研究結果
一
「くくくく、志貴!久しぶりだな!こっちから出向いてやろうと思っていたんだが、まさかバレていたとはな!貴様の妹だったよなコイツは!残念ながらこの体はもう俺の物だ!くくく!」
「相変わらず下品な笑い方だ。味霊、それでお前の目的はなんだ?」
「そんなもの決まってんだろーが。てめぇをぶっ殺して、朝霜家をぶっ潰すんだよ!俺を認めなかったあの家をな!蘇匁亜の野郎、ぶっ殺してやる」
「お前じゃあいつには勝てないよ。なぜなら言動が雑魚のそれだから」
「なんだと・・やはりお前には腹が立つ!あの時もそうだった!俺を否定しやがって!」
味霊は近くにあったハサミを自身の首、もとい糸音の首に当てた。
「コイツを助けたければ、さっきの発言と昔のことについて詫びろ、そしてこの俺に大人しく殺されろ。俺は既に死んでいるからな、傷つき死ぬのはこの娘の体だけだ。しかし、都合よく乗っ取れた。これだけ死にかけの体なんだ、取り付いて乗っ取るのも容易だった。この際だ、聞かしてやるよ。俺はな、お前にミンチにされてから何年もの間、モノに取り付いていた。ありとあらゆるモノにな。これほど朝霜家で良かったと思ったことは無かったぜ。俺の実験は成功していたんだ!魂だけとなり浮遊し、取り付き続ける不死の研究。朝霜の憑依術に感謝だな」
「まさか、お前がか?」
「そうだ、これを使い転々としていた。しかし、これには欠点があった。理由はわからないが、物に一度乗り移ったあと、人の死体に乗り移ると魂がうまく定着せず弾かれたんだ。おそらく俺自身の憑依するという力そのものが弱いせいで、それにうまく嵌らなかったんだろう。だから、俺はあの時からこの魂に嵌る小さな動物から乗っ取って、魂の形を色々変えながら憑依していった。そして力を取り戻し、ようやく人間の体を乗っ取り操ることができた。お前のおかげで人間の死体に乗り移るには何年もかかってしまった」
「ふーん、なるほどね。でもお前のそれは間違った結論だな」
「・・・なんだと?」
「聞こえなかったのか?ならもう一度言う、お前の結論は間違いだ。そのレポートには実験結果、失敗の二文字しかない」
「はぁ・・もういい。お前の頭じゃ理解できなかったのか。残念だ。そのまま動くな、お前を殺す!」
味霊はベットから降りようと体を動かそうとする。しかしその体、否、糸音の体は全く動かなかった。
「なっ!?なっ、何故動かん!志貴!てめぇ何しやがった!?」
「僕は何もしてないよ、ただ見ていただけ。本当に何もしていない」
「ばかな!?魂が合わなかったのか!・・ん!?」
味霊は心の中、自身の魂に何かが語りかけていることに気づく。今まで聞いたことのない心の中に響くノイズにも似た声。今まであらゆるモノに憑依してきた、しかしこんなことは初めてだった。その声は言葉となり次第に理解した。
(誰だか知らんが、寝覚めが悪い)
(!?)
「消えろ」
味霊はそう言って自分の胸に手を当てて、異能を発動させる。糸音自身が持っていた異能を。
パンッッ!
鈍く乾いた音が病室に響き、糸音の体は再びベットへと倒れる。
「これは一体・・」
「ツグハ、奴は殺されたよ。確証はないが僕の感だ」
「・・・糸音様!」
ツグハはしばらく呆然としていたが、ハッとして糸音に駆け寄る。
「糸音様!大丈夫ですか!?」
「ごめん、ツグハ・・・もう少し寝かして」
糸音はそう言って静かに寝息を立て始める。まるで何事も無かったかのように病室はしんとしていた。
「はぁ・・・よくわかりませんが、どうやら解決した見たいですわね」
「ただいまー、っておう!?なんかありましたか、姉さん?」
静まりかえっていた病室に少し疲れた顔をした火憐がゆっくりと現れ、その後ろから、ゆっくりとエオールが病室へと入って来た。
「えっと・・・誰か、私の実験体が外で粉々なんだけどなんか知らない?」
二
「わかっていたんですか、志貴様は」
学園長室でツグハは志貴に詰め寄っていた。
「いや、わかっていたと言うより。教えてもらったかな」
「はぁ、もしかして咲夜さんですか」
「あぁ、あいつの能力で教えてもらったんだ。あの時起こりえる事をな」
「だから、あんなに落ち着いていたんですね。それなら私にも教えておいてください。驚きました」
「ごめんごめん。でもあんまり人に教えちゃうと変わるかもしれないしね」
「まぁそれはたしかにそうですね。それで、結局どういうことなんですか?」
「まぁ簡単な話、僕が奴をミンチにしたあの時、魂も一緒に斬っておいたんだよ・・いや、正確には切り刻んだか。ツグハ、異能はね、魂に届くんだ。というか簡単に言うと幽霊を殺せるって言う方がわかりやすいか。僕があいつの魂を切り刻んで小さくしたせいで、人の死体の器に合わなかったんだろう。正確には量が足りなかった」
「足りなかった?」
「そう。わかりやすいように仮の話をしよう。そうだな、車を運転するとき大人の背丈だと足がアクセルとかに届くだろ?でも、子供の背丈だと届かない。これを人の体に置き換えるだけさ。奴が言っていただろ、魂が定着せずうまく動かない。正確にはそれは違う、定着はしている、ただ足りなかったんだ魂の質量がな。だから体が動かせなかった。」
「なるほど。そういうことだったんですね。それで、奴は死んだんですか?」
「そうだな。変な話、死んではいるからね。ただ、あの感じだと奴の魂はもうこの世にないかな。さっきも言ったが異能は魂に届く。糸音の異能、音で魂が弾け魂が霧散したはず」
「まぁ、確認のしようがないですからね。それにしても志貴様、えらく物知りですね」
「物知りじゃないよ。僕はね、彼の研究が好きだったんだ。彼が朝霜家から去ったあと、しばらくして朝霜家に寄ったんだ。そこで彼の論文を読んだ。それを元に、僕なりに研究を続けてみたことがあってね。それでさっきのがたどり着いた答えだよ。まぁ、正解かは知らないけどね」
「知りませんでしたよ、そんなこと。仲が良かったんですね」
「さぁね・・・・でも、彼との会話はすごく有意義だったよ。なんで、あの時機嫌が悪かったんだろうね」
「最後に一ついいですか?」
「あぁ」
「なぜミンチにした時、魂も消し去らなかったんですか?志貴様なら可能だったのでは?」
「そうだね・・・彼ともう一度、討論したかった。そして証明し合いたかったんだ。まぁ、あいつミンチにしたとき頭に血が上ってたのか全然話せなかったしね」
「そうですか・・志貴様、ぜひ私もその論文読んでみたいです」
「なら、図書室においてあるから、ぜひ読んでやってくれ」
「図書室って・・・まぁいいです。わかりました、では」
話は終わりツグハは学園長室を去って行った。
「味霊、見事に叶ったな。お前が残した研究は僕のコレクションにしといてあげるよ。しかし、最近色んな所で不穏な動きが目立つな。たしか南のオーラルの方でも、あるカジノがここ最近急激に儲かりだしたり、各地で行方不明事件が多発しているし。一応、気を付けておこう」




