プロローグ1
ある王国の城の地下にある牢屋の一室に俺はいる。
なぜ牢屋にいるかって?
そんなこと俺が聞きたいくらいだ。
数日前に俺が暮らしている孤児院にいきなり騎士たちがやってきて俺を拘束して連行された。なんでも殺人を犯したことになっているそうだ。
もちろん俺は無実を主張した。しかし俺の言葉が聞き入れられることはなかった。
まず拷問部屋らしき部屋に連れていかれ、尋問が始まった。
途中で白い液体、おそらく自白剤だろう、を飲まさせられた。
俺には身に覚えのないことだったのでいくら薬を使おうが俺が罪を認めることはなかった。
すると奴らは俺に拷問をはじめ、無理やりにでも認めさせようとした。
はじめは爪を剥がされた。手と足、両方共だ。今までに感じたことのない痛みで意識が何度か飛ぶがすぐに水をかけられて起こされる。
指からの痛みに耐えていると今度は全身を針で刺された。
勿論抜いたりしたら血が出るためその針はずっと刺さったままだ。
針を刺され始めて2時間くらい経つと俺は全身針だらけだった。
しかし俺は頑なに罪を認めなかった。
他にも何人か俺と同じように連れてこられている奴もいたがそいつらはみな爪を剥がされた時点で罪を認めて別の場所に連れていかれた。
唯一残った俺に奴らは俺の着ていた服に火をつけた。
最初に油を体中にかけられたため、服につけられて火はすぐに燃え上がり俺の体はホのをに包まれた。
熱さと痛みに悶え苦しむ。
針が熱されさらに傷口の痛みが増す。
約3分間俺は火だるまの状態だった。
そして全身をやけどまみれになって今俺は牢屋につながれている。
俺、ジョン・スティールは孤児だ。
物心ついた時から孤児院で暮らしていた。
15歳の時冒険者として登録して30の時にBランクになった。
冒険者にはF~SSSランクまでありBランクは腕の立つベテランという認識だ。
今年で35になりもうすぐでAランクの昇格試験に挑む権利を得るところだったのに・・・。
自分の人生を振り返ってみるがいいとも悪いとも言えない人生だった。
今この瞬間を除いて・・・。
俺はこの後どうなるんだろうか。
「おい、そこの若いの。」
急に小声で話しかけられた。
声のした方を向いてみると、見るからに汚い布の服を着て顔一面に白鬚を蓄えた爺さんが俺の方を向いていた。
「なんだ、爺さん。悪いが今取り込み中だ。今はしゃべる気にならん。」
「いや、おぬしを見てるとこっちまで体が痛くなるからのう。気分をまぎらわすためにわしとはなそうじゃないか?」
正直。爺さんの言う通り体の痛みは相当つらく、声を出さないように耐えていたのだ。
話をする余裕はなかったのだが少しでも痛みを感じなくなればいいかという軽い気持ちで俺は爺さんと話をした。
爺さんは魔法の研究をしていたが急に、ここエルスト王国の兵士たちがやってきて連行されたようだ。なんでも勇者がどうとか・・・。あまり詳しくは教えてくれなかった。
ただ、魔法については教えてくれた。いろいろ実験をして新魔法を開発したそうだ。
その魔法の覚え方は自分の家の地下に記してあると言っていた。
俺は魔法を使うことができなかったため、魔法の話に夢中になった。
おかげであまり痛みを意識せずに済んだ。
爺さんと魔法の話で一晩中盛り上がっていたが、日が上がると衛兵がやってきて俺と爺さんを暴行して黙らせた。
そしてそのまま俺と爺さんは白の中に連れていかれ小さな部屋に連れていかれた。
そこには俺と同じように捕まった人たちがおよそ20人いた。
俺達はその部屋に放り込まれる。
地面に倒れると刺さっていた針がさらに食い込み俺は悲鳴を上げる。
周りの奴らは俺を気の毒そうに見て助けようとしない。
なんとか立ち上がり気持ちを落ち着かせあたりをよく見てみる。
すると足元に魔法陣が書かれていた。
隣で爺さんが
「これはまさか・・・。いや・・・しかし・・・。」
と言っている。
すると急にドアが開き、一人の女性が現れた。
「おはようございます、犯罪者の皆さん。私はエルスト王国第一王女のエリスと言います。」
目の前にいる女性は王女様だった。
目はぱっちりと開いており誰が見ても美女と言えるであろう容姿だ。
しかも彼女の金色のロングヘアがお嬢様を連想させ、さらに美しく見える。
しかし俺は彼女に言うべきことがあった。
もちろん俺は殺人などやっていないということだ。
「ちょっといいでしょうか。王女様?」
俺が声を発すると王女は露骨に嫌な顔をした。
「なんでしょうか、そこの醜い体の男。」
お前らがやったんだろうが!
そう言いたかったが相手は王女だ。
更に不敬罪なんて言われたらたまったものじゃない。
一回深呼吸して落ち着くと王女に向かって、
「私は殺人など犯しておりません。これは冤罪です。助けてください王女様。」
思っていることを言った。
さすがに王女に言えばどうにかなるだろうと考えていだが王女がとった行動は俺の考えとは反対だった。
「はっ。お前みたいなくずが死んだところで誰にも迷惑は掛からないのだからいいじゃない。あなたたちは勇者様を召喚するために集められた生贄なの。わかる?あなたたちに罪があろうがなかろうが大した問題じゃないの。」
そういうと王女はドアから出ていった。
部屋に残された俺たちは唖然としていた。
いままで絶対として拝めていた王家による裏切り。
この事実を受け入れるには時間が少なすぎた。
急に魔法陣が発動したのだ。
他の人たちは死を悟ると恐怖で泣き叫びながら出口にむかって駆け出した。
しかしドアは開かず、順番に一人ずつ足から頭に向かって消えていく。
俺は目の前で起こっている事態についていけなく突っ立っていた。
そんな俺に爺さんが話しかけてきた。
「おい、おぬし、よく聞くのじゃ。この魔法陣は勇者を呼ぶためのものじゃ。わしはこの研究のために連れてこられた。わしたちは生贄ということになっておるがほんとのところ消えた者たちがどうなるか分かっておらぬ。これは資料に載っていなかった。じゃからもし生きていたらバルト王国の近くにある迷いの森というところに行け!そこにわしの家がある。何か役に立つかもしれん。」
「生きていたらか・・・。」
「さっきも言ったがどうなるかわからんのじゃ。だから生きていたらじゃが、もしわしの家に行ったなら、家にあるものは何でも使ってくれてよい。」
「そんなことよりこの状況をどうにかできないのか?」
「むりじゃ。」
爺さんはそういうと消えていった。
そして俺も足から徐々に消えていった。
そして男たちがいた部屋には4人の少年少女がいた。
そして俺は見知らぬ天井を見ていた。