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【完結】弱小領主のダメ息子、伝説の竜姫を召喚する。  作者: 知己
第20章 『弱小領主のダメ息子、“燕“に出逢う』
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078 『ロムルスの七丘』

 ————翌朝、ベルは眼を覚ますと、アリーヤの寝床がからになっていることに気が付いた。どこに行ったのか辺りを見回していると、背後から声が掛かった。

 

「おはよ」

「ああ、おはよう。早いね」

「昨日は二日酔いで夕方まで寝てたからね。朝方に眼が覚めちゃったから散歩してたのよ」

 

 一晩眠って機嫌が直ったのか、アリーヤは普通に会話をしてくれる。ベルはホッと息をついて返事をする。

 

「そうか。二日酔いはまだ残ってる?」

「もうバッチリよ。朝ごはんも用意してるけど食べる?」

「ありがとう。顔を洗ったらいただくよ」

 

 アリーヤが笑みを浮かべると、ベルもまた白い歯を見せた。

 

 

       ◇

 

 

 朝食を終えた二人は再びビアンコに乗って旅路を急ぐ。

 

「————それで、ロムルスまではあとどれくらいなの?」

「うん、距離自体はそこまでないけど、ここから有名な『ロムルスの七丘しちきゅう』を越えないといけないから、ペースは遅くなるだろうね」

「なによ、その『ロムルスの七丘』って?」

「その名の通りロムルスの背後を覆うように存在する七つの丘のことさ。これには面白い言い伝えがあってね」

「面白い言い伝え?」

 

 ベルの言葉に興味を示したのかアリーヤがおうむ返しした。

 

「ロムルスの街が造られる以前、この辺りは七匹の凶悪な魔獣が跋扈ばっこしていたそうだ。七匹の魔獣は人々を喰らい、この辺り一帯を焼け野原にしてなおも暴れ回っていた。そんなある時、通り掛かった一人の旅人が七匹の魔獣を倒して、この辺りにあった丘へそれぞれ封印した。その旅人の名前が————」

「————ロムルスって言って、街の名前にもなったってオチ?」

 

 口を挟んだアリーヤにベルは眉根を寄せる。

 

「なんだ。知ってたんじゃないか」

「初耳よ。でもどこかで聞いたような話っていうか、オチが読めちゃった。全然面白くないじゃない」

「お、面白くない……? 俺が歴史の授業でこの話を聞いた時は興奮でドキドキワクワクしたものなんだが……」

 

 悲愴な顔つきになったベルを見て、アリーヤは両腕を広げた。

 

「男って、ホントそういう御伽話おとぎばなしが好きよね。バッカみたい」

「————う、うるさい! 男はみんな胸にロマンをいだいてるんだ!」

 

 男のロマンを真っ向から否定されたベルの心の叫びが街道に響き渡った。

 

 

        ◇ ◇

 

 

 峠道に差し掛かった二人はビアンコの背を降りて徒歩で進んでいた。

 

「————でもさあ、さっきアンタが言ってた七匹の魔獣を退治したロムルスって『伝説の騎士』とは違うの?」

「…………」

 

 アリーヤの疑問にベルは考え込む仕草を見せる。

 

「……違うはずだ。『ロムルスの七丘』の話には明確に『ロムルス』という名前の表記があるが、『伝説の騎士』の一節には一切個人名などは出てこない」

「ふうん、そうなんだ」

「まあ、『伝説の騎士』の言い伝えはロセリア全土に広がっているもので、『ロムルスの七丘』は飽くまでもこの辺り一帯に伝わるものだからね。直接関係があるとは考えにくい」

「どっちにしろ御伽話だしねー……」

 

 アリーヤは興味をなくしたように風景に眼を向けた。しかし、ベルは無言で思考を続ける。

 

(……そう、これらは両方とも御伽話のはずだ。俺を含めて誰もが成長と共にそう思うようになる。……だが、御伽話の『伝説の騎士』に酷似した人物が実際に現れてしまった。そうすると————)

 

「————ねえ、ベル! アレ見て! アレ!」

 

 アリーヤの言葉にハッとしたベルは、彼女が指差す方へ顔を向けた。視線の先には、10メートル以上はありそうな巨石が丘の上に屹立していた。

 

「ああ、アレは『七丘』にそれぞれ建てられた石碑の一つだろう。俺も実際に見るのは初めてだけど」

「へえー、あんな大きな岩が七つも置かれてるんだ。ねえ、せっかくだから近くに行って拝んでみましょ!」

「————あ、おい!」

 

 言うが早いかアリーヤは街道を外れて丘を登って行ってしまった。ベルは呆れた様子で独りごちる。

 

「……まったく、興味があるのかないのか、いったいどっちなんだ……」

 

 ベルは近くの樹にビアンコを繋いでアリーヤの後を追いかけた。すると、アリーヤは石碑の陰に隠れるようにして何やら石碑の正面の方を窺っている。

 

「……何をしているんだ、アリーヤ?」

「————シッ、見てベル。変なヤツがいるの」

「変なヤツ?」

 

 アリーヤにならってベルが石碑の脇から覗き込むと、一人の男————いや、体格からして少年らしき者が石碑に手を触れてたたずんでいるのが見えた。角度で顔は窺い知れないが、ベルはこの少年?に何か言い知れぬモノ(・・)を感じ取った。

 

(……なんだ、アイツは……? あの雰囲気はまるで————)

 

 その時、少年?がクルッとこちらを振り向いてその容貌が明らかになった。

 

 真正面から少年?の顔を眼にしたベルとアリーヤはあまりの衝撃で絶句した。

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