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天使の探究者  作者: はなり
第一章  始まりの夜

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4/8

日常

教室に着いた糸音は教卓の前にいて、メイもなぜか横に立っていた。しかも笑顔で。

どうでもいいことだが糸音は目の前の光景を見て一つ疑問を抱く。糸音の知っている学校のイメージとは大人数で学ぶものだと思っていた。しかし今教室にいるのは教師のツグハとメイと自分を除いて一人だけだった。

   

「では糸音、自己紹介を」

   

ツグハが、いつのまにかメイド服からスーツ姿になっていた。

   

「夕凪糸音です」

   

(ここはシンプルでいいだろ)

   

「ん?それだけ・・」

   

目の前の男子生徒が目を点にしながら糸音に言った。

   

「まぁシンプルでいいやんか!しーおーん!よろしゅうな!」

   

メイは手をグットの形で突き出しながら笑顔で答えた。

   

「なんだメイは知ってんのかこの子のこと?」


「知ってるも何も、もう友人だしー」


メイはそう言って糸音に近づくと肩に腕を回した。

 

(勝手に友人にされていた。まぁ、悪い奴ではなさそうだし。いいか)

   

「じゃあメイのダチってことは俺のダチってことで俺は槍士、よろしくさん」


(友達か・・・)

   

「よろしく」


糸音は少し照れくさそうに軽くあいさつをした。


「では自己紹介も終わったところでさっそく授業に移りましょうか」

   

ツグハは糸音の自己紹介をあっさり切り上げて、話を進める。


あとから聞いた話だが、どうやらこの学園は少人数制らしい。

メイと槍士の他に、二人生徒はいるらしいがこの二人は今日はいない。いずれ会える日を楽しみにしようっと糸音は窓の方を見ながらそう思った。

授業の内容はいわば一般教養というものだ。そこはどこにでもある普通の学校と同じだ。そしてつつがなくゆるりと授業は終わって行く。途中、メイは居眠りを何度もして、ツグハが注意し、槍士もまた居眠りし雑談し、またツグハが注意。糸音も、たまに話に乗ったりといった感じである。これが普通の日常なのか、と糸音はその光景を目にしながら思った。


(メイのやつあんだけ朝、大の字で寝てたくせに一体どれくらい寝るのだろう)


メイは授業の大半を寝て過ごしていた。

それに比べ、槍士はたまに寝るけど意外にも勉学には熱心に取り組んでいた。

聞くところによると実家を継ぐためにはこういうことも必要だとかで。

見た目はこんな感じなのに案外しっかりしている。


   

「ふぅー、終わった終わった疲れたわー。肩いったー、槍士もんでーやー」

   

「疲れたってオメェも寝てただけじゃねーかよ!肩もみなら他所で頼みな。まぁ糸音ちゃんに頼まれれば全然やるけど」

   

「うわ、贔屓なんかしよって!それに糸音ちゃん、って相変わらずのチャラさやなぁー」

   

「これがいつも通りの俺さ、だからいいんだよ。っで糸音ちゃんどう?」


「あぁ・・まぁ・・今日はいいかな」


「ほーら、みー。避けられとるやないか!ふっ、はっはは!うけるわ!」


「うるせぇよ!さぁさ、帰ろっと。まぁ帰る場所はここなんだけどよ。じゃ、また明日!お二人さん」


槍士はそう言いながら手を振り教室を出て行った。

糸音は持ち物を机にしまって、立ち上がってメイの方を見る。

 

「じゃあまた明日な」

 

「って待ってやー!なぁなぁせっかくやしどっか行こうやー」

   

「どっかって・・今は外出禁止って言ってたろ」

   

「ちぇー、ほな、また今度かー。残念・・」


メイは残念そうに顔を伏せる。

   

「なんだ?帰らないのか?」

   

「うん。うちもここやから、ゆっくりしていくわー」


「そうか。じゃあまた明日な、メイ」


「うん!またねー!絶対今度あそぼなー糸音」


「あぁ、約束だ」

   

静かに教室から姿を出た糸音は少しなごり惜しそうに教室の扉の前で立つ。


(約束か・・なんか・・前にもこんなことがあったような)


頭の中で何か引っかかる糸音は思い出そうとするも、すぐにやめた。


「まぁ・・いいか。さてどうしようかな」


糸音は夕日に照らされる廊下を歩きながら、考える。


(見たところここは昔と変わらないけど、色々考えもまとめたいし探索するか)

夕日が沈むのを横目に廊下を歩き続けた。

この校舎は二階建てで中庭を囲む様な作りだ。それぞれの階にはいくつか空き部屋があり寮が完備してある。今日いなかった二人の生徒も住んでいるという事らしいので、もしかしたら会えるかもしれないと思い探検を続ける。槍士とメイはここに住んでいると言っていたが正確には屋外にある、少し離れた別の寮で暮らしているとのことだ。そうこうして、色々見ていた糸音はある部屋の前で立ち止まった。


(そういえばメイとの戦いのあとにあったあの現象。もしかしたらここに何か手掛かりになる物があるかも知れないな)


そうして糸音は図書室の扉を開けた。

しばらく色々な本を手に取り見ていたが、やはり志貴の趣味に偏ってはいた。それもそのはず、ここは志貴が管理している場所だから当然そうなる。ここにある物は古い文献から新しい文献まで全て取り揃えられている。故人が残した研究結果や中には呪いの話やら霊魂の話。オカルトな物が多い中で、ある一族についてやらとか、種族についてやらとか。こうして見ると図書室というよりかは個人が所有する書庫に近いのかもしれない。

   

「ん?これは」

   

そんな中、糸音は一冊のボロボロの本を見つけた。

何故か妙に惹かれるその背表紙を手に取り見てみると、表紙には何もなく本というにはあまりにも薄い冊子のようだった。慎重に扱わねばバラバラになってしまいそうだった。

そして中を見てみるとこう書いてあった。

 

  森に囲われた場所に行きましょう

  羽に魅入られ 共に行きましょう

  探しても見つからない

  隠してもう見つからない

  鍵は一つもない 合わせて開ける

  救済を待つ者

  

読めるのはここまでで、続きは所々掠れて読めない。


(なんだ?これは?)


糸音は読むのを断念して本を棚に戻す。

  

「あ」

  

突然、隣から弱々しい声が聞こえて見てみるといつの間にかそこには女の子が立っていた。

背が低い、か細く、儚い、その少女は糸音をじっと見ていた。


(誰だ?というかまったく気づかなかった)

  

「あー・・えっとー」


糸音が言葉に詰まっていると小さな声が聞こえた。

  

「あ、すみま・・せん。その・・本」

  

女の子は私が戻した本を指さす。

  

「これか?」

  

「うん。それ」

  

「ほら」

   

糸音は何となく察して手に持っていた本を渡す。

  

「ありがとう・・」

  

「あぁ」

  

女の子はその場を去ろうとしたが足を止めて振り返り。

  

「わた、わたしは譲葉。」

  

(譲葉?なんのことだ・・・あっ、名前か)


「糸音だ」

  

「糸音さん、あの・・また・・ここに来ますか」

  

「あぁ、また寄らせてもらうかもな」

  

「そう」

  

譲葉は少しだけ嬉しそうにしてその場を去る。

  

(不思議なやつだな・・・譲葉と言ったか・・たしか兄さんが言っていた寮にいる子と同じ名前だな)


「だとすると、ここの生徒か」

  

ふと、気づけば日も落ちて窓の外が真っ暗だった。


(日が落ちる前に帰りたかったけど、まぁいいか。夜目はきくし)


糸音はこれ以上何もないと思い図書室を出て帰路についた。  

特に何事もなく屋敷に戻り、自室のベッドに横たわり今日の出来事を思い返す。家を出てメイと戦い、謎の夢を見て授業を受けて書庫で探し物をした。

  

「これが普通の日常か・・」

  

(それにしてもあれは何だったんだ。色々考えても仕方ないし・・今は寝よう)

  

糸音は考えをやめ静かに眠りについた。

   


ヘルフェブルの街は夜でも明るい摩天楼。人口も多い上に建物も多い。そんな高いビル群の中、一際高いビルの上で一人の少年が今日も変わらず街を俯瞰し監視をしていた。

  

「今日も以上なし。それにしてもこの街のここ一体はこんなに明るいのに、あの場所だけほぼ真っ暗だな。まぁ、仕方ないか。あそこは廃ビル群と呼ばれる、かなり治安がよくない一角だし。市長も頭悩ませてるって志貴さんも言ってたっけか・・」

  

夕凪志貴の命を受けた真宵は無線を取り出し、繋げると声をかける。

  

「おい!応答しろ未凪の者」

  

「ツー、ツー、ツー、」

  

無線の主は応答しない。

  

「・・まずいな何かあったのか」

  

真宵は立ち上がり、目を凝らして辺りを見てみる。特に変わった様子がないので、その場を離れ、まさかと思いビルの下をのぞいてみる。

  

「あれは・・」

  

丁度、真宵のいるビルと真横のビルとの間で今まさに襲われそうになっている人を見つける。

  

「まじか、真下じゃん。こういうのを灯台元暮らしっていうのかな」

  

真宵は手に持っていたライフルを構えると真下の怪物に照準を合わせる。動き回る標的にピントがあった。。

  

「さようなら吸血鬼さん」

  

ドンッ!!

  

銃口から放たれた弾は真下に一直線に落ち吸血鬼の体を頭蓋から貫く。

吸血鬼は真っ二つに割れて、襲われた人は悲鳴を上げながら全速力で逃げ出す。

  

「あーあ、お礼もないのかね。まぁいいけど」

  

真宵はライフルを担ぎ、ビルを降りていった。

現場に着くとそこには吸血鬼の死体だけが残っていた。

  

「こういうのって砂とかになって消えるものじゃないのかな。これ後始末ってどうしたらいいんだ?未凪の人とも無線繋がらないし、一体どうしたも・・・」

  

ドカッ!


突然、真宵は頭に強い衝撃をおぼえ、そのまま倒れこんだ

  

「な、なんだ・・まだ仲間がいたのか?ってお前は!?まじかよ・・しら・・な」

  

真宵はその場で気を失ってしまった。

  

「まったく、このガキ一人を攫って、後二人ガキを殺さないといけないなんて面倒くさい話だ」


闇の中へ男と真宵は消えていった


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