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天使の探究者  作者: はなり
第一章  始まりの夜

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邂逅

同じ景色が続く場所にいると今いる自分の場所がわからなくなる。こういう時にこそ、方位磁針ってやつは役に立つのだろう。しかし、この森に関して言うならば結界とやらのせいで、方位磁針を使っても無意味。だから、一度正規ルートから外れてしまうとなかなか戻れなくなってしまうのである。


「やれやれ、どうしたものか」


糸音はしばらく辺りを散策していたが、疲れるだけなのですぐに諦めた。


(最悪、何日かは遭難の可能性があるので体力は残しておきたい。まぁ食料はないので、もって七日が限界か。流石にそれまでには、あの過保護の兄が助けに来ると信じたいな。ツグハか、兄さんなら場所はわかるだろうから、それまで待つしかないか。変に移動すれば、それこそおしまいだ。もしかしたら、このメイとやらが知っているかもしれないが。あんまり期待はできないな・・・)

  

「ん?」

   

そうして考えながら木陰で休憩していると、空から一つの白い羽根が落ちてきた。普通ならば、そんなものは気にならないのだが、しかしその羽根はあまりにも綺麗で神々しく、不思議な光を放っていた。糸音は何気なくそれに触れる。次の瞬間、辺りが真っ白になった。そして何もないただ白い世界が広がる。


(なんだこれは?幻覚か?いや・・・夢、か?もしくは能力者が近くに居て、攻撃を受けている?まぁ、もし攻撃だとしても、問題はないか。敵意も感じられないし)


糸音は立ち上がり辺りを警戒しながら進んでみる。


「ようやく会えましたね」 

   

どこからか不意に声が届く。糸音はその声がした背後を振り返ると、そこには真っ白の人型の光の塊がいた。

   

「・・何者だ?」

   

糸音は怪しげなその光を警戒する。

   

「そう警戒しないでください。私はあなたをずっと待っていました。今はまだ全てを話せないのですが。あなたが全てを取り戻した時、もう一度来てください」

   

「意味がわからない・・どういうことだ?」


「ここであなたに出会えたことは良好でした。しかし、残念ながら今のあなたは欠けています」


「欠けている?何の話だ」


まったく話がみえない。しかし、一方的な物言いをする目の前のそれに糸音は何故か懐かしさを感じていた。


(・・・何故だろう、どこかで)

   

「なぁあんた、って言うのも失礼か・・なら、白い人。昔どこかで会ったことあった

け?」


その白い人の表情は糸音には見えないが、少し驚いた様子で少し嬉しそうにも見えた。

   

「ふふふ、さぁどうでしょう?そう思うのならそれはきっと・・・」

   

ふいに言葉が途切れていき、糸音は唐突な脱力感に襲われ、言葉を聞き取れずその場に倒れる。


「何って・・言った・・んだ?お・・い」

   

霞がかる白い世界の中、人型の白い塊はまた笑ったようだった。

   

「頼みましたよ」

   

そのセリフを最後に聞き、糸音は気を失った。そして、その白い世界から糸音の姿は消え、白い塊だけが残る。


「しかし驚きました。白い人なんて言われたので、あなたを思い出しましたよ。運命とは因果なものですね糸の人」

  


「・・・おん・・・し・おん・さま」

 

(誰かの声がする)

   

「大丈夫ですか!?糸音様!」

   

目を開けるとツグハが心配そうな顔でこちらを覗いていた。

いつのまにか寝てしまっていた糸音はゆっくりと起き上がり辺りを見渡す。

   

「はぁ、ツグハ私は大丈夫だよ。それよりメイって子は?」

   

「メイならそこに・・」

   

ツグハが指差した先、地面の上でメイが気持ちよさそうに大の字で寝ていた。

   

「はぁ、まったく一体何なんだ・・」

   

「申し訳ございません。志貴様がメイに事情を伝え忘れていたそうで」

   

「やっぱりか。兄さんのことだから絶対忘れてると思ってた。まぁ、終わった事だからいいんだけど」

   

(兄さんのせいでとんだ目にあった。遭難生活は免れたけど、それにしてもさっきのは何だったんだ・・えらく意識がはっきりしていたが・・夢・・だったのか?)


糸音はツグハと共に、呑気に寝ていたメイを起こして一同は学園へと向かった。


「ほんっっっとうに、ごめんやで!!まさかまさか!ほんまに先生の妹やとは思わんかったんや!」


学園長室に着くや否、メイが深く謝罪してきた。

一応こんなやつだけど反省はしてるみたいだった。

  

「いいよ別に。悪いのは、しっかり伝えてなかったうちの兄さんなんだし」

  

そんな当事者である志貴は現在、ツグハによって目の前で正座をさせられている。

ツグハは志貴に対してはあたりが強い。それもそのはず、二人は長年の付き合いで、幼馴染らしい。

  

「それで兄さん。人まで雇って、随分と外からの侵入を警戒してるみたいだけど、なんかあった?」

  

「あぁ、そのことなん・・だが・・・特に何かあったわけではないんけど、一応そこにるメイには怪しいやつがいないか警備してもらってるんだけどね。勝てそうなら撃退して構わないとも言っているんだ」

  

そう言いながら志貴は立ち上がろうとしたが痺れてうまく動けないようだった。ゆっくりと小鹿の様な足取りで手をつきながら椅子へと座る。


(なるほどな・・私は勝てそうと思われてたのか、まぁいいけど)

  

「まぁ、何かないわけでもないが、今現在ヘルフェブルの方ので不可解な事件が起きているってとこかな」

  

ヘルフェブルはこの敷地から少し東に行ったところにある三大都市のひとつ。

  

「まぁ糸音は気にしなくていいよ。仕事の話だからね。普通の事件じゃないから案件がこっちに回ってきたんだ。大丈夫だろうけど一応念のため事件が終わるまで、メイには警備をお願いしていてね。糸音ももし怪しいやつがいたら撃退して構わないよ。なんせあの森は一番隠れやすい場所だからね」

  

(確かに望める森なら犯人の隠れ家にはもってこいの場所だな、都市から近いし何より関係者以外立ち寄らないし。ん?その可能性を考慮しているなら犯人は関係者なのか・・なら現況は・・まぁ、私には関係ないか)

  

「わかったよ。じゃあ今は街には行かないほうがいいの?」

  

「そうだな。申し訳ないが解決するまでは極力そうしてくれると助かる。まぁ、こっちで解決するから糸音は気にせず学園生活でもおくっていてくれ」

  

(兄さんの言う通り任せていていいんだろう。今の私には関係ないことだし、それに極力今はそういうのは避けたい)


「わかったよ。じゃあお言葉に甘えて私は普通の学園生活をおくるよ。メイ、だっけ?先に教室に行ってるよ」


そう言って手を振り、糸音は部屋を後にした。


「あ!ちょっと待ってやー!教室同じやねんから一緒に行こうや!」

  

先に出た糸音のあとを追うようにメイも颯爽と学園長室をあとにした。

  

「あの二人、いい友人同士になりそうですね」


ツグハは二人が去った扉を見ながら呟いた。


「あぁ、そうだな。今の糸音にはそれが必要だろう、何よりもね。それをこの学園生活で学んでほしいところだよ。さてとツグハ、事件についての話なんだが。今回の案件は実に妙な話だ。犯行は決まって深夜の路地裏。被害者は五人全員が若者、凶器は不明、死因は全員失血死、遺体の首に歯型。これはもう吸血鬼が犯人で濃厚だな」

  

「もし犯行が吸血鬼であるならあの人でしょうか?」

  

「いや、それはないね。彼女が無闇に一般人を襲うなどと、そんなつまらないことをするやつじゃあないよ。何よりあの()()が黙ってない。今回この件で出張ってきてないって事はこの犯人は全く別の誰かさ」

  

「たしかにそうですね。だとしたら彼女が作りだした眷属の可能性は?」

  

「それはありえなくもないが、眷属を作ることを避けている彼女がここにきて眷属を作るとはとても思えない。それに下位のなりたて吸血鬼ならすぐに日に当たって、はいサヨナラって一夜でこの事件は終わっている。痕跡を残さず尚且つこの潜伏スキル、上位種かそれとも人の手が加えられた何者かの犯行か」

   

「彼女が操っている可能性は?」

   

「可能性はゼロではないが。わざわざ一匹では行動させないだろう。仮に、もし人類を滅ぼそうとするならもっと大群を放って派手にやるだろうし。こんなちまちました殺人事件を起こすとか何がしたいのか動機がまるでわからん」

   

「他の吸血鬼の可能性は?」


「吸血鬼の祖は他にもいると聞いたことがある。そいつの仕業かあるいは・・」


志貴が少し思案する。こちらから次の一手を打つか、それとも報告を待つか。


「この案件、良ければ私が片付けましょうか?給仕の合間、夜間なら動けますが。このままだと被害者が増えるだけなので、やはりこちらから手を打った方が」

   

「そろそろだと思うんだけどね」

   

「え?」

   

「実は数日前から二、三人に調査させているんだよ。それに、きっと彼ならやってくれる。最後の被害者が約三週間前、それから何の犯行もない所を見るとやはり真宵を送り込んでよかった」

   

「また、真宵を使って・・・どうりで数日前から姿が見えないと思いましたよ。たしかに彼の鷹の目があれば抑止力にはなりますが。仮にも養子でしょう、それに私の生徒です。そうやって好きに使うのはどうかと思いますよ。それにもし祖が相手ならどうするんですか?」


「もし本当に祖が相手なら真宵を一人では行かせたりしない」


「その言い方だと犯人の心当たりでもあるんですか?」


「まぁね。でも少なくとも祖が相手なら今頃は街一つ滅んでるよ」


「チッ!・・・たしかにそうだが!可能性がゼロでは無いなら行かせるべきでは・・せめてこの私に言えってんだ!」

     

ツグハは少しばかり憤りを隠せず語気を強める。


「すまないな・・でも一人ではないよ。少し頼りないかもだが、未凪の者を二人、護衛につけた」

   

「ふん・・未凪ですか。まぁ分家の者なら問題はないだろうが・・それでもやはり真宵を行かせるべきではないですよ。」


しばらくの間、二人の間には微妙な空気と沈黙が流れる。


「はぁ・・・あまり生徒を待たせてしまってはいけませんので私はこれで失礼します。もし真宵に何かあれば問答無用で私は動きますよ、それに・・・万が一があれば許さないからな」

    

それでは、とツグハはそそくさと部屋を去った。

   

「少し怒らせちゃったかな。優しいなツグハは・・いや・・償いなのかな・・・僕は何も雑に扱ってるわけじゃないんだけどね」


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