ファンタジーっぽい要素を強いてあげるとすれば、種族の固有スキルみたいなものはあるけど──例えば兎獣人は人より跳躍力がある、とかサキュバスは吸精しないでも大丈夫とかそんな程度のささやかなものだ。
世界を破滅に陥れるような力なんて誰も持ってない。
異世界では恐怖の大魔王であっても、この世界に来ればただの魔族のおっさんだって先生が言ってた。
平凡で平和。
だから見た目が様々な種族と仲良く平和に暮らすことが出来ているわけだ。
まあ、平和が1番だし、そこに思うところなんてなんにもない。
で、そんな世界に住む俺の名前は紅月 十夜。
不慮の事故で子供の頃両親が死んで、この紅月家に引き取られてきたよくある感じの主人公だ。
彼女いない歴=年齢のDT少年と言うのは秘密だ。
「今朝は肉だぞー!」
欠伸を噛み締めていつもの席に着席すると、タイミングを図ったように──実際図っていたんだろう。テーブルの上にどかっと置かれるローストビーフ。
でっかいお皿のど真ん中に鎮座したそれは、周囲を野菜で彩られ、さながらホームパーティに出てきそうな感じに仕上がっている。ホームパーティしたこと無いんでよくわからないが。
その出来栄えを満足そうに眺めているのが、俺の姉兼保護者である紅月 一花だ。
「朝は沢山食べろよ! 弟!」
「いやいや、俺朝からこんな重いのはちょっと……」
「なんだと」
ビタン、と姉さんの尻尾が床を叩いた。
2回、3回と床を叩くので、その衝撃で床が抜ける前に俺は慌ててナイフを取る。
「い、いやー美味そう! 姉さんの朝食はいつもボリューミーでサイコーだよ!」
適当に分厚く切り取って、その際に野菜が皿から溢れ落ちたそれもまとめて、自分の山盛り御飯の上に乗せた。
ご飯も山盛り、肉も山盛り……今日はいつも以上に運動しないとなあ。
「そうだろうそうだろう。竜神たるもの朝は肉を食べないとな!」
途端に上機嫌になった姉さんは俺の向かいに座って、自分の分を切り分け始めた。
って俺は竜神じゃなくて人間なんだよ、姉さん。
姉さんみたいに肉食でもないし鉄の胃袋でもないんだよ姉さん!
姉さんは、竜神という種族だ。
紅月家と言えば竜神界では凄い家柄らしいけど、俺にはよくわからないし姉さんも説明しようとはしないので、何が凄いのかよくわからない。
そのすごい家の当主をしているのが、目の前で肉を頬張る姉さんだ。
弟視点からみても大分綺麗な人。
トカゲからドラゴンに進化して、それが神格化したのが竜神と言われてるけど、トカゲっぽい名残なんてほとんど無くて、よくあるドラゴンのパーツが人間にくっついたような見た目だ。
尾てい骨から生える紅い鱗の太い尻尾は割りと感情豊かで、機嫌が悪いとさっきみたいに床をビタンビタンする。
けっこうパワフルで強靭な尻尾は地面を抉る程度の力があるので、あんまり家の中で姉さんを怒らせたくない。床が抜けてしまう。
こめかみの辺から生えているドラゴンっぽい角は、長いの1本と短いのが2本生えていて、鉄みたいな鈍い輝きをしている。凄く硬い。あと性感らしい……ごくり。
なので竜神に限らず竜族全般は、この角を触らせるのは信頼の証なんだそうだ。
遥か大昔は一族の掟だか何だかに逆らうと角を切り落とされるとかいう恐ろしい風習があったとかなかったとか……男で言うとアレをちょん切られるみたいな感じらしい。怖い。
瞳も爬虫類の瞳孔みたいな形で、翡翠色をしていてとても綺麗だと思う。
あとは垂れ下がった翼膜。
背中から生えた翼はビシっと広がっているわけでも綺麗に折りたたまれている訳でもなくて、柔らかく垂れ下がった様に下向きだ。
昔、飛べるの?と聞いたときには、退化していてバサバサ自在に飛ぶことは不可能だが、高いところから降りた時ふんわり降りれるくらいだと教えてくれた。
ドラゴン時代の名残なんだそうだ。
ちなみに姉さんは俺の通う学園の養護教諭だったりする。
「うまいか、弟」
「うん、うまい」
ニッコリ笑うと、さすが学園随一の美人教師。弟から見てもドキッとするくらい綺麗だった。
料理も、肉中心ではあるけど、まずくはない。むしろ美味いくらいだ。
分厚く切ったローストビーフでさえ歯で噛み千切れるくらいに柔らかいし、手作りのソースだって色んな食材と手間がかかってるんだろうなって分かるくらいには。
「めっちゃうまい」
「だろう、ふふ」
まあそれが朝に出てくるのはもう少し頻度を減らして貰いたいなあとは常日頃から思っていることではあるけど。
むしろ姉さんは教師の仕事もあるんだし俺が朝食作るのに、絶対に譲らない。
俺だってカフェでバイトしてるんだから飯くらい作れるんだけど、させてくれない。
というか夜は俺が作ってるんだから、朝も俺に任せてくれればいいのに。
基本料理は嫌いじゃないし、誰かのために作る料理は楽しいとさえ思ってしまう。
だから食事は俺にやらせてほしいんだけどなあ。
って言うと床をビタンビタンするので言えない。
言ったことはもちろんある。
『お前は気にせず青春を謳歌しろ』
って言われてお終いだ。
「それはそうと」
肉を咀嚼しながらぼんやり考え事をしていた俺に、姉さんがフォークを突きつけてくる。
「な、なに」
そのまま目を細め、フォークにシシトウを刺したままくるくる回す。
まるでトンボを捕まえるときのような仕草だ。
「お前、彼女出来たか?」
「……は? 彼女?」
何を言い出すのかと思えば、いきなり姉さんはそんなことを言う。
「なんだ、好きな子の1人や2人や3人いないのか? 年頃なのに」
「いやいや、3人もいたら大問題でしょうよ! ってか居ないよ、好きな子なんて」
「春だぞ、恋の季節だぞ? 今年で2年生だろ、彼女くらい作れ」
確かに、俺は今日から2年になる。
私立千歳龍学園の2年生。
誰が名付けたんだか厨二的な名前の学園だけど、家から近いって理由で進学して今に至る。
「いや、俺はいいよ。バイトもあるし家のこともあるしさ」
俺には両親が居ない。
代わりに姉さんが親代わりをしてくれていて、ここまで育ててくれた。
だから、少しでも姉さんの負担を減らそうと思って、学園に入ったらすぐにバイトを探して、小遣いくらいはって思って働いている。
1週間の殆どをバイトと家のことに費やしている俺は彼女を作っている暇なんて無いし、出来たとしても大切にしてあげられないかもしれない。
だから、というわけではないけど、彼女がほしいと思ったことは一度もない。
「アホ!」
ビタン!と尻尾が床に打ち付けられて、ミシッと軋んだ音が聞こえる。
「まあバイトをして小遣いを稼ぐっていうのは良いことだよ、うん。お金のありがたみも社会勉強もできるし。でもな、お前はまだ学生だ。学生なら学生らしく青春を謳歌しろ!家のことなんてどうとでもなる」
2回、3回と打ち付けられる度に床が軋んでいて、ちょっとヒヤヒヤする。
でも、姉さんはそんな事お構いなしに続ける。
シシトウは相変わらず刺さったまま振り回されていた。
「あたしは、お前に家のことをさせたくて引き取ったわけじゃないぞ。施設でずーっと泣いていたお前に幸せになってもらいたいんだよ」
まだまだ年端もいかない年の頃、事故で両親を亡くした時偶然にも俺は一命をとりとめた。
後遺症という後遺症もなく、あるとすれば事故当時の記憶がない程度のものだ。
で、身よりもなく天涯孤独になってしまった俺は施設に入れられた。
施設の奴らは良い奴らばかりだったけど、親を亡くしたショックと慣れない集団生活で毎日毎日施設の端っこの花壇で泣いていた記憶がぼんやりと残っている。
花壇には誰かもう一人いたような気がするけど、よく覚えていないな。
そんなある日だった、姉さんが俺の前に現れたのは。
『今日からお前はあたしの弟だ!』
とか言って手を引いてくれたっけ。
紅い尻尾と髪がとても綺麗だなーとか思ってた気がする。
「よし、決めた」
回想にふけっていた俺は不意の姉さんの声にびっくりして思わず肩が跳ねる。
姉さんは姉さんでやっとシシトウを口に放り込み、もぐもぐ咀嚼して、今度はプチトマトを突き刺してこちらに向けた。
「夏休みだ」
「は……?」
「夏休みまでに彼女を作れ。それで青春を謳歌しろ」
「うん? なんて?」
ガタッと椅子を倒す勢いで立ち上がり、プチトマトを俺の口に放り込む。
「夏休みまでに彼女を作って、あたしに紹介しろ。もし夏休みまでに彼女が出来なかったら……」
「もぐ、出来なかったら……?」
姉さんが目を細めて、ニッと笑う。
人間よりやや鋭い犬歯が覗いた。
「ふふ、秘密だ。いいか、約束だぞ! じゃああたしは先に学園行くから」
行ってきます、と俺の頭にキスを落として、姉さんは去っていく。
初めは恥ずかしかったけど、今ではまあ日課になっているのでなんとも思わないけど。
「え、なんだそれ……なんだそれーーッ!! ねえさーーんっ!」
俺が叫ぶと、玄関から姉さんの笑い声が聞こえてきた気がした。
◆ ◆ ◆
はぁ、と通学路を歩きながらため息をつく。
あの後とりあえず残ったローズトビーフは晩御飯にするために冷蔵庫に放り込んで、食器を洗って、時間まで適当に過ごして家を出た。
「いや、なんだよ、夏休みまでに彼女を作れって」
ぼそっと周囲に聞こえないようにごちる。
周りには俺と同じ制服を来た奴らがちらほら歩いていて、ぱっと見やっぱり他種族が多い。
下半身が蛇だったり、ふわふわもこもこの子だったり、蹄だったり。
俺にとっては普通の登校風景だ。
ってそんなことよりも、だ。
「彼女、彼女ねえ……」
別に女の子に興味が無いって訳ではない。
俺だって思春期真っ盛り、異性に興味津々なお年頃だ。
でも、彼女がほしいかって言われると、うーんってなる。
第一想像もつかないな、俺が特定の女の子とキャッキャウフフしている姿なんて。
そもそも俺には女友達なんて居ただろうか。いやいない。
引き取られてきたばかりの時ならお隣の女の子とよく遊んでいた事もあったけど。
「おーい、トウヤー!」
後ろから結構大きな声で呼ばれて、足を止めて振り返る。
周囲の人達がトウヤって誰?とざわついてちょっと恥ずかしいが、俺を呼んだ奴は全く気にせず何度も呼ぶ。
「うるせー! そんなに呼ばなくても聞こえるわっ」
「あはは、めーんごっ」
「殴りてぇ」
きゃるん、と星が飛びそうなウインクをかましてくるこいつは桜 春。
名前は女の子女の子しているが、残念ながら男だ。
身長175センチ、人間。
好きなものはアイドルのセリナ、熟女。
趣味はセリナグッズ集め、熟女写真集収集とまあ何だか節操のないというか幅が広いというのか変なやつだ。
ちなみにセリナというアイドルは俺もファンだったりする。
ホワイトワータイガーという虎獣人の種族で、チャームポイントは太い尻尾と丸っこい耳だ。
フッサフサの白地に黒いトラ模様の尻尾は地面にぼてっと下ろされている時がよくある。
太くて長い尻尾は足より長くてあんまり動くことはなくて、でも大半が毛なのであんまり重たくはないらしいけど流石にずっと上げているのは疲れてしまうので、歌って踊ってない時は降ろされているそこがまた何とも言えない可愛さがあるよね。
っといけない、思わず語ってしまった。
とにかく俺の皆の大天使。それがセリナだ。語れと言われたら1日は要するね。
「ま、それはさておきおはようトウヤ。今日はどうした、元気が無いぞう」
「おはよう春。わかるか」
何年友達やってると思ってるんだよ!と春が笑うけど、そんなに長くないよね?
俺達まだ知り合って2年目だよね?という野暮は言わないでおくか。
でもまあ親友と言って差し支えないほどには仲がいい俺達だ。隠すのも面倒くさいので今朝の出来事を簡単に話すことにした。
「おぉ、姉さんがついにキレたか」
両肩を抱いてクネクネする春は大変に気持ち悪い絵面だが、適当にスルーしておこう。
こいつの年上好きの範囲はよくわからないが、どうもうちの姉さんも入っているようだ。
「キレたってなんだよ」
「いやいや、そりゃそうでしょうよ、日々学園とバイトと家事やってる弟とか誰だってそう思うわ。大体それが家庭の事情でとか言われたら姉さんキレちゃうってもんよ。姉さんはお前を幸せにするためにお仕事してんのよ、甘えなくてどうすんのよ」
「春、お前……」
「はっはっは、俺良いこと言うね」
「なんか姉さんの心情分かってる感が気持ち悪い」
「いやお前そこは!」
ははは、と笑ってごまかしたけど内心俺は春に言われたことが心に突き刺さっていた。
そういうものだったのか。
俺はずっと姉さんに負担をかけまいと欲しいものもやりたいことも我慢してきたけど、それって姉さんを傷つけてたのか。
俺はもっとわがままを言っても良かったってことなのかな。
「ま、それが本当か俺には分からんけどさ、良いんじゃないの?青春を謳歌しちゃってもさ。青春なんて今しかできないんだからさ」
そう言って笑う親友はちょっとイケメンでムカつくけど。
こいつのお陰で何かが吹っ切れた俺は、感謝を口にするのが恥ずかしくて、代わりに肩をぶつけてじゃれ合っておくことにした。
「彼女作っちゃおうぜ!」
「作っちゃおうぜ、で出来るもんでもないだろう」
でも、彼女が出来ても出来なくても、ちょっとは青春してみようかななんて思った俺だったのだった。
ここまで読んでくださってありがとうございました!
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