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【完結】弱小領主のダメ息子、伝説の竜姫を召喚する。  作者: 知己
第13章 『伝説の竜姫、パーティーに招待される』
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049 ドレスアップ完了!

 ————ついに慰労会パーティーの日がやって来た。

 

 ヴィレッティ家の一室ではベルやミキたちがパーティーへの準備を進めていた。

 

「……ええと、パーティーは何時からだったっけ?」

「17時から開門で18時に開始予定です」

 

 ジャケットに袖を通しながらベルが尋ねると、代わりに荷物をまとめていたミキが答えた。

 

「はあ……それじゃあ、もう少ししたら出ないとな……」

「何を溜め息なんかついていますの? お兄様」

 

 ソファーに座ったレベイアが紅茶のカップを片手に話しかけてきた。しかし、その表情は明らかにむくれており、とても優雅に紅茶をたしなんでいる淑女レディーのそれではなかった。

 

「質問に質問で返して申し訳ないが、何をそんなふくれっ面をしているんだい? レベイア」

「そんなこと当然ですわ。ミケーレやカレンが付いて行けるのに、どうして私だけ留守番なんですの⁉︎」

 

 レベイアは不満をぶつけるように、勢いよくティーカップをテーブルに置いた。

 

「どうしてって、パーティーには酒が出るし、時間帯も遅いから未成年のお前は参加できないんだよ。ミケーレやカレンは向こうで俺たちの世話をしてくれるんだ」

「フン! 大人は良いですわね。お酒を飲んで美味しい料理もいただけて、優雅に音楽を聴きながらダンスを踊るなんて、さぞ楽しいでしょうね!」

「楽しいことなんてあるもんか。パーティーなんてくだらない自慢話や見栄の張り合いで疲れるだけなんだ。付いて来たって面白くないぞ」

「…………」

 

 ベルの言葉にレベイアは口を尖らせたまま黙り込んだ。

 

「それにカステリーニの連中はヤンアルを呼びつけて何を狙っているのか知れたものじゃない。そんな危険なところにお前を連れて行くわけにはいかないよ。分かっておくれ。可愛い妹よ」

「……分かりましたわ。お兄様、どうかご無事で戻ってらして」

「ああ、ありがとう」

 

 ベルに抱きしめられたレベイアはまたしても簡単にほだされてしまった。

 

 

 ベルがミキと共に大広間に行くと、そこにはすでにバリアントとサンドラにカレン、そしてヤンアルが待っていた。

 

「申し訳ありません。お待たせしました!」

「殿方が女性を待たせるなんて何を考えているの、ベルティカ?」

 

 遅れて来たベルに早速、サンドラの小言が飛んだ。

 

「まあ、1分くらい良いじゃないか。さあ、全員揃ったことだし出発しよう」

「フン。あなたがそうやって甘やかすから、ベルティカの性根がいつまでも直らないのです」

 

 ベルをかばったバリアントにサンドラは一言返すと、ファビオを伴って玄関へと歩いて行った。その後をバリアントとミキとカレンが続いていく。

 

「たはは……、そうだった。女性を待たせるのは禁忌の一つだった。すまない、ヤンアル」

「…………」

 

 ベルが顔を向けると、ヤンアルは難しい顔で何か思案しているようだった。

 

「ヤンアル? どうかしたのかい?」

「あ、ああ、少し気になることがあって……」

(……ははあ、さてはダンスの本番が迫って緊張しているのか)

 

 ベルはヤンアルの緊張をほぐそうと肩に手を掛けた。

 

「大丈夫————」

「————ベル、昨日の夕食でボボのステーキを食べただろう?」

「…………? う、うん……、キミが獲ったボボを景気付けに食べたね。とても美味かったけど、それがどうしたんだい?」

「いや、パーティーではあれより美味しい食べ物が出るんだろうか……?」

「…………本当に大物だな、キミは……」

 

 思いがけないヤンアルの返事に、ベルは呆れたようにも感心したようにも見える笑みを浮かべた。

 

「え?」

「なんでもないさ。さあ、俺たちも行こう。主役がパーティーに遅れたら大変だ」

 

 

              ◇

 

 

 ————カステリーニ家のやしきはアンヘリーノの街を見下ろす小高い丘の上にあった。

 

 ベルは馬車の窓からその全景を眼に収め、素直な感想を口にする。

 

「……母上のご実家も広かったが、これを前にするとウチの邸がまるで犬小屋みたいに思えてくるなあ」

「当然でしょう。カステリーニ家は名門中の名門。比べるにもおこがましいと思いなさい」

 

 すかさずサンドラが反応したが、ベルは思わぬ返事をする。

 

「ですが、母上。私はウチの犬小屋が好きです」

「負け惜しみね。少しでも追いつけるように頑張りなさい」

「いえ、これほど大きな邸ならきっと普段使っていない部屋が何十とあることでしょう。それを維持するために一体どれほどの税が使われているでしょうか?」

「…………!」

 

 サンドラとしては野心の無い息子に発破を掛けるつもりであったが、ベルのこの言葉にハッとした表情を浮かべた。

 

「それを考えると、やはり私は犬小屋のガレリオ家で充分です」

「私もそう思う」

 

 ベルの隣のヤンアルが同意の声を上げた。

 

「野生の獣も鳥もおのれの手が届く範囲の巣しか作らないはずだ。人間だけが見栄や権勢欲で自らの手に余るものをそれでも掴もうとする。私もベルと同じく犬小屋のガレリオ家の方が好きだ」

「ヤンアル……」

「————ッゴホン」

 

 突如、バリアントの咳払いが響き、ベルは慌てて頭を下げた。

 

「ち、父上……、これは失礼しました。何度も父上の邸を犬小屋などと……」

「……うむ……」

 

 謝るベルに対しバリアントは眼を逸らしていたが、その口元には微かに笑みが浮かんでいた。

 

 

 17時の開門と同時にパーティーの参加者が乗った馬車が次々と雪崩れ込む。長いこと待ってようやく門番のチェックを受けたベルたちは広大な庭園を抜けた後、男女に別れてカステリーニ家の一室に通された。

 

「————それでは18時の慰労会開始までこちらでご準備を」

 

 カステリーニ家の使用人がそう言って部屋を後にした。

 

 ベルとバリアントがパーティー用の衣装に着替えて部屋を出ると、ちょうど隣の部屋から女性陣も出て来たところだった。ヤンアルの姿を見たベルがぽかんと口を開けた。

 

「…………ヤンアル、すごく綺麗だ……」

 

 ヤンアルは以前、ベルに贈られた真紅のドレスを着用してくれていたのである。ベルに褒められたヤンアルは顔をドレスに負けないくらい真っ赤に染めた。

 

「……口ではそう言うが、本当は馬子にも衣装だと思っているんだろう……?」

「そんなことないよ。本当に綺麗だ……。自分でも情けないが、それしか言葉が見つからない……」

「————も、もういい! 行くぞ、ベル!」

 

 ヤンアルは強引にベルの手を引っ張って会場に向かって行った。その後ろ姿を見ながら、同じくパーティードレスに着替えたサンドラが呆れたようにつぶやく。

 

「……全く、ドレスアップした女性に対する褒め方までまるでなっていないわね」

「フフ……、キミは初めて会った時と同じ————いや、あの頃よりももっと輝いて見える」

 

 隣に立ったバリアントが左腕をわずかに曲げると、

 

「ふん……、あなたも50点といったところね」

 

 サンドラは口紅ルージュを引いた口元を微かにほころばせて、そっと腕を組んだ。

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