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名前のない怪物  作者: 黒木京也
続章ノ一 背徳の牙
129/221

11.内的世界

 ゆっくりと目を開けた唐沢汐里が知覚したのは、鉛色の空だった。次に感じるは、身を刺すような寒さ。怪物として人間よりも頑強な身体を持ち合わせて尚、骨に染むような凍えを感じ、汐里は仰向けのまま身震いした。


 真っ先に夢か……。そんな考えが漏れるが、汐里は直ぐ様それを否定した。身を起こし、自分がいる地を撫でるだけで分かる。夢というには、その感覚は鮮明すぎた。五感すべてが正常に機能しているが故の現実味(リアリティー)は、汐里に疑念と興味を同時に抱かせた。


「……ツンドラ地帯。と、言ったところでしょうか?」


 周囲の景色を見て、率直な推測を口にする。

 木の一本もない、冷えきった大地には、赤とも山吹色ともつかぬうっすらとした苔状草が存在するのみ。その唯一の色彩すら、所々凍り付き、無機質な銀色の光を灯していた。少し離れた場所にある、ちっぽけなログハウスがなければ、ただひたすら死の気配を内包した世界に見えたことだろう。

 自分は日本の辺鄙な山村にいた筈だ。こんな殺風景な場所に、一人で来た覚えは……。


「どこまでも冷たい、永久凍土の大地。けど、そんな所にポツンと立つログハウスが、僅かに残った人間味と、暖かさを暗示する。君らしい世界だね」

「……っ!?」


 不意に背後から響いた、聞き覚えのある声。忘れる筈がない。それはかつては共に。いつしか違え、別れた後に人の道を外してまで焦がれた声だったのだから。


「嘘……どうして?」


 そこにいたのは、やはり知った顔だった。

 銀色にも、金色にも見える髪を、かつて汐里は星に喩えた。

 真紅の瞳に映るのが自分であったなら。と、何度不毛な願いを抱いた事だろう。

 白磁の肌と己の肌を重ねることはついぞなかった。皮肉にも、まともに触れ合えたのは、骸となりかけた彼の肉を貪り喰った時だ。

 そして何より。その仮面染みたアルカイックスマイルはかつて汐里は嫌悪し、かの女は哀しくも愛しく感じたもの。そのままだった。


「やぁ、汐里。今日の君は何色だい?」


 凍える世界の中に、取って付けたかのように置かれた岩。その上に男は――、明星ルイは座っていた。その光景は、彼のアルビノという特異な体質も相俟って、憎らしい程に絵になっている。


「……髪は、見れば分かるでしょう? 貴方が知りたいのは、私の下着ですか? 心ですか?」

「……じゃあ、両方」


 汐里の返答にしばらく考えたルイは、すました顔でそう答える。相も変わらずの飄々とした態度に汐里は肩を竦め、少しだけ恨みがましい視線をルイに向けた。


「今日は黒です。心は……教えてあげません」

「フム、セクシーな色だ。秘密を纏うところがまたいいね」


 そんな感想を漏らすだけで、貴方は私をどうこうしようとは思わないのでしょうね。その揺らがぬ事実をひしひしと感じながら、汐里はさてと。と、言わんばかりに指を鳴らす。骨が擦れる感覚も、響き渡る乾いた音も本物だった。


「まぁ、私の色なんてどうでもいいです。質問することにしましょう。貴方は何か。ここは何処なのか。三十字以内で簡潔に答えて下さいな」

「いきなり無茶を言うね。それは僕、明星ルイとは何者かという質問かい? 明星ルイという怪物としての側面か。はたまた君に喰われ、何故かその存在が繋ぎ止められた僕は果たして如何様なものなのか……では僕とはどこまでが僕なのか……」


 刹那。ルイの肩口が、ザクリと裂けた。花が散るかのように宙を舞う鮮血を他人事のように眺めながら、ルイは彫像の笑みを浮かべる。


「桐原の技か。硬化した蜘蛛糸を、弾丸のように射出。ピストル要らずのお手軽暗殺術だ」

「茶化さないで下さいな。煙に巻くような態度は相変わらずですね。そんなに私が憎いですか? 素直にあの女の元に貴方を送らなかった……私が」

「……意外だね。君は死後の世界なんて信じないと思っていたよ」


 指で拳銃を象ったまま、汐里の瞳が、少しだけ哀しげに潤む。それを見て取ったルイは心底驚いた顔で、血色の瞳を見開いた。

「悪かったよ。そりゃあ君に思う事がない訳ではないけど、いつぞやの手紙でも言ったろう? 僕は君に感謝している。レイ君の師匠を引き受けてくれたこと、あの子をレイ君と一緒に守り続けてくれたこと。もう一度、レイ君やあの子と話す機会をくれたこと……」

「それは……」


 それは全部全部自分の為だ。ほんの少しだけレイやあの少女にシンパシー的なものはあれども、根底はルイと共にある為だ。こうして、もう一度話してそして――。

 邪な考えが、汐里を支配しかける。が、今この場では好奇心が勝った。自分はつくづく可愛いげのない女だと汐里は半ば自嘲するように溜め息を漏らす。


「話がそれて来ました。私は別に貴方から感謝の言葉を貰いたい訳ではありませんし、哲学を論じに来たわけでもありません。相変わらず女の涙に弱いところとか……ああ、考えてみればあの女にもそれで押し切られてましたね。私も貴方の前で泣いてみればよかったのですかねぇ!?」

「……言葉の端々に悪意を潜ませるの止めてくれよ」


 降参するように両手を上げるルイに、汐里はフンと鼻を鳴らす。睨み付ける眼力はそのままに、汐里はルイに再度問う。


「貴方が紛れもない明星ルイで、私の中で生きているその人だというのは、今何となく理解できました。言動、仕草、匂い、血。全部が貴方だと、私の中では確信が持ててます」

「うん、正解だ。何か判断材料の一部が気にはなるけど、正解だよ。僕は君が知り、喰らって共にある事になった明星ルイさ」


 ルイが認めた事を確認し、汐里は更に続ける。このルイが現実のものであるとして、それではまだ解せぬ事がある。


「では質問を続けます。ここは何処なのか。貴方がルイであるならば、私の前にこうして立っているのは何故なのか。貴方が私の中に取り込まれている以上、桐原と京子のような手段でも使わない限りはこうして会話することはおろか、分離も不可能な筈です。夢と一言で現すには、どうにもここは、リアルすぎる」


 以前レイが語っていた、鮮明すぎる夢。山城京子が現れて、彼の腕に手形を残していった話を汐里は思い出していた。

 現実のようでいて現実でないどこか。最初は聞き流す程度ではあったものの、手形という形で明確な爪痕を残していったその現象が、汐里には考えれば考えるほどに不思議だった。この世であり得ないことが起こる。そんたものを嫌というほど見てきた汐里には、到底無視できる事ではなかった。


「……僕も完全に理解している訳じゃない。推測に過ぎないよ?」

「構いません」


 汐里の言葉を聞いたルイは静かに頷くと、そのまま腰かけていた岩から滑り降りる。踏み締めた地面が、薄氷を割ったような音を立てて僅かに沈んだのが見えた。


「アモル・アラーネオーススに喰われた人間は、その中に取り込まれて尚、暫くの間意識がある。その取り込まれている場所を心と見るか、脳と見るべきかは微妙な所だけど、ともかく彼女達の中には何らかの方法で、人格が宿る場所がある」

「……〝内的世界〟と、桐原や京子は言っていましたね」

「そう、そんな名前だった。ここで興味深いのは、内的世界において桐原や山城京子は、本体である雄の個体を撃ち破り、身体のコントロールを乗っ取るという芸当を見せた。僕はね。この内的世界というのは、極めて現実に近い内部構造になっていると思うんだ。その人の心や人となりが分かるような世界……そう、たとえば、ここのように」


 広がるツンドラ地帯を見渡しながら、ルイはそう呟く。対する汐里は、少しだけキョトンとした顔を見せてから、すぐにぶんぶんと首を横に振る。


「……あれはアモル・アラーネオーススだけの特性では? もともと誰も取り込んでいない私達のような欲求対象者が持っているとは考えにくいです」

「そうだね。けど、考えてみてくれ。アモル・アラーネオーススは、生物を取り込み、その身体をコピーして姿を変える。つまり、元々ある能力以外はその人そのものって事になる」

「……内的世界は怪物の特性などではなく、誰もが持ち合わせているもの……だと?」


 肯定するルイに、汐里は少しの目眩を覚えていた。心の在処なんてものを専門にしている研究者がこんなことを聞いたら、きっと卒倒することだろう。汐里も学徒の端くれだった頃、怪物の存在を聞いた時は耳を疑った位だ。


「……根拠は?」


 辛うじて出た言葉に、今度はルイが困ったような顔を見せる。それを見た汐里は、よもや何の根拠もなしにあんな事をかたったのではあるまいか? 等といった邪推が芽生えかけた時、ルイは慎重に、言葉を選ぶように語り始めた。


「僕は君に食べられただろう? それ以降ずっとここにいたんだよ。あるときに急激に力が満ち溢れた時があったんだけど……」

「……顔無しを喰らった時ですね。それが何か?」


 我ながら悪食というレベルではない。何て事を考えながらも、大して感慨が浮かぶわけではなく、汐里はルイに続きを促した。


「あの時、一時的に君に成り代わることが出来た。実はあれ、殆ど無意識だったんだ。外で何が起きている? もしかしたら、あの子やレイ君に何かあったのではないか? そんな事を考えたら、気がついたら僕はあの樹海に立っていたんだ」


 実際は杞憂だったんだけど。と、ルイは苦笑いを漏らす。

 ルイと入れ替わった時……。確かあの時は樹海から別の場所に移ろうとした時の事だ。準備が殆ど終わり、少しだけウトウトしてしまった時だ。


「寝込みの気が揺らいだ隙に私を剥ぎ取ったんですか? しかも無意識に」

「……だから言い方に悪意を滲ませないでおくれよ」


 文句を言いながらも彫像の笑みを崩さないルイに、汐里はしてやったりな顔でそっぽを向く。可愛いげがないのは昔からなのだ。と、勝手に汐里は自己完結した。


「あれは君が僕に出て来て欲しいと願って、かつ力を取り戻した事によって心に余裕が出来、そこに外が気になるという僕の感情が増幅した。土台としてあったのは、桐原が山城京子と共にあった時と同じ、突然変異(ミュータント)としての特性だ。結果、あの成り代わりが起きたのさ」

「……私が出て来て欲しいと、願った?」


 そこまで知っているのに、この男は何も言わないのか。

 焔にも似た感情を必死で抑えながら、汐里はルイを睨む。


「貴方はここにいて、私と入れ替わる事出来たからこそ、ここが私の内的世界であると仮説を立てたと?」

「そうだね。ついでに、成り代わりの後も、やっぱりここへ戻ってきた。信憑性は高いと思うな」


 そう締めくくるルイに、汐里はフム……と、唸るようにして考え込む。話は一応わかった。自分が入れ替わった時はこの世界を感じなかったが、それについては今は除外した。あの時自分は殆ど寝入っていたのだから。

 そこまで考えて、汐里はふと、レイの話を思い出す。あの時彼は意識を失って、瀕死の状態ではなかったか?

 それを自覚した時、汐里はにわかに寒気を覚えた。


「ところでさ。君にいきなり質問されちゃったから、機会を逃していたんだけど……え~っと、君は何でここに?」


 本気出せば出来るかもしれないけど、僕らは基本同時に存在は出来ない筈だ。そうつけ足すルイに、汐里は何とも微妙な顔になる。


「実は全く記憶に無いんですけど……私は今、意外と命の危機なのかもしれません」

「……は?」


 分かりやすく顔をひきつらせるルイを放置して、汐里はこうなる直前について思い起こす。

 大輔の捜索についていった。ここまではいい。消えた女刑事。ニホンオオカミ。そして……。


「……っ、そうだ。あの女です」


 そこまできてようやく、汐里は自分を昏倒させうるだけの存在に思い至った。甦る記憶には、確かに自分が直前に知覚したのが、彼女だと刻まれていた。


「……アリサと名乗る女性に逢った。レイ君からは、そう連絡が来ました」

「……っ!? いや、まさか」


 ほんの僅かに、ルイの表情が凍り付くが、直ぐに持ち直す。少なからず見えた感情の揺らぎに、思わず顔をしかめそうになるが、汐里もまた、それはおくびにも出さない。今は妙な嫉妬にかられている場合ではないのだ。


「……恐らく、彼女が生きている。というのはあり得ません。つまり、彼女の名を語った何者かである。と、私は推測しました。実は今、とある事件がありましてね。〝誘い込まれている〟と分かりながら、私はレイ君が向かった現地に急行しました」

「……何が起きているんだい?」


 ルイの疑問に、汐里は明確に答える術を持たない。ただ、分かっているのは、今までにないキナ臭い空気だった。悪意に踊らされている。そんな気がしてならないのだ。


「その名を語った人物らしき者に、私は接触しました。今ここに立っているのも、あの女性が原因なのかも。取り敢えず、危惧していた実験の生き残りという訳ではない事ははっきりしています。見たことがない顔でしたからね。ですが問題は、彼女は私達以外が知り得る筈のない名前を使っていること」

「アリサ……か」


 そうです。と、汐里は頷く。アモル・アラーネオーススという怪物の存在自体は、あらゆる組織に知れ渡っている。だが、実験に関わった人間達までは他のどんな組織も知り得る筈がない。怪物の檻だった第三実験棟は既に汐里の手によって焼却され、研究資料は回収済みなのだ。

 では……何故。


「汐里、その女性の特徴は?」


 ルイに言われるがままに、汐里は女の容姿を説明する。すると、たちまちアルカイックスタイルの仮面は剥がれ、後には悲痛な表情のルイだけが残された。あまりにも珍しいその反応に汐里が戸惑っていると、ルイは疲れたような溜め息をつき……。


「そうか……そういうことか」


 一言それだけ呟いた。


 ※


 ああ、何かもう色々と終わった。

 そんな呟きを漏らすことも出来ぬまま、僕は甘んじてそれを受けていた。


「あ……むっ……んんっ……ぷはっ……」


 お座敷には、淫靡な水音だけが響いていた。くっついては離れを繰り返す互いの唇に、銀色の橋が架かる。それと僕を交互に、うっとりとした表情で見つめながら、怪物は妖艶に微笑んだ。

 お仕置きなう。戻ってきた僕は直ぐ様彼女に押し倒された。肩を貸していた女性が無慈悲にも畳みに叩きつけられたのが見えたが、彼女はそんなのお構い無し。それどころか、邪魔。とばかりに女性を廊下に投げ捨て、それはそれは熱いキスを降らせてきた。

 哀れ今度は固い廊下にキスをかます羽目になった名も知らぬ女性。それに追い討ちをかけるかのように、エディはしっかり四本足で女性を踏みしめてから座敷に帰還した。しかも砂をかけるようなモーションのおまけつき。


「ヘッヘッへ……」


 やったぜ。とでも言わんばかりのいい笑顔でエディは僕を見ると、そのまま怪物といた少女の元へ。少女は、満面の笑みでエディを迎え、その短い体毛に嬉しそうに頬擦りしていた。


 不格好な格好で廊下に捨てられた女性。

 モフモフと戯れる、中身が怪物(推定)の少女と犬。

 見た目女子高生に馬乗りになられた挙げ句、凄い勢いで不健全な空気に引きずり込まれそうな僕。

 なんだこの状況。

「おいぃ! ちょっと止まれ! ストーップ! ヤバイから! 人様の家じゃマズイから!」

「レイがわるい……(ワタシ)をおいていくから……はむっ」

「いや、あれは君があの子と遊んで……あひん! よ、よせ! 鎖骨くわえるな……ひぃいっ!」

「……レイ。レイも舌……。いつもみたいに」

「出せるかぁ! 止めろ! 爪出すな! 話を聞けぇ!」

 謎の攻防戦を繰り広げる僕と怪物。何が悲しくて軟禁先でこんなことをしなくてはならないのか。しかも……。

「ケヘヘ……」

「…………」

 犬と少女がガン見している前で。荒手の罰ゲームか。というか、あの女性がもしも起きたら……。


「おじゃましまーす」


 その時だ。庭の方から、誰かの声が聞こえてきた。

 何だ? お客さん……。


「な、訳ないか」


 犬の怪物の本拠地らしいここに、そうそう人が入れる訳がない。対策課の人達が来た? まさか。敵陣でわざわざお邪魔します何て言うわけがない。

 唇をせがむ怪物に、触れるだけの軽いキスを落とし、そっと柔らかな髪を撫でる。絹みたいな指通りと、甘い香りが、静かに僕を落ち着けて行く。

「……ここで待ってて。危ないと感じたら……」

「や。(ワタシ)も行く」

 ですよねー。何となく予想してたよ。

 チラリとエディと少女の方を見る。エディはピンと短い耳を立てながら立ち上がり、庭の先。入り口の方を見据えていた。偶然か、それとも彼の意志か。少女を守るようにして。


「……行こう。僕の後ろに」

「……ダメ。レイは(ワタシ)が守るの」


 名誉挽回くらいさせてくれよ。そんな言葉は飲み込んで、僕らは並んで共に行く。

 さっきの声は、女性だったように思えたが……はて。何処かで聞いたことのあるような気がしたけど、気のせいだろうか?


「何だろう……嫌な予感がする」


 不吉な空気をひしひしと感じながらも、僕は片手を一振り。今や慣れ親しんだものとなってしまった鉤爪を、静かに擦り合わせた。



 ※



 ツンドラ地帯にポツンとあったログハウス。その中に移動したルイと汐里は、木製のテーブルを挟み、向き合うようにして座っていた。


「レイ君には、話したけど……」


 そう切り出したルイは何処と無く戸惑っているように見えた。

 血色の瞳が揺らぐ様を見つめながら、汐里はルイの言葉を待つ。

 寒いだろうから、中に入ろう何ていう気遣いに、柄にもなくときめいたのは、彼女の胸のうちにだけ留められた。さっきも感じたが、今はそんなぬるま湯につかる余裕はない。ルイの表情からも、それは窺えた。


「僕は以前――、あの子を探す過程。そう、君と敵対していた頃。僕達以外の地球外生命体と出逢った事がある」


 レイへと向けた指南書と手紙。それは以前に汐里も見たことがある。地球外生命体は自分達以外にも必ず存在する。その旨が記されていた筈だ。


「死に行く定めであり、あの子を探すという目的があった以上、僕は彼女とは必要以上に関わらなかった。時間にして三日。だけど、正直に言おう。僕はそのたった三日で、彼女とはもう二度と関わりたくない。そう思えてしまった」

「貴方が……そこまで?」


 思わず息を飲む汐里に、ルイは目を閉じ、静かに頷いた。哀愁とも、畏怖ともつかぬ表情が、汐里をますます戦慄させた。


「彼女の……本当のものかは知らないけど、その名は香山(かやま)梨花(りか)。正体は……数多あると思われる地球外生命体の中でも、恐らくは最強の個体だ」

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