表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神罰カウントが見える追放技師は、兵器開発を断って辺境港で遺物工房をひらく  作者: 蒼月よる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/12

第12話 潮目の灯り

 潮目工房は、一人で回す店でいるのをやめた。


 接収騒ぎのあと、外縁の住民たちが持ち寄ったのは文句ではなく提案だった。

 出資するから保存箱を増やしたい。

 作業場を貸すから灯りの修理班を作りたい。

 弟子を出すから停止手順を教えてほしい。


 俺は最初、全部断るつもりだった。人が増えるほど管理は難しい。難しいほど、事故は起きる。

 だがラウラが一言でひっくり返した。


「一人で背負うから壊れるんだよ。仕組みにしな」


 痛いところを突かれた。


 それで、工房を共同組合にした。

 名前はそのまま潮目工房。運営は三本柱に分ける。製作、帳務、保守教育。

 俺は製作と安全基準。ラウラは帳務と納期管理。保守教育はセオが補助に回る。


「補助って何だよ。もう弟子じゃないの?」

「弟子だ。だが教える側にも立て」

「うわ、責任重い」

「だからいい」


 開業から二か月で、港の夜景は変わった。

 航路灯は規則正しく点き、共同井戸の停止は週一回の保守時間だけになった。外縁の食堂では冷やした魚が普通に出る。以前なら祭の日だけだった。


 もちろん、全部うまくいくわけじゃない。

 部材は足りないし、闇市の使いが様子を見に来ることもある。クロウ本人は姿を見せないが、北倉庫の噂は消えていない。

 それでも、止め方を知っているだけで、人は少し強くなる。


 秋の終わり、広場で手順講習を開いた。

 冒険者が十人、漁師が十五人、商人が五人。思ったより多い。

 セオが板書し、俺が実機を使って説明する。


「一段目、負荷抜き。二段目、逃し弁。三段目、主線切り。逆順は禁止」


 参加者が声を揃える。繰り返し。もう一度。

 昔の軍実験区画とは、まるで違う声だった。


 講習のあと、ラウラが湯気の立つ茶を持ってきた。


「町長から礼状。あと、ギルドから正式提携の打診」

「早いな」

「今、外縁は稼げるって評判。あんたが数字で止めるから」


 俺は茶を飲み、看板を見上げた。角の欠けた「潮目工房」の文字が、夕日で赤く染まっている。


 赤い色を見ると、今でも少しだけ胸が締まる。

 だが前ほど嫌いじゃない。


 そのとき、郵便鳥が工房の軒に降りた。

 足環の封筒には、見慣れない村印。

 開くと短い文面が出る。


 暖房遺物が暴走し、村の北区画が使えない。

 近隣で対応できる技師なし。

 報酬相談可。至急。


 文末に、震えた字で一行だけ追記があった。


 赤い目盛りが、夜ごとに増えています。


 俺は紙を折り、工具箱へ差し込んだ。

 ラウラが気づいて聞く。


「遠い?」

「馬で二日。たぶん、すぐ行く」

「じゃあ積み込みだね」


 セオがもう荷車を引いてくる。動きが早い。


「次の潮目、見に行こうぜ」


 俺は看板の灯りを消し、頷いた。


「行く。数字が赤くなる前に」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ