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天使の探究者  作者: はなり
第一章  始まりの夜

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路地裏の戦い(三)

朝霜家は夕凪家と同じ殺し屋の家系である。夕凪家は異能を使える集団に対して、朝霜家もある異能を使える。異能というよりは妖術に近い、憑依術というものを扱う。これは武具に宿る神様を自身に憑依させるというもの。そして朝霜家では代々、十になる頃に生涯共にする武具を選別される。その伝統というものか仕来りの始まりがいったいいつからなのか、その武具たちがどこから来ているのかは誰も知らない。それと朝霜家のもう一つの特徴は、全員個々に変わった武具を用いているということ。

 

「朝霜に夕凪・・聞いたことがあるな。そうだ!!夕凪、夜月、朝霜・・殺し屋御三家か!・・へっへへ・・うれしいねぇ、子供とはいえ二つ名とやり合えるとは・・これで俺も名が上がるなぁ・・」

 

「何か勘違いしているな貴様・・」


槍士に憑依したであろう何者かがコンテナから飛び降り、ゆっくりと男の方へ歩きだす。


「貴様は、これから俺を楽しませるんだ。満足させたら生かしてやる。この俺が生殺与奪を握っていることを肝に銘じて、かかって来るといい」


「なんだぁ、態度でけぇ・・むかつくなぁ!!」


男はゆっくりと歩み寄ってくる槍士へと襲い掛かる。


ドンッッ!!


「は?」


男は一瞬何が起こったかわからなかった。あろうこか、男はいつのまにか路地裏を見下ろしていた。


「どうだ?宇宙空間に放り出された感覚だろ?」


いつのまにか一瞬にして、男は天高く舞い上げられていた。そばには槍士が嘲るように腕を組み宙にいた。


「急降下だ。楽しむといい」


ドンッ!


鈍い音がなる。男の背中目掛けて槍士のかかとが振り下ろされ、男は一瞬にして路地裏へと戻される。


ドンッ!!!


「ぐはっ・・!!」


叩きつけられた男の体は地面へとめり込み、抉れる。


「死んだか?ちいとやりすぎたかな」


ゆっくりと空から槍士が降りてきた。


「なんて、速さなんだ・・」


糸音はひとしきり吸血鬼どもを一掃し終えて目の前の光景に唖然としていた。


「・・・・」


「応答がないな」


槍士は地面に埋まっている男の首根っこを掴み、猫のように持ち上げる。


シュッ!!


槍士の頬を何かがかすめる。次の瞬間、男の足が槍士の顎を掠める。


「動けたのか・・・面白いな」


槍士は余裕の表情で向かってきた足を掴むと軽く引きちぎる。そのまま男を近くの壁へと投げ飛ばす。


ドンッッ!!!!


「っはっはっは!!うむ、なるほどな・・どうやったらくたばるのか・・吸血鬼とは研究しがいがあるな」


「クソったれがあああああああ!!!めんどくせぇ、めんどくせぇ・・なんなんだてめえ・・」


男は叫びを上げ、立ち上がると槍士に襲い掛かる。いつの間にか男の爪が鋭い獣のような鋭利ものになっていた。


「闇雲・・いや、やけくそか・・つまらんな」


そう言ってつまらなさそうに、向かってくる男を見ることなく槍士は手を伸ばす。そうすると近くに落ちていたであろう槍士の槍が手に吸い寄せられるように飛んできて手におさまった。


シュッ!


糸音の目には一瞬だけ向かってくる男を一凪しただけに見えた。次の瞬間には男の体は消え失せていた。


「なにが・・・いや、これは・・」


糸音は理解した。槍士は一凪ではなく数秒の間に一瞬にして男の体を塵も残さずコマ切れにしたのだ。肉の一つ一つを、細胞の一つ一つをこれでもかと、粉々に空気に溶かした。


「はぁ・・消化不良だな」


槍士は糸音の方を向きながら呟やき、ゆっくりと歩み寄る。

近づく殺気を肌で感じながら手に針剣を構える。


「いや」


槍士は唐突に足を止めて顎に手を当てる。


「流石にまずいな・・今ここで殺るのは得策ではないか・・」


「なんだ?・・殺さないのか私を・・今のいままで殺気がすごかったけど」


「あぁ・・すまなかった。どうも殺気を消すのは難しくてな。人の体とは難しいな。きっとこの体だと暗殺には向かぬのだな。さて娘よ、命を脅かした詫びに進言してやろう。立ち戻らなくては取り返しがつかなくなるぞ」


「どういうことだ?」


そう言って糸音の問いに答えず、槍士は静かにその場に倒れた。


「何なんだよ・・」



しばらくして槍士が目を覚ます。


「んあ・・いってえええ!!!くそっ!またかー」


槍士は急に起き上がると、再びゆっくり横たわった。


「気が付いたか」


「ん・・おー、情けねえ姿見せちまったな」


「情けないか・・そりゃお互い様だよ」


「ん?そうなのか・・」


「そんなことより動けそうか?」


「いいや、ダメだなこりゃ。まぁ数時間もすりゃ歩けるさ。ところで途中から意識なかったんだけど、やっぱ俺変だったか?」


「あぁ、別人だったぞ。まぁ、朝霜家の憑依術をこの目で初めて見たけど、あんな別人になるのか?」


「いいや。俺は恥ずかしい話、未熟者なんだよ。しかも持っている武具が厄介でよ、扱いが難しいんだよな。なんで俺に適正があるのか謎なんだけど」


「危うく一触即発だったぞ」


「マジで申し訳ねー。感情の帰結でこうなっちまうのが俺の欠点でよ、付け込まれるんだよ。まぁおかげで度々命拾いしてるんだけどな」


「はぁ・・しかし槍士、あんた朝霜だったのか」


「あぁ・・まぁ隠してた訳じゃねぇんだがな。俺は朝霜槍士、朝霜家では一番末っ子だ」


「うそ・・あんたが末っ子・・っふ・」


「なんだよ・・笑うなよ・・恥ずかしいな」


「いや、普段の言動からは見えないから。兄弟って言っても兄の方か、真ん中だと思ってたからな」


「そうかー、そう見えるのかー・・なんか複雑・・」


「一緒だな。私も末っ子だし。それで、また朝霜の子がなんで夕凪へ?」


「あー・・まぁなんだ。家出ってやつかな」


「家出ね・・まぁ詮索はしないよ。かく言う私も、先日まで家出していたからな」


「なんだ・・そうだったのか。まぁそっちが聞かねえならこっちも聞かねえよ安心しな・・つっても糸音ちゃんは信用できるからいいんだけどな」


「そうか・・そりゃよかっ・・」


ガラッガラッ。


二人がゆっくりと会話をしていたその時、先ほどの戦闘でできた建物の穴から物音がした。


「嘘だろ、まだいんのか!」


「いや・・全滅したはずだ・・いや、隠れていたのか」


二人の緩み切った空気は一気に張り詰めた。


「あー・・先輩、おはよございます」


その声で一気に張り詰めた空気がまた緩む。穴から若い男が、今起きたと言わんばかりに緩み切った声で空気をとかす。


「お前・・真宵か!?」


「真宵?」


槍士の反応に戸惑いながらも糸音は構えた武器をおろす。


「ん?そういや、お久っすね先輩」


「いやいや!そうだけど!なんでこんなとこに居るんだよ!」


「あぁ、それは少し長くなりますが、まぁ端的に言えばここの壁の裏側の部屋に捕まってまして。なんか外にいたゾンビ?の気配がなくなったんで縄を解いて出てきたんっすよ」


「捕まってたって・・・あー、そうかさっきの男か。なんで捕まってたんだよ」


「あー、そこはーっと。先輩、先にそちらはどなたですか?」


「あー。そうかお前学園にいなかったから知らないのか。この子は糸音ちゃんで学生だ」


「おい!雑だな説明・・すまない、私は夕凪糸音だ」


「夕凪・・ってことは先生の親戚か、なにかですか」


「親戚というより妹だな」


「あー、思い出しました!家出した妹がいるって言ってましたね。そうですか、あなたが・・よろしくです!僕は真宵といいます」


「真宵・・君が真宵か。兄さんから話は聞いているよ。色々と迷惑かけてるみたいで」


「いえ、任務に関しては契約なんで。ところで先輩といるってことは、今はデート中で?」


「いいや。デートは終わった」


「そうだな。残念だがしらけちまった。吸血鬼と妙な男のおかげでな・・・んで真宵。説明求む」


「あー、了解っす・・実はすね・・・・・・・・・・・」


真宵は二人に経緯を説明した。捕まった時の状況や男の名前、今回の任務についてを。


「というわけです」


真宵は軽く説明を終えると話疲れたのか近くのコンテナにもたれかかった。


「まさか未凪が裏切りを・・兄さんが黙っちゃいないだろうな」


「でも、まずくねぇか。未凪っていやー夕凪家の分家だろ。そこが裏切るってかなりのお家騒動だろ?」


「たしかに大問題だな。兄さんがどう動くかはわからないが、事と次第によっては一掃の可能性もある・・でも・・未凪の裏切りは誰かの罠の可能性も無くはない。私が知る限り、今まで関係が悪くなったことなんてなかったんだ。それが今になってっていうのも変な話だ」


「こりゃあ何かあるだろうな」


「あぁ・・でも私らが考えて動いたところでどうにもならないからな。今ひとまず帰って兄さんへ報告だな」


「おうよ!話し込んでいたおかげで時間が経ってようやく動け。よしゃ!行くか!」


「そうですね。帰りましょう」


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