学園襲撃(三)
志貴は退屈そうに待っていた。また、読んだ本を机にほったらかしにしていたが、この後の事を考えると片付けなくてもいいかなと思っていた。
ガチャッ
そんな時、ノックも無く学園長室の扉が開かれる。
「やぁやぁやぁー随分と遅かったね。でも、どうやってここまで来れたんだい?」
礼儀知らずの来訪者に不敵にヘラヘラと問いかける。
「・・・・・」
「なんだなんだー、声が出ないのか。そうだなー、そうだよなー。なんせ、息が続かないのだから。これはねー、この部屋から酸素を奪う超能力なんだよ」
バタッ!
暗闇の中、来たるその来訪者は唐突に倒れる。
「ん?終わりか?この場所へたどり着いたことは褒めてもいいかな。でも、室内で僕と二人でいる時は危険だと知らないはずも無かろう。まぁ前情報があっても対策はできないか・・さて」
志貴は座っていた机から降りて倒れた来訪者に近づく。
「どれ、その仮面の下を覗かせてもらおうか」
ドッッッン!!!!
そう言って仮面に手をかけると志貴のいた学園長室が大きな音を立て吹き飛ぶ。
しかし、爆風で外に放り出された志貴は無傷だった。
「おいおい、随分と派手にやってくれたなー。どうやって仕掛けたんだい?というより何で生きてる?」
学園長室がむき出しになった二階に立ち込めてた砂煙の中、先ほどの仮面の女が現れる。
「夕凪志貴。久しぶりだな」
女はようやく声を出す。そして仮面を取り、眼下の志貴を見下ろした。
「なるほどな。この場所を知っている者は自ずと限られると思っていたが、まさか人物だ・・・しかし、無謀だな。一度戦ってわかったはずだろ・・僕には勝てない。まぁ、でもまずは久しぶりと言っておこうか糸見・・・四年ぶりか」
糸見と呼ばれた女は二階から飛び降り、志貴と対峙する。
「四年か・・・師匠が亡くなって随分と経ってしまったが・・ようやく・・ようやく!今夜!お前にとって代わり夕凪家を手に入れる!」
「俺にとって代わる?はっ・・そもそも夕凪家は誰のものでもない。勝てぬ敵とは戦うなと教わらなかったか?まぁ、涼香達が居ないタイミングを狙ったのはうまくやったと言っておこう」
「貴様に褒められても何もうれしくないな・・それに涼香姉さん達がいても、あの人達ならわかってくれると信じている。それに姉さんたちには悪いけど・・倒せる算段はついている。もっとも、お前にも勝てると確信しているから来たんだ」
「えらく自身満々だな。言っとくが、涼香達は下手したら僕以上の化物だぞ」
「自分の妹達を化物と呼ぶなよ。お前以上には尊敬している人達なんだから、腹が立つ」
「それもそうだな・・なんせ僕の可愛い妹達なんだからな!」
「シスコンが・・おっと、妹といいえば、ヘルフェブルで懐かしい顔を見たよ。最初はわからなかったんだが、まさか生きていたなんて」
「まさか・・・会ったのか?」
今まで余裕の表情で飄々としていた志貴は顔色を変えた。
「あぁ・・糸音・・随分弱そうに見えたな。あれでよく生きていたものだな」
「お前、糸音に手をだしたのか?」
少しだけ語彙に殺意がこもる。
「安心しろ・・私は手を出していない・・しかも、私のことを覚えていなかったぞ。まぁ、仮面もしてたし、当時は小さかったから声だけじゃわからないか」
「なるほど・・やりあってはいないんだな・・・糸見・・お前は糸音と戦うべきではない」
「戦うべきではない?・・・どうでもいいが、私があの子と戦うことなんてないよ。多分、今頃、私の仲間が足止めしてるから会うことないんじゃないかな。それに・・・」
ダッ!
会話を唐突にきると、糸見は一気に志貴との間合いを詰めた。
「!?」
志貴は咄嗟に能力を発動しようとしたが発動できなかった。
シュッ!シュッ!
状況を把握する間もなく、糸見が放った針が喉元を掠り、とりあえず距離を取る志貴。
「随分と久しぶりに怪我をしたよ・・っで、どう言うことだ?」
「それだよ」
糸見は志貴の足の方を指指す。そこには糸が巻かれていた。
「冗談にしても笑えんなこんな糸如きで・・・っと言いたいところだが、まさかお前、兄貴の異能殺しを」
「そう・・私は手に入れたんだ。全ての異能を殺す武器を。知っていると思うがそれは使用者にしか解けない」
「どうしてお前がこれを?これはたしか兄貴が持っていたはずだが・・・」
「ある男と交渉してな。妙なやつだったが、そいつから手に入れた。これを手に入れたとき思ったよ。やっぱり、師匠の敵を討つのは私だって・・・」
「僕が殺したみたいな言い方だな。というか誰だ、その妙なやつとは?」
「罪から逃げる気か!・・あの時、お前が動いていれば・・・だが今はもう戻れない・・あぁ・・・もういい、おしゃべりはたくさんだ!これでようやく果たせる!」
「おしゃべりは大好きなんだがな」
「私は嫌いだね。貴様もな!」
シュッ!シュッ!ダッダッダ!!!
糸見の片手に持つ鋭い針と同じくらいの鋭い蹴りで志貴を後退させる。
「速いな・・こんな糸一本で僕をおさえることができると思っているのか?慢心すぎるぞ糸見」
「お前こそ慢心していないか、こんなものは手始めだ・・・私が糸だけに頼るだけとでも思ったか?言っておくが四年前の私とは違うぞ」
サッサ!!
糸見は一歩踏み込み姿を消した。正確には志貴に視認できないほどの速さで動いている。
「ほう・・たしかにこりゃ速い。さすがに見えないな・・でも」
志貴は懐からナイフを取り出し構える。そして一瞬の絹が擦れる音に反応して志貴は向かってきた針に反応した。
シュシュシュッ!!!カッカッカ!!!シュシュシュシュ!!!!カッカッカッカ!!!そこからはナイフと針の打ち合い。糸見は辺りを高速で駆け回りながら針を飛ばす。滑空する武具の雨は、これもまた目には見えぬ速さ。
志貴はそんな打ち合いの最中、足に違和感を覚える。
「あら、しまった!」
足に何かを引っ掛けられバランスを崩したが倒れることなく後方へ身を引く。
「チッ・・相変わらずふざけたやつだ・・」
「いつでも、楽しくやって行きたいんでね・・・いやしかし、そうだった。忘れていたよ。君は兄貴と同じで糸と針の使い手だったね。でも、驚いたな。まさかあの打ち合いの最中、糸を飛ばすなんて」
「だから言っただろ、私は四年前と違うと。ここからは本気でいかせてもらう」
「こりゃあ、久々に楽しめそうだ」




