Castle Made Of Sand
夕凪家で起こった、糸見達の襲撃から一週間と少し経ったころ。夕凪家の西の方角にある都、神薙の京の外れにある森林にて四人の男女が対峙していた。一人は着物を着た小柄な女性、もう一人はスラっとした体躯に黒のスーツ着た背の高い女性、まるでお嬢様と護衛のような二人、夕凪涼香と夕凪火憐が黒のローブを被った二人の男を追い詰めた。
「いい加減追いかけっこも飽きた頃合い、そろそろ捕まえましょうか、火憐」
「姉さん、こいつら最初から私たちをこの森に誘い込む為にやってきたのでは?」
「なるほど。たしかに街で声をかけるや否や、逃走したときは何事かと思いましたがそう言う事だったのですね」
男達は顔を見合わせるとフードの下でニヤリとしながら声を上げる。
「正解だ!アンタらと全力で一戦交えるには街では狭すぎるからな」
男達はローブを投げ捨て姿を現す。一人は短髪で目が赤く若い男、もう一人はサイケ模様が目立つ服を着た若い男。
「短髪の方は吸血鬼だな、片方は・・・趣味の悪い服だ。でも姉さんはきっとサイケの方の顔好みじゃないですか?」
「うーん、たしかに・・・悪くはないですね。服はダサいですが、脱がして着せ替えてコレクションに加えましょうか」
「わかりました!なら吸血鬼はもらいますね、姉さん」
そんな二人の会話を聞いていた男は痺れを切らしてついに声を上げる。
「だぁーー!!!さっきから聞いてりゃあ、やれ趣味が悪いだの、変な服だの好き勝手言いやがって!頭きたぜ、もう!砂のマジックだ!」
「!?」
「!?」
涼香たちは何かを感じ、後方へと身を引く。男は地面に手をつけると、男を中心に地面から辺り一帯がサラサラの砂へと変わっていく。生えている木も、地を這う虫も、地面に触れている動物も全て砂に変わっていく。仲間の短髪の男は少し離れたところへと身を引いていた。
「危ないじゃないですか、シェイさん!俺もいるんですよ!」
「悪い悪い、ついカッとなっちまってな」
さっきまで森林の中にいた筈なのに、そこには約直径三キロ程の砂漠が出来上がっていた。そして涼香たちはというと、その上空に氷の塊を作り、そこから鎖を結びつけぶら下がっていた。
「たしかに、やりますわね。これは貴女一人ではヤバかったかもしれないですわよ、火憐」
「たしかに驚いたが、私が力を使えばこの程度造作もないね」
「まぁ、たしかにそうですわね」
二人は砂漠と化した地面に降り立ちシェイ達に向き合う。
「どうだ、これが俺の異能、触れた物を砂に変え、操る能力」
「与えられた力にしては凄まじい能力ですわね。ではやりましょうか。火憐、あなたは向こうの森で殺り合いなさいな」
「わかりました!では姉さん、何かあったら呼んでください!」
そういうと火憐は鎖を勢いよく振りかざして、短髪の男へと投げる。一瞬でその身体に鎖を巻き付けると凄まじい勢いで森の方に吹っ飛ばす。
「まっっじかーーー!!」
男は間抜けな声と共に森の中へと飛んでいき、火憐もそれについて行き、森の中へと姿を消した。
「さて、お待たせしました。こちらも殺りましょうか。あら?」
涼香は一歩踏み出そうとしたが足が全く動かなかった。足元を見てみるといつの間にか砂の手が足首を掴んで離さなかった。
「言った筈だ、砂に変え操れると」
次の瞬間、地面から無数の砂の槍が涼香の身体を貫く。
「うっ!そう・・でしたわね」
串刺しにされた涼香は項垂れる。
「こんな呆気ない訳ないだろ。つまらん演技はやめろ」
すると涼香の体は氷に変わり砕け散る。
「ごめんなさいね。ついつい遊んじゃう癖がありますの」
声のする方を見ると無数の涼香がシェイの後ろに居た。
「分身なら俺もできる」
シェイは砂で自身の分身を作り涼香の分身に攻撃を一斉に仕掛ける。次から次へと涼香の体は氷になり砕け、シェイの分身も同様に砂に戻り、砂と水と氷が飛び散る。そして再び二人になる。
「面白いですわね。ならこれは?」
手をかざすと涼香の周りには無数の氷の刃が出現し、シェイに一斉に襲いかかる。シェイは砂でドームを作りこれを防ぐ。
「閉じこもってしまいましたわね。さてと・・・氷塊よ」
涼香が手を挙げると、シェイが閉じ籠るドームの真上にでかい氷塊を出現させた。そしてそのまま手を振り下ろして氷塊を落とす。氷塊は落ち、激しい砂煙が舞い上がり、視界が開けるとシェイの姿がいなくなっていた。涼香は手に氷刃を作り出し、目を瞑る。
「そこですわね!」
涼香は振り向きざまに氷刃で薙ぎ払う。シェイは既の所で交わして後退するが、間髪入れずに間合いを詰める涼香。涼香の次々とくる追撃を避ける。
「どうしましたの?反撃はしませんの、もしや貴方は剣術はできないのかしら」
冷気と剣気が混じり合った凄まじい氷刃の剣撃がシェイを追い詰める。
「くっ!さすがに強いな・・・だが!」
シェイは氷刃に手をつきだして掴み取る。
「!?」
その瞬間、氷刃は徐々に砂塵へと変わり散る。何かを察した涼香は咄嗟に氷刃を手を放し、後退する。
「危ないですわね、もう少しでこの身も砂に変えられるところでした。ふっふ、やはり異能力者同士の戦いは面白い。もっと見せてくださいな、その砂の力を!」
「なら見せてやるよ。ちょっと待ってろ!」
シェイは再び地面に手をつくと目を閉じる。
「ん?一体何を見せてくださるのかしら?」
しばらくすると地響きが鳴り、砂が蠢き形を形成していく。数分すると涼香の前に、立派な砂の城が完成した。そして、上方の玉座らしき場所にシェイは座っていた。
「待たせたな。少し時間はかかったが、これが俺の最大の大技だ。俺は動けないが城が俺の手足となり武器となる」
「はっはっはっははーーー!!すごい、すごいですわね!面白い力!この技とやら、時間がかかって即席の戦闘ではまず使えないでしょう。ですが攻撃、防御共に最強ということでしょうか!さすがの私も城と戦うなんて初めてですわ!さて、どう攻略しましょうか」
涼香は不敵に笑い、城を見据える。




