転移されちゃった
目の前を通り過ぎていくのは親友の手。
虚無をつかもうと必死に動かしている。
顔は驚愕に染まり、その口からは声にならない声が聞こえる。
その数秒後、スイカが割れるような音とともに、崖の下に鮮やかな牡丹が一輪咲いた。
いつも隣にいた。 何をするにも、何をした後も一緒だった。
彼は僕の幼馴染であり、初めてできた友達だった。
僕は人見知りが激しく、いつも図書室の隅で本を読んでいた。
「一緒に鬼ごっこしない?」
打ち解けるのに時間はかからなかった。
聞いてみると家もすぐ近くにあった。
毎日のように遊び、山の中を駆けずり回ったり、海で釣りをしたり、思い出しただけで顔がほころぶような思い出ばかりだ。
でも、彼はすぐ崖の下で血にまみれて横たわっている。
動こうにも、僕の体はピクリとも動かず、ただただ涙を吐き出すことしかできなかった。
彼が崖の下から運び上げられたころには僕の涙も枯れていた。
彼の整っていた顔は見る影もなく、手足もあり得ない方向に曲がっていた。
〝ああ、このまま僕も死のうかな〝
そう思いながら、僕は意識を失って倒れた。
懐かしい思い出、浮かんではすぐ消えていく。 そして君の死。
視界が赤く染まり、君の叫びが聞こえる。
目が覚めると何もない空間に一人で浮かんでいた。
”やっと起きたか。”
驚き後ろを向くが誰もいない。
”君には見えないよ”
またどこからともなく声が聞こえる。
”君はもう一度君の親友と人生をやり直したいかい?”
当たり前だ。
”そうか・・・、しかし元の世界でやり直すことはできない。 君たちが行くのは、新しい世界。 8番目の宇宙だ。 そこで2人生きるといい-----”
声が消えたか消えないかというところで身体が落下し始める。
はるか下の方に光が見える。
再び、僕の意識は深くに沈んでいった。
お読みくださり有難うございます<(_ _)>
不束者ですがどうかこれからもよろしくお願いします。