表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

はじめての失敗

中三の頃、事件が起きた。

その頃、友達の将之の家が溜り場になっててた。

将之ってのは、底なしの馬鹿で、いつも必ず最後に何かやらかす「トラブル製造機」的な奴だった。

1コ上の先輩達に袋叩きにされて全裸で池に放り込まれたのはコイツ。

今まで生きてきた中で、靴下で局部を隠した人間をコイツ以外に俺は知らない。

その日もいつもの様にくだらない話したり、結構夜中まで遊んでた。

かなりの勢いで雨が降ってた夜で、将之が「車で送ってく」と言い出した。

その前から、親の車とか乗って遊んでた俺達は、軽い気持ちで送ってくれって言っちまったんだ。

将之は車の運転はうまかったが頭がとにかく弱かった。

俺と拓ちゃんとあと海って奴の三人を送ってく事になった。

この海って奴はかなり調子のいい奴で、ドラえもんで言うスネオみたいなポジション。

で、最初に拓ちゃんを下ろして、次に俺、最後に海を送ってく順番だったが、拓ちゃんを降ろしてからしばらくすると、海が「俺も運転したい。」と言い出した。

将之んちの車なんだからやめとけって言ったが海は聞かずに、将之と運転を交換した。

外は雨。時間は4時頃。

海は簡単だと言ってどんどんスピードあげてく。

そしてなぜか車が右車線を走りだした。

「ここはアメリカ?」って勘違いしたのか、それともただ調子にのって逆走したのかはいまだに分からないけど、とりあえず気付いた時には前から光が見えてた。

「ヤバい」って思った時には既に時遅し。

海は前から来た車と正面衝突した。

俺は外に投げ出され、将之はフロントガラスに顔から突っ込んでた。

海は逃げた。

相手は無傷だったみたいだが車はボンネットがくの字に曲がり、意識が遠のく中で「将之連れて逃げなきゃ」と思ったけど体は動かなかった。

俺達はそのまま病院に搬送され、翌日逮捕された。

翌日の目覚めは実に最悪だった。

体はボロボロだし、頭は縫うためにボウズにされてるし。

脇には見たこともないおっさん座ってるし。

親より先におっさんが口を開いた。

「10時24分、道路交通法違反の疑いで逮捕。」

後で聞いたら、将之の方が俺より先に起きて連れて行かれたらしい。

誰が運転してたとか、なんで反対車線走ってたんだとか、とにかく責められまくった。

だが、話を聞いてると、海の名前が全然でてこない。

不思議に思った俺は取り調べしてた警察官に聞いてみた。

将之は何か言ってたかって。

すると警察官は、

「アイツは自分が運転してた。大吾は巻き込まれただけだから家に帰してやってくれ。そう言ってるぞ。」

将之はなんてデカイ奴なんだと思った。

俺は起きてからいままでずーっと海をどうやって殺してやろうか考えてた。

でも、将之は違った。

アイツは海の事はおろか、俺の事まで心配してくれてた。

最高にいい奴だ。

その後、取り調べは1週間続き、俺達は鑑別所に移送された。

鑑別所は大人で言ったら拘置所みたいなとこだ。

家裁からの判決待ちの約一ヶ月間入ってる。

鑑別所は精神的に辛い。

誰とも話できない。

朝は6時に起きて布団畳んだり、顔洗ってラジオ体操する。

そっから朝食なんだが、これがまた不味い。

山盛りご飯は麦7米3の黄金比。

おかずは魚が出ればまだいい、わけのわからないザーサイとキュウリのキュウちゃんしか出ない日もある。

味噌汁だけが友達。

そのあとは、運動と言うなのイジメと、一日二冊だけ貸してくれる本を読む。

日課はボールペンの先で色紙ちぎって書く貼絵。

ドラえもん書いたら、鑑別所の中に飾られて笑った。

風呂の時間は大変だった。

少年ヤクザみたいな奴が多くて背中が絵の博覧会。

親指は常に水面より上に出してなくちゃいけないからかなり間抜けな状態。

湯船の中で連絡先とか交換できないようにするためらしいけど、かなりシュールな光景だ。

土曜日と日曜日は特別な日だった。

朝から食パン一斤しかも出てくるマーガリンとジャムは学校給食サイズ。

全部食べないと責められるから、口の中パサパサになっても食った。

土日は午前中と午後に各1本ずつ映画が見られる。

自分のお金で頼んだカールのチーズ一袋とあんパンとオレンジジュース飲めるから幸せだった。

ただ映画の内容はたしかとなりのトトロとかグーニーズとかだったかな。

フランダースの犬が始まった時は別の意味で泣いた。

たまに家裁から検事が取り調べ来るぐらいで、稀に親とかが面会来た。

約一ヶ月すぎると家裁で裁判になる。これで行き先決まるわけ。

俺と将之は、初犯だったから保護観察になった。

外に出て一番最初にしたことはタバコを吸う事。

こればかりはヤクザもガキも変わらないみたいだ。

その足で保護観察所(ちゃんとした名前忘れた)に行き、近所の保護司を紹介してもらう。俺の保護司は70過ぎのおじいちゃんだった。

そっから1年2ヶ月の保護観察期間がスタートする。

月二回保護司に行かなきゃならない規則だったけど、保護司のじいちゃんがいい人だったからなんとかがんばれた。

学校では、友達はみんな海の事、無視してた。

逃げたのがみんなにバレたらしい。

「仲間を売る」って事だけは、絶対にやってはいけないんだ。

それだけは、今も昔も変わらない。

誰からも相手にされなくなった海に最初に話しかけたのはやっぱり将之だった。

俺は将之ほど優しくないから一回ボコボコにしてチャラにした。

拓ちゃんは怒ってたけど俺と将之が納得するならって事でまた海を仲間に入れた。

だがこの選択が間違いだったと思い知るのはまだ先の話なんだぜ。

とりあえず学校に戻った俺達には受験が待ってた。

拓ちゃんは頭悪すぎて入れるとこがないから、県内で1、2を争う海沿いのバカ高校に嘆願で入れた。

将之は拓ちゃんとは違うものの、やっぱり1、2を争う山の方のバカ高校に嘆願で入った。

海はそれなりの普通高校に進み、俺は拓ちゃんの学校の近くのやっぱりバカ高校に入った。

中学の卒業式はパトカーが来てた。

隣町の奴らもやっぱり喧嘩売りに来てた。

NO FUTUREな奴らばかりだ。











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ