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【完結】弱小領主のダメ息子、伝説の竜姫を召喚する。  作者: 知己
第22章 『弱小領主のダメ息子、王宮に押しかける』
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085 招待と忠告

 たまたま通りかかったティーナは『ガレリオ』と聞いて、見定めるようにベルの姿を上から下まで視界に収める。

 

「……もしかして、貴方あなたがベルティカ=ディ=ガレリオ卿?」

「ええ、そうです! 失礼ですが貴女あなたは⁉︎」

 

 ベルの方もティーナの格好を見て喜びの声を上げた。

 

(ロンディーネと同じ制服だ! これは間違いないぞ!)

 

 ベルに名を尋ねられたティーナは何事かを思案して口を開く。

 

「……私は『宮廷魔術局』所属のマルティーナ・ガッティと申しますが、ガレリオ卿、王宮に何か……?」

「宮廷魔術局……。そ、そちらにロンディーネという女性はいらっしゃらないでしょうか……⁉︎」

「……ええ、おりますが————」

「————その女性に会わせてください! 私は彼女に会いにアンヘリーノから来たんです!」

 

 頭を下げるベルに対し、ティーナは飽くまでも冷静に答える。

 

「残念ですが、ロンディーネは任務で席を外しております」

「いつ戻りますか⁉︎」

「申し訳ありませんが、いくら領主の御子息と言えど、王宮の任務の詳細はお答え出来かねます」

「……では、彼女が戻るまでこちらで待たせていただきます」

「……敷地外でしたら、お好きにどうぞ」

 

 そう言ってティーナは王宮の方へ戻って行った。アリーヤはその背中を見送りながらベルへ声をかける。

 

「良かったわね。無事ヤンアルさんにたどり着けて」

「ああ、後はヤンアルが戻ってくるのを待つだけだ」

「……あたし、飲み物買ってくる」

「あ、ああ」

 

 アリーヤはプイッと顔を逸らせて街の方へ行ってしまった。しかし、ベルはその様子に気付かず、通用口の向かいの歩道に備えられたベンチへ腰掛ける。

 

(……『宮廷魔術局』……。初めて耳にする名だが、ヤンアルはいったいどうしてそんな機関に所属を……? いや、そんなことを考えていても仕方がない。戻ってきたヤンアルに訊けばいいだけだ……!)

 

 もうすぐまたヤンアルに逢えると思うと、自然に顔が緩んでくる。その時、突然首筋に冷たさを感じてベルは驚きの声を上げた。

 

「————わっ⁉︎」

「アハハハハ! 何、その変な声!」

 

 声のした方に顔を向ければアリーヤが飲み物のカップを手に笑い転げているのが見えた。

 

「……子供みたいなことするなよ。ビックリしたじゃないか」

「フン、愛しのヤンアルさんに逢えると思って気が抜けてるようね。隙だらけだったわよ?」

 

 仏頂面のアリーヤが差し出したカップを受け取りながらベルが礼を言う。

 

「……ありがとう」

「別にいいわよ、アンタのお金だし」

 

 アリーヤは素っ気なく返事をしてベルの隣に腰掛ける。

 

「さっきのメガネ女が言ってた宮廷魔術局ってなんなの……?」

「それは俺も考えていたが分からないな。名称からして魔術を研究している機関なんだろうが……」

「ヤンアルさんは魔法使えるの?」

「いや、東洋の不思議な武術を使うが、魔法は使えない」

「何それ? じゃあ、どうしてそんなワケのわからないとこに所属してるのよ?」

「俺に訊かれてもな————ん?」

 

 何かに気付いたようなベルの視線をアリーヤが追うと、先ほどのメガネ女がこちらに向かってくるのが見えた。

 

 ベルはベンチから立ち上がってティーナへ声をかける。

 

「マルティーナさん。言われた通り敷地外で待っておりますが、何か問題でも?」

「いえ、よろしければ我があるじ・フランチェスコがお話をと申しております」

「『フランチェスコ』殿……?」

 

 ベルはその名に聞き覚えがあった。『ロムルスの七丘しちきゅう』でロンディーネが口にしていた名である。

 

現在いまのヤンアルの上役うわやくか。どういうつもりか知らないが、そっちから招待してくるなら誘いに乗ってやろうじゃないか)

 

 ベルはニコリと微笑んで答える。

 

「ありがとうございます。私からも是非お願いします」

「それではこちらへ————あ、お連れの方はご遠慮ください」

 

 当然のようにベルの後ろに付いていくアリーヤへティーナが待ったをかけた。

 

「え? どうして⁉︎」

「主はガレリオ卿のみをお呼びしておりますので」

「アリーヤ、残念だが先に宿に戻っていてくれないか。夜までには戻るよ」

 

 ティーナとベルの言葉にアリーヤの不満が爆発する。

 

「あーそう! 平民以下のあたしは王宮に足を踏み入れちゃいけないってワケね!」

「そ、そんなことは言ってないだろう……。貴族であろうが領主であろうが本来、王宮にはみだりに立ち入れないものなんだよ……」

「フン、いいわ! 待ってる間にアンタが稼いだお金でバカ高いものを爆買いしてやるわ!」

 

 豪快な捨て台詞を残してアリーヤは繁華街の方へ大股で歩いていってしまった。

 

「……参ったな。また怒らせてしまった」

「…………」

 

 背中に視線を感じたベルは振り返って尋ねる。

 

「どうかしましたか? マルティーナさん」

「……いえ、それではご案内いたします。ガレリオ卿」

 

 

        ◇

 

 

 ティーナに案内され敷地内を歩くベルは初めて眼にする王宮という景色に感動を覚えていたが、その一方で歩いた道順を頭に叩き込んでもいた。

 

(フランチェスコという男が何を考えているか分からない以上、しっかりと逃走経路は覚えておかないとな)

 

「————ガレリオ卿」

「ひゃ、ひゃい?」

 

 前を歩くティーナに突然話しかけられたベルは驚いて妙な返事をしてしまった。

 

「ガレリオ卿はロンディーネを捜して、アンヘリーノからお越しになられたとおっしゃられましたね?」

「え……ええ、はい」

僭越せんえつながら一つ、ご忠告申し上げてよろしいでしょうか?」

「…………? どうぞ?」

 

 ティーナは振り返らずに続ける。

 

「そうであるならば、別の女性を同伴して尋ねて来られるのはいかがなものかと存じます」

「…………!」

 

 真っ当すぎるティーナの指摘にベルは素直にこうべを垂れた。

 

「……おっしゃられる通りです、ロンディーネにも『ロムルスの七丘』で誤解をさせてしまいました」

「一方が悋気りんきを起こせば、もう一方も同様だということを肝に銘じておかれるべきかと」

「それはどういう……?」

「……着きました。こちらです」

 

 足を止めたティーナが手を伸ばした先には一際重厚な扉が構えられていた。

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