プロローグ
夢にみた街 どこにあるのか たどり着きたい 誰か教えて
俺が住んでた街は、小さな港町のすぐ隣。電車はJRだけど、ディーゼルエンジンの黒い煙を吐く2両編成しか通ってない。
まぁ、早く言ってしまえば、「田舎に泊まろう」に出てくる様な場所に毛の生えたような所。
ただ、他所とちょっと違うのは、頭のおかしい奴が多い所ぐらいだ。
ちなみに、どのぐらいおかしいかって言うと、「他人の物は俺の物。俺の物は俺の物」って言う、ジャイアニズムを、人間的に「それ、ナシじゃね?」って思う奴がまずいない。
それどころか、「俺も、俺も」と言い出して、一緒に悪乗りし始める奴までいる始末。
我ながら最低の環境だと思う。
小さな港町は昼間は漁から帰ってきた漁師が一升瓶片手にクダまいて道路の真ん中で昼寝しちゃうぐらい平和だけど、夜になると、近隣、はたまた他県から若い奴らが集まり、夜な夜なナンパや喧嘩、時には強姦とか外人が薬を売ってたりする、ちょっと危ない街に豹変する。
これから話す話は、まだ俺が10代だった頃の8割実話で2割嘘ぐらいの俺と楽しい仲間の青春の傷跡だ。
まぁ、適当に暇潰しぐらいで聞いてくれると嬉しかったりする。
小学校の頃、俺はイジメられてた。
理由は今でもいまいちわからないけど、小学生なんて、学校の便所でウンコしただけでもイジメがはじまるような残酷な生き物。(だからって別に学校でウンコした訳じゃないよ)きっと、理由なんて些細な事だろ。
毎朝起きてまず思う事は「学校行きたくない」だった。
俺の名前が牧野大吾だった事がまずマズかった。
あだ名は「巻き糞大便」に早々に決定した。
今なら某、ダンスグループ(人数が増え続けてるあのグループ)のメンバーみたいに「マ〇ダイ」なのに。
鬱だ死のう。
そしてそのタチの悪いあだ名からエスカレートし、悪口、無視、挙句は殴る蹴る。
小学生のガラスのハートにはちょっと堪えた。
「死にたい」って思うまでになるまでわりと時間はかからなかった気がする。
だけどそんな地獄みたいな日々に転機が訪れた。
違うクラスだった拓ちゃんって奴に助けられたんだ。
拓ちゃんの兄ちゃんは絵に描いたような不良で、「特攻の拓」って漫画の緋咲さんって奴にソックリだった。
拓ちゃんの兄ちゃんは悟君って言って、俺達にタバコの吸い方と喧嘩の仕方を教えてくれた。
おかげで次の日から俺達に逆らう奴はいなくなったんだ。
調子に乗った俺達のグループは、同じ学校に喧嘩する相手がいなくなったもんだから、違う小学校にちょっかい出し始めた。
でも小学生って不思議なもんで、他の学校の悪い奴って同じはみ出しモン同士、なんかちょっと友達になりたかったりする。
やはりそれは相手も同じで、喧嘩売りに行ったはずがいつの間にか友達になってた。
そこからは人数も増えたし、喧嘩相手を求めに、隣町までチャリで行ったり、拓ちゃんちでどこをせめるか会議(笑)したり、いろいろ楽しかった。
そして、そのまま中学にあがっていく。
中学校ではすでに悟君は卒業していたが、やはり彼のネームバリューはすごく、2コ上の先輩は俺達を可愛がってくれた。
田舎だったから、学ランなんかも長いヤツや短いの着たり、髪型も中学生のくせにアイパー(売れない演歌歌手みたいな髪型)かけたりパンチパーマ(湘〇乃風の〇旦那みたいな髪型な)かけたり、とにかくやりたい放題で、かなりの時代錯誤っぷりを発揮してた。
そして、そのやりたい放題っぷりが気に入らなかったのか、1コ上の先輩達はおもしろくなかったらしい。
2コ上の先輩達が卒業したとたんに、仲間の一人がボコボコにされて全裸で公園の池に放り込まれた。
そいつのおかげで、俺達は先輩達を下向かせるための大義名分を手に入れた。
元々、喧嘩好きな奴多かったし、なにより悟君の影響(悪影響)で俺達の学年は不良が多かったんだ。
一ヶ月後には先輩達は俺達に敬語使ってたよ。
中二の頃には、悟君が入ってた族(暴走族)の集まりに出入りしてた。
友達が拝借してきた単車を、原型なくなるまで改造してそれに乗って族の集会に参加していい気になってた。
童貞捨てたのもこの頃。ビッチな先輩を呼んで飲み会開いて、酒の力をかりて一気に5人がその日童貞を捨てた。
中学生の時はいろいろ揉め事はあったけど、結構みんな仲良くやってた。
隣町の中学校に殴り込みに行って帰りパトカーで送って行ってもらったのはいい思い出だ。