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天使の探究者  作者: はなり
第一章  始まりの夜

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路地裏の戦い(一)


糸音と逸れてしまった槍士は路地裏にて妙な男と対峙していた。


「んで、何の用なんだ?俺をこんな暗がりに連れてきて」


逸れたしまった糸音を探して街をうろついていた槍士は今現在、目の前の男に絡まれ、面を貸せと言われたので路地裏までやってきていた。


「喧嘩か?ならさっさと済まそうぜ。俺は今、人探し・・」

 

話の途中で男は唐突に襲い掛かってきたが、槍士はギリギリのところで避けた。


「ちょ!?危ねえじゃねぇか!・・っち、なるほどな!喧嘩じゃなく今のは完全に殺しに来てたろ!何もんだてめぇ!」


「あー、あー、あー、ごちゃごちゃうるせぇガキだな。これだからガキは嫌いなんだ・・・こんなやつの相手をさせやがって・・おい!クソガキは大人しく殺されてろや!」


振り返った槍士は男の手にした得物を見る。いったい、今までどこに隠し持っていたのか、男の手には大鎌が怪しく光っていた。


「まったく、そんなもんどこに持ってやがったんだ!まぁ武器持ち、ってんなら遠慮なく殺れるぜ!さてと、久々にこのなまった体を動かすかな!」


そう言うと槍士は懐から鎖で連なった数本の棒を取り出す。


「ん?変わったヌンチャクだな。そんなんで俺を殺せるとでも?なめるのも大概にしろや」


「まぁ見てなって。それになめてるのはそっちだぜ!」


槍士は男の方へと駆け出だし、起用にも鎖を振り回しながら襲い掛かる。


「何をしこんでるのかは知らんが。その驕りも玩具もバキバキにへし折ってやるよ!」


男は槍士の棒の動きに翻弄されてはいたが別に避けれないわけではなかった。


シュッ!


「!?」


突如、男は腕に何か掠った感覚を覚える。その違和感のある箇所を見やると切り傷があった。


(なんだ!この切り傷は!・・・ヌンチャクに刃物でも仕込んでいるのか)


槍士は隙を見逃さなかった。一突き、槍士は男の腹部に入れるとそのまま壁へと叩きつけた。


ドンッッ!!


「ほらなー、なめてたのはてめぇの方だったな!一応言っておくと、これはヌンチャクじゃないぜ。こいつはバラして振り回しながら戦うこともできるが真骨頂はそこじゃねぇ、本来の扱い方は繋げて槍にすることだ。唯一、この俺だけが扱える優れ物だぜ」


男はゆっくりと気だるそうに立ち上がり、器用に大鎌を振りまわし槍士を見る。


「ふあああ・・・力説どうも。ったくいてぇなぁー。まぁ、たしかになめてたわ。だから今度はマジで殺るわ」


「なんだ、流石にくたばってなかったか・・」


「俺も油断していたな。マジで気合の入った一撃なら終わってたかもなー。まぁそうでなくても咄嗟に鎌でガードして正解だったわ」


「あ?今のは気合入ってたろーが」


「じゃあ、弱いってことだろ?」


男は鎌を振りかざし槍士へと迫まる。先ほどよりも速く、軽やかに槍士を襲う。


「本気ねぇ・・たしかにこりゃ速ええなぁ」


槍士は余裕こそないが、男が確実に致命傷を狙ってくるとこを避ける。そして、動きを先読みし大鎌に槍を当てがい吹き飛ばした。すかさず腹の中心へと一突き。


「終わりだぜ!・・・・っか!?」


槍士は背中に痛みを感じた。少量の鮮血が辺りへと飛び散る。


(な・・なんだ!?いや、それよりも鎌がない!?)


槍士は痛みに耐えながら、男を見る。男の手から大鎌が消えて代わりに鎖を握っていた。


「油断したなー。生憎、俺のもお前のと同じような武器でな、ほら」


男は鎖を引っ張てみせるとどこからか大鎌が戻ってきた。


「なる・・ほどな。さっき吹き飛ばしたと思った大鎌は鎖で繋がってたってわけか。油断した・・ぜ?」


槍士は急な疲労感を感じ、地面へと膝をつく。


「軽傷だと思ったか?ただ刺しただけじゃねぇし、もう一つ俺には武器がある。まぁ、もう気づいているだろうがそいつは神経毒だぜ。当分は動けねぇ。卑怯と思うか?油断しねぇってのはこういうことだぜガキ」


「だせぇなぁ、・・くっそー」


槍士は地面へと横たわった。


「なに、すぐに殺しはしねぇよ、今だけはな。今からゆっくり殺すからよー」


男はゆっくりと槍士へと近づく。しかし歩み寄る足音が消え、男は歩みを止めていた。


「うーーん」


(なんだ?・・・なぜ止まる?)


「・・・あー、そうだな。そうしようか」

男は少し考え、何かを思いついたかのような素振りを見せる。

槍士は薄れゆく意識の中で周りに妙な気配を感じた。


「おいおい・・・マジかよ・・」


いつのまにか槍士達の周りにうめき声をあげ、目に正気を失った人たちがフラフラしていた。

 

「良いこと思いついたわ・・こいつらに食わせることにした。こいつらはな吸血鬼の成れの果てってやつらしい。俺の命令で動く。っでだ、お前を食わせりゃ少しは強くなるかと思いついたわけよ。どうだ?冴えてるだろ?どっちにしろ殺すなら意味のある方がいいと思ってな。さてと、とりあえずここの任務は達成。次は、あの女だな。リストにはねぇが今後、邪魔になる可能性は明白。なら今やるべきだな。それに一度見たが、ありゃあ強そうだ。お前よりは楽しめそうだぜ。じゃ、おやすみ槍使い君」


槍士に徐々に近づく吸血鬼達。槍士はいつのまにか囲まれていた。


「あーやべぇ・・まぁ・・どっちにしろ・・痺れて動けねぇな・・メイの電撃よりはマシだけどな・・・」


(変わってやろうか?小僧)


目を閉じて真っ暗闇の中で声が聞こえた。


(最初からこの俺を出すべきだったな・・・ん?)

 

今まさに、槍士へと一匹の吸血鬼が襲いかかってきていたが、その手が触れる前に近くの壁へ吹き飛んで肉片が飛び散る。


「大丈夫か!槍士!」


「いや・・なさけねぇや・・ありがとな糸音ちゃん」

 

間一髪、糸音が吸血鬼を叩きつけたおかげで、槍士は喰われずにすんだ。


「なんだこいつら?・・というか、槍士、立て・・ないか」


「あぁ、情けねぇがな・・」


「おーー。俺はついてるなぁ。そっちから来てくれるとは、手間が省けるな。さて・・」


男は糸音の背後に瞬時に移動すると大鎌を振りかざす。


キンッ!


糸音は大鎌が振り下ろされる前に腰に刺していた長い針を取り出して、大鎌を上へはじき返し、男へと強烈な蹴りを入れる。


ダンッッッ!


糸音の一撃により男は壁へと吹き飛び激突した。その衝撃で壁が崩壊、大穴が空いて砂煙が立ち上り、男の姿が見えなくなる。それは先ほどの槍士の一撃より凄まじい破壊力だった。

間をおかずして、吸血鬼達が一斉に糸音に襲いかかる。糸音は腰のベルトに仕込んでいた小さな針を手に取って投げ飛ばし、吸血鬼達を次から次へと壁に貼り付けていく。


「多いな・・」


止むことがなく、襲い掛かる吸血鬼を長い針で槍士を庇いながら、器用にも次々とバラしていく。


「あいたたたー、まさかここまでってのはヤバいな。末恐ろしいな・・」


「!?」


大鎌によって砂煙が払われ、男がゆっくりと歩いてくる。


「なんてタフなやつだ・・さっきの一撃で仕留めたと思ったんだが・・ん、そうか・・そういうことか」


糸音は僅かに視界に入ったそれを確認し納得する。男からフッと傷が消えていく。


「イエス・・俺は半分吸血鬼なんだよなー・・だからさ、ほら・・治っちまう。まぁ痛いのは仕方ないんだけどな」


「面倒だな・・」


「そう言うなよ・・こっから楽しませてもらうんだからよー・・っとその前に・・」


ぐわーー!!!


「しまっ・・・!」


糸音は吸血鬼の急な動きに一瞬気を取られ、反応がおくれた。男はその一瞬の隙をついて糸音の背後へと回った。


「させない!」


糸音は瞬時に吸血鬼を吹き飛ばし、男の攻撃を防ぐため振り返るが、男の狙いは糸音ではなかった。傍らで横たわる槍士へと大鎌が振り下ろされる。


「まずは一人!!今度こそ死ねやー!!」


シュンッ!!・・カンッ!!


「!?」


切っ先は鈍い音を立て、地面へと突き刺さった。見ると、そこにいるはずの槍士はいなかった。


「ばかな!?どこに行った!・・いや、そもそも動ける体じゃねぇはずだ!!」


「槍士・・どこへ」


「あぁ・・やれやれ。まったく小僧には世話を焼くな」


槍士は積み上げられたコンテナの上に立っていた。


「槍士?・・なのか?」


糸音は一瞬安堵するも疑問を抱く。今、目の前にいる槍士の纏う雰囲気が糸音の知っている槍士と違っていた。


「てめぇ、なんで動けるんだ?・・おかしなやろうだ・・まさか、てめぇも吸血鬼かぁ?」


「知れ者が・・そんなものと一緒にするな・・全く気乗りはせんが一応、言っておこう。そこにいる夕凪の娘なら、わかるだろう。朝霜と言えば・・」


糸音はその言葉で理解した。


「朝霜か・・なるほど。憑依術の朝霜」


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