第七部
夜の帳が下りた。
俺はソファーで横になり、ソルシエルはロッキングチェアーで何やら分厚い本を読んでいた。
暖炉の火が鈍く揺らめく。
異世界に来てまだ一日も経っていないというのに、一年をここで過ごしたかのように感じる。
情報量が多かったせいもあるだろうが、もうこの世界で生きていくことにすっかり抵抗はなくなっていた。
それほどまでに俺の人生は薄ぺらかったってことだ。
まるで生きてなかった。
こんな風に誰かと一緒にいて楽しいと思ったことはなかった。
お師匠様は悪い人じゃない。
それだけは言える。
そんなお師匠様が壊したがっているこの世界。
一体どんな世界なのかじきにわかるだろうけど、少なくとも俺はお師匠様の味方でいようと思う。
どんなに価値のある世界だとしても、お師匠様が壊したいなら俺も壊す。
俺はお師匠様に拾われた犬。
お師匠様の傀儡。
今はそれでいい。
眠気は這い寄ってきた。
ソルシエルも同じだったのか、欠伸を一つして本を閉じた。
「我はそろそろ寝る。貴様はそこでそのまま寝ろ」
「えっ、お師匠様はどこで寝るつもり?」
「寝室だが?」
「俺のベッドは?」
「あるわけなかろう。昨日まで我一人で暮らしてきたのだ、もう一つ用意しているはずもない」
「じゃあ、魔法で出してくれよ」
「ふん、そこまで甘やかすと思うな。ベッドで眠りたければ自分で出してみるんだな。それとも、我とベッドを共にするか? ふふふっ、可愛がってやるぞ?」
「……遠慮しときます」
「ふっ、釣れぬやつだ。とにかく、今夜はゆっくり休んでおけ。明日からの修行は手加減せぬ」
「はいはい、わかってるって。おやすみなさい」




